3503手間
今回の増改築における厳罰化の施行に伴い、遡及適用は当然されないのだが、庶民がそんな小難しいことを知っている訳もなく、増改築を以前に行ったから確認をお願いしたいという嘆願が山ほど届き、クリスはにこやかにその嘆願を叶えるよう文官たちに命を下した。
「じゃからといって、この屋敷まで確認させる必要はあるのかえ?」
「流石に皆がやっている中、それを施行した者が手本を見せないのは不味いからね」
確かにこの屋敷もある程度の増改築を行ったが、その後は確認など行われているはずであるが。
「それは工事に関しての事だね、文官が申請通りに施工されたかを確認したわけではないんだ」
「ふむ、そうじゃったか」
「とはいえ、大工などによるしっかりとしたモノじゃないんだ、そう時間が掛かるようなものでもないだろう」
「そうじゃといいんじゃが」
増改築と言えど古くからある屋敷が元だ、そう大幅に変えたものなどもなくすぐに終わるだろう。
クリスは楽観的にそういうのだが、何せ古い屋敷だ、変な物が見つからなければいいのだが。
そう思ったのが悪かったのだろうか、執務室にややばつの悪そうな顔をした文官が入って来た。
「問題なく終わったのかい」
「はい。申請にあった工事に関する事は問題なく」
「"事は"ということは、他に何か問題が見つかったのかな」
「はい。セラーに少々問題が」
「あそこも少し増築したはずだが」
「増築した箇所以外におかしな点が見つかりまして」
「どうおかしい点が見つかったのかな」
曰くセラーの壁の一面が他と寸法が違うらしい。
クリスは古い建物だし寸法が狂っているくらいよくあることではないかと返すが、文官は首を横に振る。
「寸法が違うのは部屋そのものではなく、建材なのです」
「それこそ、用意する場所や時期が違えば変わってくるモノではないのかな」
「私どもも当初はそう考えたのですが、確認していた一人が壁を叩いてみたところ、明らかに音が違う箇所が御座いまして」
なんでわざわざそんなことをしたのか、やった本人も確信があったわけではなく、たまたま最近読んだ小説で壁を叩いて隠し扉を見つける場面があったらしく、なんとなくそれをやってみたらしい。
ならばなぜその場でそれを確認しなかったと問えば、扉などは無く確認するためには壁を崩す必要があるからと言われれば、それなら仕方ないかとクリスは私が直接確認しようと腰をあげるのだった……




