3487手間
経過を見ようという事にはなったが特に大事もなく、ようやく人心地ついたクリスが椅子に深く座り込む。
「驚くほど酸っぱくなっていたが、あれほど大ごとになるとは思わなかったよ」
「ワシとしても、これほど早く痛むとは思っておらんかったからのぉ」
「なんにせよセルカが居る時で良かった、そうでなければ何人かの首が飛んでいただろうしね」
「そうじゃの」
クリスの言う通り、もしワシが席を外している時に事が起こっていたら、何人かの首が飛んでいたことだろう、もちろん比喩的な意味ではなく字句通りの意味でだ。
「なかなかに美味しかったから、もう飲めないのは残念だよ」
「トウモロコシさえ手に入れば、それを使って造ることもできるじゃろうが」
「これほど足が早いのであれば、造るのは難しいだろうね」
「そこがのぉ……」
造ってから数日で駄目になるのであれば、輸送すらままならない。
クリスのみが飲むとなると、倉庫かなにかで細々と造ればよいが、クリスがいつ飽きるか分からないのだから、わざわざというのも難しい。
無論王族である故にその程度の事はやっても問題ないのだが、クリス自身はわざわざそこまでしてまでという程ではないようで、あるのならば好んで飲むがというくらいのようだ。
「一先ずは処罰などはしておらんのじゃな」
「流石に酒を出した者が確認を怠ったのは事実だからね、そこには相応の処分を下したが、僕も確認をさせなかったからね、そこまで厳しい沙汰は下してないよ」
「そこは致し方ないの」
もし酒を出した侍従が一口でも確認していればこんな事にはならなかったのだ、クリスもワシが持ってきた酒だからと確認を怠ったのも事実なので、流石にそこまで厳しい処分は下していないと肩をすくめる。
何にせよこれからは他の酒の管理も徹底させようと、クリスは政務の合間にその辺りの予算の割り振りなどを真剣に文官たちと共に話し合いを始めるのだった……




