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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3444手間

 窯の内側という如何にも直火で一気に熱が入りそうな場所だ、あっという間に焼けるのではないかという予想通り、部屋の中にはトウモロコシが焼ける良い香りが漂ってくる。

 そこに肉の焼ける香ばしい匂いと、肉が漬け込まれていたであろうモノが焼ける果実にも似た香りがトウモロコシの香りに混じってきたころ、再び窯の内側に手を入れて、焼き上げた薄いパンを取り出し金属製の皿の上に重ねて置いていく。


「ほう、焼いても膨らむことは無いのじゃな」


「ロティは焼いても膨らまないだろう?」


「ふむ、それはロティというのかえ」


「あぁ、これに肉とか野菜とかを乗っけて食べるんだ」


「なるほどのぉ」


「他の集落と頻繁に交流があった時は、チーズなんかも乗せれたんだがな」


 スゴアルアドたちはそれなりに居たのだろうか、しかし、彼の話によればそれは昔の話で、今は他の集落との交流はないらしい。


「なぜ交流が無くなったのじゃ?」


「私たちが集落を完全に移動したのもあるが、間に魔物の巣が幾つも出来てしまったんだ」


「交流が危険になったという訳かえ。しかし、おぬしらの体格なれば、大抵の魔物は相手にならんのではないかの」


「小さい奴なら大体駆除したんだが、残ってるのは鳥の魔物でね。私たちが手を出せない場所に巣を作って襲ってくるんだ」


「鳥の魔物じゃと?」


 鳥は魔物とはならない、彼らは空を飛ぶゆえに穢れたマナに接する機会がほぼなく、大抵の鳥は体が小さいので、魔獣となるほどの穢れたマナがその身に溜まることもない。

 それ故に鳥は魔物とは無縁だと思っていたのだが、彼の言葉を信じるならば、その認識を改めねばならない。

 

「そうなんだ、そこの小さいお嬢さんでも捕まえれそうなほど小さい鳥なんだがな、空から落ちてくるように飛んで来て、鋭いくちばして突っついてきて本当に危ないんだ」


「ふぅむ、それほど好戦的であるというに、ワシらは出遭わんかったの」


「奴らは巣が駄目にならない限り、縄張りからは決して出てこないからな。ただ自分たちの縄張りに入って来たモノには同族であれ容赦はない」


「縄張りから出ぬのならば、迂回するように行けば良いのではないかえ?」


「私たちもそう思ったんだが、奴らの縄張りを迂回するならば、自殺行為なルートを通るしかなくてね」


「ふぅむ、鳥たちにとっても安全ゆえにそこを縄張りにしてしまったかえ」


「駆除できればまた、色々と交流できるんだがなぁ」


 ただただ嘆くように呟きながら、焼き上がったらしい肉をまた別の皿に盛り、ロティと焼いた肉が乗った皿を持ちテーブルの上に載せるのだった……

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