3518手間
地下のセラーから入って外から帰って来たのだが、先触れを出していたので然したる混乱もなく帰ることが出来た。
すぐに文官は報告書の作成に向かい、近侍の子らは近衛たちと情報を共有する。
そしてワシはその足でクリスの下へと向かう。
「既に簡単な話は聞いていたけれど、まさかセラーから地下水路に繋がっているとはね」
「まぁ、逃げ道としては妥当じゃろうしの」
「しかも、出口が水路に偽装されていた上に、逃げたら水で塞ぐような仕掛けまであったそうじゃないか」
「仕掛けというほど特別な物ではなかったがの。ただ単に水門を開いて水を流し込むだけじゃからの」
「それは、セラーまで水があふれてくるんじゃないか?」
「水路の水位次第じゃが、その可能性はあるのぉ」
とはいえ脱出路の出口にある水路は普通は使われることは無いので、水路から水が入ってくることは有り得ないのだが。
「なるほど、それならば一安心か」
「それに脱出路の出口は後でしっかりと塞がせるし、使われることは無いじゃろう」
「塞いでしまうのかい? 万が一の為にあった方がいいんじゃないかな」
「都市国家時代の物じゃろうし、今更屋敷を放棄して逃げるような状態にはならんじゃろう」
戦があるのならばともかく、平時に脱出路を使って逃げるような事態になった時点で詰みであろう。
もし囲まれるとしたら、ろくでもない事をした時であろうし、そんな事態になった時点で潔く捕まった方が人々の為になる。
「確かに、それもそうか……」
「あとろくでもない事に使われておった部屋もあったからのぉ」
「部屋があったという報告は聞いていたが、ろくでもない事とはいったい?」
「さてのぉ、既に運び出したか朽ちたかで、部屋の中には何も残ってはおらんかったからの。かなり濃い穢れたマナが溜まっていたから、ろくでもない事があったのは間違いがないがの」
あの時は黙ってはいたが、スライムが這っていた床はともかく、壁にはおびただしい血痕らしき汚れがついていたのがワシの目には見えていた。
部屋の中を浄化した時に一緒に消えてしまったが、壁があんな風に汚れるくらいだ、どんな状況でそうなったかは分からないが、何にせよそんな血が大量に飛び散るような事があったのは間違いなく、そんな所はさっさと潰してしまうに限るとワシは肩をすくめるのだった……




