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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3491手間

 正直に言ってそもそも暗殺なんて手段は、よほど警備が手薄な所でもない限り通すことは不可能だろう。

 ましてや王家の警備を搔い潜るなど、運に恵まれた上で尋常ならざる手段を用い、暗殺者を使い捨てでもしないとたどり着くのも難しい。

 実際ワシの背中に短剣を突き立てた暗殺者たちは、深い霧に紛れおぞましい手段を用いて身体能力などを上げてようやく短剣を突き立てただけなのだから。


「普通はそれで十分なんだけどね」


「普通と違う者を相手にするのじゃ、尋常なる手段を取ったところで片手落ちであろうて」


「それはそうなんだけどね」


 鎧を着ている相手に短剣を突き立てたところで弾かれるのが落ち、近づいたら勝ちのお遊戯ではないのだ。

 しっかりと相手に合わせた手段、例えば短剣ではなく槌を用いるとか、短剣しか使えぬのであれば関節を狙うなどの工夫が必要であろう。


「そう考えると、やはり暗殺に必要以上に対処する必要はなさそうだな」


「そうじゃな、そんなことをするよりも、毒やらを盛った方が早いし確実じゃろうからの」


「であれば、食糧庫などの予算を増やしたのは正解だったな」


「ま、毒を盛られるよりも、腐った物が混じる方が多いじゃろうしの」


 直接刃を突き立てるよりも毒の方が多く用いられ、事実そちらの方が成功率が高いであろうが、やはりこちらも手段としては陳腐であるのに難しいやり方でしかない。

 誰かが入れた毒を警戒するよりも、腐った食べ物が勝手に毒を生み出すのを警戒した方がよい。


「それは確かに……」


「まぁ、一応あれは腐ったわけではないようじゃがの」


 侍医が毒性などを判断するために酸っぱくなったスゴアルアドたちの酒を調べたのだが、あれは腐って酸っぱくなったわけではなく、発酵が進んでお酢になっただけとのことだった。

 クリスの反応が劇的だったために周囲がかなり動揺したのだが、ただの果実酒だと思って飲んだらお酢だったのであれば、誰だってあんな反応をするだろう。

 そしてお酢であるのあればと調理人の下に送られたのだが、残念ながらお酢としては酸味が強いわりに香りや味が殆どないので、料理に使うには難しいと言われてしまったらしい。

 

「なんにせよ酒が酢になっては困るからの、そこらへんはしっかり管理してもらわねば困るのぉ」


「それは確かに、またあんな思いをするのは嫌だからね」


 よほどお酢を飲んだのが嫌だったのか、酢を飲んだことを思い出したというのに苦い顔するクリスを見てワシも苦笑いで応えるのだった……

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