3501手間
一つ犯罪に使われていたということは、当然他にも無いか捜索することになったのだが、何と今回見つけた隠れ家同様のモノが、街中にいくつも見つかったのだ。
「これだけあるというのに、よくもまぁ的確に犯人のアジトだけを見つけたものじゃのぉ」
「もともと、被害を受けた家や店舗の場所から、犯人たちの活動地域を絞っていたらしいからね」
「なるほどのぉ。確かに平民区画の屋根をすべて調べておっては、その間に犯人に逃げられるのは目に見えておるからの」
元々当たりを付けていた箇所の屋根を探ったら、ということだったらしい。
そして犯人を見つけて落ち着いたところで、同様のモノが無いか探ったらというのが今回の発見の顛末という訳だ。
「幸いなことに、見つかった隠れ家は全てちゃんと申請を受けたモノで、中に保管されていたりした物もすべて違法性はなかったから、犯罪とは今のところ無縁ではあったけどね」
「それはどういうことかえ?」
「単純な事だよ、調べたらちゃんと申請された住所と場所で工事が行われていたというだけ」
「ふむ? ではなぜ屋上に隠れ家があると気付かなかったのじゃ」
「基本的に受理した後は、完成したという報告を受けた時と、違法な建築を発見した時くらいしか確認することは無いからね。それにまさか入り口が屋上にあるとは誰も思わないじゃないか」
「つまり、完成した後に誰もその家やらを確認しておらんという事かの?」
「僕も初めて知ったけど、その通りみたいだね」
申請して受理されれば後はいくらでも誤魔化し放題ではないか、そう言えばクリスもその通りだと苦笑いしながら同意する。
「もちろん、初めて知った時に僕も文官たちに、なぜこんな杜撰なやり方なのかと聞いたよ」
「で、どんな言い訳が飛び出したのじゃ?」
「この制度はそもそも貴族を基準に作られたモノらしくてね、事後の確認はその家を舐めていると思われるからと、こんな形になっているらしい」
要はちゃんとしてるか確認するとか、我が家を信用してないのかと文句を言われるからと。
つまるところ貴族の面子で出来た制度がそのまま平民にも適用されたから、こんな事になっている。
「しかしじゃ、実際に犯罪に利用されたのが分かったのじゃから、このままではいかんじゃろう?」
「もちろんだとも。少なくとも平民の建築物の場合は完成後にちゃんと申請通りかを確認するように変更する。まずはこの領地だけの施行になるが、陛下にも奏上する予定だよ」
「ふむ、妥当ではあるの。じゃがそれでは貴族に対しては全く効果は無いのではないかえ」
「それに関しては家の増改築全てにおいて罰則を強化する、現状では工事を依頼した者に比べて施工した者たちへの罰の比率が多いが、依頼をした者に対しても厳罰化する。これまで通りではあるが見つかった場合、その他の罪状が無くともそれだけで取り潰しも出来るくらいにはね」
「確かに、それは効きそうじゃな」
これまで通り信用して調べないけれども、当然無許可で隠し部屋などを作らないよね? 叛意がないのであればそんなことする必要ないよねと圧を掛けるという訳だ。
もちろん小賢しい者は徹底的に隠すようになるであろうが、徹底的に隠せば隠すほどに利用するのは手間がかかるようになる。
今のところはそれだけで十分だと、クリスは裏に隠した表情を隠すような笑顔でどこをどう厳罰化したかをワシに説明してくれるのだった……




