表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/115

第111話 3人のお嫁さん

「ついに、この日が来たのね……」


 学園の卒業式と日を同じくして、私と3人の嫁達との結婚式がもうじき開かれようとしている。

 なんとかかんとか今日まで嫁達の猛アタックを凌いできたけれどそれももうほとんど限界に来ていて、いつ食べられてもおかしくないような、いっそ3人同時に襲い掛かられそうだと思いながら夜を過ごしていた中、ようやっとこの日を迎えることが出来た。


 本当なら卒業式の次の日とかに結婚式をする予定だったんだけど、その数か月前から『『『絶対に待てない、是非とも卒業式と同じ日に結婚させて欲しい』

 』』と3人から言われていたので、この無茶な日程になっていた。


 おかげで卒業式が終わった後、私達は馬車を全力で走らせて何台も乗り継ぎながら実家のある領地に向かい、教会に着いてから大急ぎで着替えをするというハチャメチャなことをする羽目になった。


「それにしても……ほんと、ドレスで良かったわ……」


 私の結婚式での衣装については、『男装がいいですっ!!』と主張するエルザと『実質的にはクリスが嫁みたいなものなんだから、絶対ウェディングドレスよっ!』と主張するプリシラ&ソラリスが何度も激しい議論を交わして、結局エルザが『確かに……クリス様が実質嫁であるという主張が正しいですねっ』と折れた結果、こうして今私がウェディングドレスを着ている、というわけだ。


 私の男装は思いもかけず嫁達に大変好評だったから、男装したまま嫁達とデートも結構したけれど、それでも私も女の子だし、結婚式ならやっぱり男装よりもドレスがいいわよねっ。


「それにしても……」


 裾をつまんでふわりと鏡の前で回ってみた後、私は前から気になっていたことを口にした。


「今夜は一体、どうするつもりなのかしら……私の体、1つしかないんだけど……」


 今夜は3人の嫁達が待ちに待った、いわゆる『初夜』と言うやつだ。これまでは頑なにキスまでしか許してこなかったけど、今夜私は――嫁達のものになる。

 でも問題なのは……その、順番だ。


「どんだけ聞いても教えてくれなかったのよね……」


 式が近づいてからは毎日毎日、そのことで話し合っているみたいだったんだけど、その会議に私は参加させてもらえなかった。

 順番から考えたら、第一婦人のプリシラから……ってことになるんだけど、そんな簡単に決着がつくのならあれだけ話し合ってはいないと思うのよね。


「はぁ……私、今夜どうなるのかしら……」


 期待と不安が入り混じりってドキドキする胸を押さえて、じっと鏡を見ていると――


「クリスっ!!」

「お嬢様っ!!」

「クリスお嬢様っ!!」


 ドアが開いて、3人の嫁達がなだれ込んできた。


「うわぁ……みんな……綺麗っ……」


 私は3人の艶やかなウェディングドレス姿に、思わず続く言葉を失った。プリシラはその美しい金髪を引き立たせるような純白で煌びやかなドレス、ソラリスはややおとなしめなデザインながらもその可愛らしさを存分に引き立てるようなドレス、そしてエルザは……メイド服を基調とした白にアクセントで黒を交えたエルザらしいデザインのドレスだった。


 みんなのドレス姿に見惚れていると、しばらく時が止まったかのようだった3人がブンブンと手を振った。


「いやいやいや!! 何をおっしゃいます……!!」

「クリス、あなた鏡見たの!? あなたこそ、本当にとんでもなく可愛いわよ!?」

「そうですよ! 私の姿なんて、お嬢様の前では霞んでしまいますっ……」


 3人が、わっと私の周りに詰め寄って来た。


「お嬢様……素晴らしいですっ……最高ですっ……」

「改めて惚れ直すレベルね」

「今からこんなにも美しいお嬢様と結婚できるんですね、私たちっ」

「そ、そんな、大げさねっ」


 興奮した感じの3人はぎゅうぎゅうと私を押し込んで、私はあっという間に壁際まで追いつめられてしまった。


「お嬢様っ……素敵ですっ……」

「それは、ありがと……って?」


 潤んだ瞳のソラリスが、私の腕をとって壁に押し付けて来た。そして、


「ソラリ……むぐ……!?」


 我慢も限界って感じのソラリスが、キスをしてきた……!!


「ああっ!! こら!! 抜け駆けしないの!! 次私! 私よっ!!」

「ぷはぁ……むぐ……!!??」


 ようやっとって感じでソラリスから解放された私の唇は、あっという間にプリシラによって塞がれてしまう。

 それから代わる代わるプリシラとソラリスに唇を奪われ、たまにエルザから唇を奪われ、解放されたのは10分以上たった後だった。


「も、もうちょっとだけ我慢してっ……!! ね? ね?」

「わかってますけどっ……すみませんっ、興奮しちゃって……」

「あなたが可愛すぎるのが悪いのよっ」

「そうですねっ、クリスお嬢様が悪いですっ」

「そんなぁ!?」


 私、悪くないと思うんだけど!?


「だってここまで我慢したんだもの、ちょっとくらい暴走したっていいと思わない? ねぇソラリス?」

「そうです、そうですっ、ずっとおあずけされてたんですからっ」


 こういう時にだけチームワークを発揮するのよね、この2人。いつもは仲良く喧嘩してるのにっ。


「はぁ……それにしても、本当にようやっとですよ……」

「そうね、結婚を決めてから随分長かったように感じるわ」

「実際数か月だけど、おあずけってのは辛いものだもんね~」


 みんなはそう言うけど、私なんて今日この日を60年以上待ったんだから!!

 プリシラを失って、そして自分の想いに気付いて、ずっと後悔し続けた日々、そして人生の最期に奇跡を貰って、こうして昔に帰ってこれて、愚かな自分の人生をやり直すことが出来た。


 何度も何度もプリシラとの学園生活やデート、結婚式を妄想して枕を涙で濡らした日々、それがこうして現実のものになって――更にソラリス、エルザとも結婚できるなんて……本当に私って幸せ者ね。


 時を戻してくれた神様に感謝しなきゃ。どう? 見てる? 神様っ、私、幸せになれたわよっ。


「プリシラ、ソラリス、エルザ……幸せになろうねっ」

「勿論よっ」

「はいっ! お嬢様っ!!」

「勿論ですともっ!!」


 私は3人の嫁達を、幸福感で満たされたまま、ぎゅっと抱きしめた。


「―――――――ところで、さ」

「どうしたの? クリス」


 プリシラが、ひょいと顔をあげた。


「その……決まった……の?」

「何が?」

「だから、その……あれよ、あれ」

「あれじゃわからないんだけど」

「いや、だから……その……」


 口に出すのも、恥ずかしいんだけど……でも、そろそろ私も覚悟を決めないといけないし、心の準備もあるから……聞いておかないといけない。


「だ、誰から……なのかなって」

「ああ、それね」


 プリシラがニンマリと笑うと、隣のソラリス、エルザに目配せをした。

 え? 何? そのリアクション……何かみんな、すっごい笑顔なんだけど……


「誰が最初か、それはず~~~~っと話し合ってたんだけど、なっかなか結論が出なくてね?」

「ええ、だって私達の誰もがお嬢様の1番になりたがってましたし」

「そういうわけで、私達の出した最終結論は――」


 そこで3人は言葉を区切って、そして、


「――3人全員ってことにしたわ」


 ……………………ん?


 聞き間違いかな?


「えっと……? 今、何て?」

「だから、3人全員でってことになったわ」

「……え」


 ちょ……え……?


「まぁ私としては、第一婦人としてあなたの1番を貰う権利があるとも思うんだけど……」

「私だって、物心ついたときからずっとお嬢様をお慕いして来たんですもんっ!! ここだけは譲れませんっ!!」

「とまぁそういう訳でね? 不公平にならないように、全員でってことになったのよ」

「いやいやいや!?」


 なったのよ、って!? えええええ!?


「これは嫁達の総意で、決定事項だから」

「異議を唱えてももうダメですよ~?」

「そう言う事ですっ」

「ちょ、ま……!」

「ささ、お嬢様? そろそろお時間ですよ? 式場に向かいましょうね~」

「ほらっ、行くわよっ」

「ふふっ、楽しみですね~」

「ま、まってぇぇ!?」


 その日、私は3人の嫁を貰い、そして――3人のお嫁さんになった。

お読みいただき、ありがとうございますっ!!

これにて本編は完結となります!

この後は個別エンドです! あと少しだけお付き合いいただけますと幸いです。


面白いと思っていただけましたら、感想、ブックマーク、評価等頂けますと飛び上がって喜びます! 更新の励みとなっております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] he本当に良かった [一言] 完結お疲れ様です! ずいぶん時間が経ったような気がする 前期はとてもおもしろい 後ろには動力がない 日常は疲れる でもこの小説は好きです 応援(。ò ∀ ó…
[良い点] 本編完結おめでとうございます! 平日終わりの楽しみにしていた作品でした。全員ハッピーでよかったです! 個別エンドもあるとのことで、そちらも楽しみにしたいと思います!
[良い点] え?もう結婚式? 三嫁ももうおあずけ限界だったし仕方なしw クリスは操を守った、そのぶん解禁後は大変なことになりそうね♪ 卒業百合婚と一大ブームになりそうな世界、お幸せに~ [気になる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ