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第69話 お嬢様のえっち

「――というわけで、今週末プリシラとデートすることになったのよ」

「それは……おめでとうございます、お嬢様っ」


 プリシラから無事デートの約束を取り付けることが出来た私は、そのことを部屋に帰ってからソラリスに報告していた。


「これもソラリスのおかげよ。本当に感謝しているわ」

「いえいえそんな……私なんて。お嬢様が頑張ったからですよっ」

「そんなことないわ。これもあなたがいっぱいデートしてくれたから、おかげで自信が付いたんだもの。それが無かったら、多分誘えてなかったわ」

「お嬢様っ……」

「ありがとうね、ソラリス」

「いいんですよ。お嬢様の幸せが、私の幸せなんですから」


 なんて可愛いことを言ってくれる子なんだろう。私はベッドに一緒に腰かけているソラリスの頭を撫でてあげると、目を細めながらそっと私に寄りかかって来た。


「いい子ね、ソラリス」

「えへへ~お嬢様っ……」


 ソラリスは自然な動きで、そっと私の腕に抱きついてくる。

 デートをよくするようになってからというもの、ソラリスはこうしてスキンシップを取ってくることが多くなった。私がベッドに腰かけているとよく隣に座ってくるし、暇さえあれば私の腕に抱きついてその豊かなものを押し付けてくる。


 勿論全然、これっぽっちもイヤじゃないし、むしろ嬉しいくらいだけど、それでもその……こうも積極的だと、どうしてもドキドキしてしまう。

 こうも献身的に私に尽くしてくれる、実の妹みたいに思っている子にドキドキしてしまうなんて良くないとは思うけど、それでも胸が高鳴ってしまうのはどうしようもない。

 だって本当に可愛くて、それに柔らかいんだもの。


「あの、ソラリス……また当たってるんだけど……」

「これも練習ですよ、お嬢様っ。プリシラからギュッとされて慌てないために必要なことなんですっ」


 当てられるたびにそう言うんだけど、答えも決まってこうだった。

 でもそうは言うけど、こんな2人っきりの部屋でこうも密着されて、私がムラっと来たらどうする気なんだ。私、女の子が好きな女の子なんだよ?


 実際危なかったことだって一度や二度じゃないし、でもそのたびに「いけない、いけない、この子の信頼を裏切るわけにはいかない……!!」って自制して来たけど、それもなかなかにキツイものがある。


「え、えっと、それでね、デートのプランなんだけど」


 私は自分のよこしまな気持ちをごまかすように、話を別な方向にもっていく。このままこの変な気持ちのままでいたら、間違いが起こるかもしれないし。


「はい。どんなプランを考えてるんですか? ショッピングですか? それとも動物園? もしくは美術館とかですか?」


 どれも私とソラリスがデートをした場所で、他には図書館でお勉強デートをしたり、ピクニックに行ったりもした。

 その経験を踏まえてプリシラをデートに誘う、そう言う計画だったはずだけど、突然のプリシラの申し出でその計画は完全に軌道修正をすることになった。


「えっと……水着を買いに行くことになったの」

「……はい?」

「それで、一緒に泳ごうって」

「……何でそうなるんです?」


 不思議そうな顔をしているソラリスの気持ちもよくわかる。私がソラリスの立場でもそう思うわ。


「だって、プリシラって――いわゆる金づちですよね?」

「ええ、筋金入りのね」


 極度の方向音痴にして運動音痴、学園内でも平気で迷子になるし、道を歩けば転ぶ、それがプリシラだ。

 そんなプリシラに泳げと言うなんてカメに空を飛べと言っているようなものだった。


「その金づちのプリシラが、今度の水泳の授業のために私に泳ぎを教えて欲しいって言ってきたから、これ幸いとデートにこぎ着けたのよ」

「はぁ……なるほど……ですが……」


 ソラリスは「なんて無謀なことを……」って顔をしている。いやまぁ私もプリシラを泳げるようにするなんて無謀だとは思うけど、それでもプリシラと一緒に遊べると言うのなら是非もない。


「それでね? まずは水着を買いに行って、それからご飯を食べて、その後で別宅のプールで泳ごうかなって」


 地味な学校指定水着のプリシラは過去に見たことがあったけど、その時は私自身の恋心に気付いてなかったからそれほどしっかりとは見てなかった。今思うとなんて勿体ないことをしたんだと思う。

 今度の水泳の授業の時はしっかりと目に焼き付ける予定だけど、それよりも何よりも……学校指定でない水着姿のプリシラと一緒に遊ぶことができるんだから、楽しみでしょうがない。


 絶対に、最近流行りの上下が分かれたタイプの水着をプリシラに買ってあげよう。そうすれば今まで見たことのないプリシラのお肌をばっちりと見ることができる――


「……お嬢様? 鼻の下が伸びてますよ?」

「えっ!? ウソ!?」

「ウソです。でも、引っかかりましたね、お嬢様……今、はしたないことを考えていたでしょう?」

「そ、そんなことは……!!」


 あるけど。プリシラの水着姿を想像していたけど。あとおへそとか見たいなって。


「……お嬢様のえっち」


 ソラリスはそう言いながら、ジトッとした眼差しを向けつつ、私に柔らかいものをさらにムギュっと押し付けて来た。

 ……いやいや、ソラリスの今やってるこれも結構えっちだからね!? 私すっごいドキドキしてるもん!


「それにしても、プールですか……いいですねぇ……羨ましいですっ」

「あ、ソラリスもプール、行きたかった?」


 そう言えばソラリスと最近色々な場所でデートしたけど、せっかくの夏だと言うのにプールは行ってなかったなぁ。


「はいっ、私だってお嬢様と一緒に泳ぎたかったですし……ああっ……もっと早く思いついていれば……」


 ソラリスが、しゅんとしてしまった。ん? 何でしゅんとしているんだろう?


「そう? それじゃあ今度のデートはプールにしようか?」

「えっ?」

「いや、次のデートの話よ。今週はプリシラとデートだから、来週あたりでどうかしら」

「で、でも、もうプリシラをデートに誘えたわけですし、もう私とデートする必要は……」


 ソラリスはそう言うと、遠慮がちに目を伏せた。

 ああ、なるほど、そう言う事か。でも、ソラリスとデートしててとても楽しかったし、私はこれからも続けていきたいと思っていた。だから――


「――私が、ソラリスとデートしたいのよ。それじゃあダメ?」

「だ、ダメなんて……!! そんなことありませんっ……!!」

「じゃあ、今度水着を買いに行きましょうか。可愛いの買ってあげるからね?」

「お嬢様っ……!!」

「わっ……!?」


 ソラリスが、感極まったように私に抱きついてきて――私はベッドに押し倒されるような形になった。


「私、嬉しいですっ……!! お嬢様とこれからもデートさせて頂けるなんて……!!」

「もうっ、大げさねぇ」


 私が押し倒された体勢のままソラリスの頭を撫でてやると、ソラリスは幸せそうな表情を浮かべて、私に体重を預けてきたのだった――

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