3452手間
とりあえず外套を羽織りフードを被れば、スゴアルアドも鳥たち襲われないことは分かった。
ただフードを取り払った瞬間襲われるので、そこは気を付けないといけないようだが。
「ふむ、一度見えたからと言って、被りなおせば大丈夫のようじゃな」
「一度見えたらもう駄目じゃないのはありがたいが、いきなりフードを剥がすのは止めてくれないか?」
「良いではないか、攻撃はされなかったじゃろう?」
先ほどはフードを彼が外れる前に掴んでしまったので、隙を突いて外したところ、ワシの上に乗っていた鳥たちが目の色を変えたので、すぐにそのままフードを再び被せてやったのだ。
そうしたところ、殺気というにはかなり可愛らしいモノであったが、にわかに殺気立った鳥たちはまた落ち着きを取り戻したのだ。
「軽いとはいえ、結構痛いんだから止めて欲しい」
「まぁ、確かめておいた方が良いじゃろうて」
「確かにかぶりなおせば大丈夫と分かるのは良いんだが、一言声をかけて欲しかった」
「そうすれば自分で外したかえ?」
「もちろん、あぁ、いやどうだろうか……」
「であろう?」
自分が怪我をするような行為を、自ら進んで出来るような者は稀だ。
とはいえ障壁で鳥たちの攻撃を防ぐつもりであったし、怪我をすることは無いのだが。
「とりあえず、これでここを行き来しても大丈夫だって分かったんだ、もう用事は無いだろう?」
「そうじゃな、戻るとしようかの」
ここを縄張りとする鳥たちは魔物ではなく、その攻撃性も装飾品を隠せばなくなる程度の対策も簡単なものだ。
であればわざわざ駆除するような必要もなく、万が一山から下りてきたとしても大丈夫だろう。
街と外を行き来する者たちは基本的に装飾品で身を飾ることは無く、何より大抵は雪や寒さ対策に外套を羽織っているので、装飾品を身に着ける習慣がある者もすぐに襲われることは無いはずだ。
「あぁ、戻ったら、鳥を駆除しようとする者たちは止めることじゃな」
「大丈夫だ、襲われないならこっちから襲う必要もないし、何よりそんな好戦的な奴は居ないからな」
いきなり現れたワシを見て、驚き固まっただけで直ぐに受け入れた者たちだ、好戦的でないことは分かっているが、襲われないならそれを優位にという事もないと、太鼓判を押す彼がドンと胸を叩けば、その勢いでフードが外れ、彼に向ってワシに乗っていた鳥たちだけであるが一斉に襲い掛かるのだった……




