3468手間
巣箱を置いたからと言って、それをすぐに使う訳もなく期待に満ちた目をしている侍女たちには悪いが、すぐにあの子たちが巣箱を利用するかわいらしい姿は見えないだろう。
「そういえば、元の巣の場所はどうしておるのかえ?」
「柱の間に作っているようですが、たまに落ちかけてますので、比較的早く移動するのではないでしょうか」
「ふむ。ならば問題は無かろうな」
既に巣を作っているならば、そこから決して動かないこともあるだろうが、居心地が悪いならば恐らくすぐに移動してくれるだろう。
とはいえそれでもある程度の時間は掛かるであろうから、今見上げている者たちの期待に応えることはないのだが。
「さて、他に何ぞ必要な物はあるかえ」
「そうですね…… いえ、今のところは何も思いつきません」
「そうかえ」
餌に関しても草木に付く虫とおやつの果物で十分のようなので、エサ台みたいなものも必要ではないらしい。
他にも聞くがダークエルフたちは誰も思い浮かばず、ワシも特に何が必要かなのかは分からない、小鳥を飼っていた経験のある侍女たちも、水とエサ以外はよく分からないと言うので、ダークエルフたちが何か思い浮かぶか、侍女たちの実家から小鳥を飼うのに必要な物が何かという答えが返ってくるのを待つほかない。
「さてワシも、そろそろ戻るとするかの」
「はい。では、何か思いついた物がありましたら連絡しますね」
「うむ」
侍女たちの懇願するような視線を振り払い温室から立ち去ろうとしたとき、小鳥たちがやってきてワシの肩へと飛んできた。
「どうしたのじゃ?」
小鳥たちの頬を少し折り曲げた指の側面で二羽交互に撫でてやりながら聞けば、温室以外も見てみたいというような漠然とした思考が伝わって来た。
「ふぅむ、勝手に飛び回らぬ事を約束できるかえ?」
「えっと?」
「あぁ、ちょっとこの子たちの散歩に付き合ってくるからの」
「分かりました」
ダークエルフが何事かと聞いてきたが、ワシの答えを聞いて納得すると、侍女たちが小鳥たちをまだ見れると小さく喜びの声をあげるのだった……




