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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第三章 女神の願いの片手間に
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68手間

 明朝…いや、まだ夜中と言っていい時間だろう頃に最前線の街へと向かう為、東の門にはおそらく百名は超えているだろうハンターが集まり続々と出発し始めている。

 ハンターは基本多くとも十名程度のパーティで動くため、大ざっぱな指示はギルドからあったものの後は臨機応変(かってにしろ)に動けと言う事なので、中世の騎士の様に隊列を組んで、何てことはない。

 各街等にいる衛兵は戦争の為の領主達の私兵が走りなので、未だにそういう軍事訓練はしていたようだが、万が一ハンター達が抜かれたり討ち漏らした魔獣などがいた場合に備え、今回は街の防備に専念する事となり一切着いてはこない。

 とは言えそれに不満を漏らすハンターなど居る筈もなく、寧ろ稼ぎが減るからてめーらくんなと言うほどの勢いだ。


「隊列なぞ組まずとも、これほどの人数が動くとそれはそれで壮観じゃのぉ」


「そうだなぁ…今回は五や四までかき集められてるらしいしな、後から来るやつらも含めたら相当な人数になるんじゃないか?」


 ワシらもそのまるでお祭りの様な人混みの中を歩きながら喋る。


「確かにワシが言うのもなんじゃが若いのも多く見えるが、五や四なぞ見ただけでわかるのかの?」


「弓持ってるやつと魔法使いだけで固まってる奴らがそうだな。今回は前線に出るのは三以上に限られてて、五や四で参加できるのは魔法や弓を使える奴、つまり街の防壁の上から攻撃できる奴だけって条件だったからな」


「ふーむ、言われて見れば確かに。しかし弓を持っとるハンターを初めて見た気がするのぉ。狩人(ハンター)なぞという名じゃから持ってても良さそうなもんじゃったが」


「ハンターって名前は食うための動物を狩る狩人の寄り合いから出来た故の名残だって話だな。弓なんざ魔獣の足止め程度にしかならないから、ハンターが使う事はほぼ無いんだ。魔物相手では刺さりもしないだろうよ。弓が弱いわけじゃなく相性が悪すぎる。魔獣は言ってみりゃ動く死体だから、きっちり頭切り落とすか四肢を叩き潰さない限り動き続けちまう。つっても普通の動物には有効だから、魔法じゃ威力デカすぎてダメになっちまうし、ダメにしないほど精密な魔法が使えるならそれこそハンターやったほうが稼げる。普通の狩人だって魔獣に遭遇するから、最低限剣や魔法を使える奴ばっかりだしな、それで実力を付けたって勘違いした奴がハンターになるって寸法だ。だから弓持ってるやつは新米か、食うに困ったときの最終手段用ってところだな」


「なるほど、さすがアレックスじゃ。詳しいのぉ」


「偉そうに言ってるが、俺がその勘違いした中の一人だからな」


 そういってアレックスが豪快に笑う。確かに斥候といえば短弓と短剣というイメージだが、自らをそう名乗るジョーンズは長剣を持っているだけだ。


「ふむ、しかし食うに困ったときの為にワシも弓を使えるようにしたほうが良いかのぉ…」


「いや、セルカなら弓覚えるより短剣で刺したほうが早いんじゃないか?と言うかセルカが弓使えないのは意外だな、獣人は狩りして食ってる連中だし、今まで会った奴もみんな弓使えるやつばっかだったからさ」


「ま、まぁ、ワシは変わり者じゃからの、あはははは」


 乾いた笑いが出るが、街に来る獣人は腕試しに出てくるような変わり者連中なのだ、弓を使わない(つかえない)変わり者が居てもと納得したのであろうかそれ以上は特に追及されなかった。

 女神様からも、街出身の獣人でも親から教わるので弓は使えると教えられていた。それを考えると、ワシが弓を使えないのは少々不自然だったか…普通であれば得手不得手で済む話であるが、なぜか獣人は狩りに関する事で不得手は存在しない。

 噛みつくのが苦手な狼なぞ居ないということか…もし仮にいたとしてもその血はすぐに絶えてしまう。今からでも弓を…いやいわれた通りさっさと近づいて短剣で突き刺したほうが早い…うむ、次からは弓を使うよりそっちのほうが早かったからという事にしよう。


「おっとそろそろ分かれる頃かの、ワシらは左じゃったかの」


「そうだな、左からだ。外に行くか?」


「そうじゃの、街の近くに行って誤射なぞされては堪らぬ。外から回ろうとしようかの」


 魔獣どもは生きているものを感知する能力に長けているため、離れた位置から左右に分かれ魔獣や魔物の狙いを分散させ、さらにそのまま挟撃するというのが今回の作戦だ。

 弓や魔法使いの新米連中はそのまま直進し街の裏手から入ってそのまま防壁に配置される予定だ。ひよっこからベテランが離れる形になるが、魔獣や魔物はマナの量が大きい者…つまり強い力を秘めたものを優先的に狙う。新米よりも強く数も多いワシらが囮になるから大丈夫という訳だ。援軍が来る(・・・・・)などという事を予想し裏手に廻り込み、さらに新米を判断してそっちを優先的に襲うなんて知恵の回る魔物が居ればすでに街は陥落しているはずだし、それは無いだろうとの判断だ。

 氾濫は急速に魔獣化したりダンジョンと同じように魔物が突然湧き出てくる現象と言われている。故に知恵をつける時間なぞ無いだろうと。その為か、氾濫が起こったけれども共食いし始めて勝手に全滅した、なんて笑い話もあるくらいだ。


「フラグっぽい気もするが、普通に攻めあぐねられとる様じゃし大丈夫じゃろう」


「ん?なんか言ったか?」


「いや、街も見えてきたし気を引き締めねばの。と言ったのじゃよ」


「そうだな」


 その言葉にカルン達も頷く。日も中天をとうに過ぎ遂に最前線の街が間近へと迫っていた。



この世界、雨も少なくそれに伴い水害もまずないので、氾濫は即魔獣などの大増殖を指す言葉になってます。

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