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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3431手間

 目の前のスゴアルアドが感謝の念を捧げ終えたところで、まるでその念で再び動き出したかのように、固まっていた他の者たちが集まり始めた。


「今から酒の話をしているのか? それでは出来るまで耐えられないだろう」


「それは、その話を聞いた私たちも同じなのではないか?」


「その通りだ、全く今から待ち遠しくなってしまったではないか」


「来ていきなりそれか……」


 固まっている間も一応は話を聞いていたのだろう、来るなり口々に酒の話をするものだから、今までワシらと話していたスゴアルアドが顔に手を当て、やれやれと頭を振る。


「ふむ? 酒は存外できるまでに、時間が掛かるのかえ?」


「いや、すぐにという訳ではないが、次のトウモロコシが収穫できるまでには飲める」


「トウモロコシが出来る頃に、酒は酸っぱくなるが、その酸っぱくなった奴を次の甕に入れると旨い酒が出来るんだ」


「おいおい、振り払おうとしてたのに、更に飲みたくなるようなことを言うんじゃないよ」


 前の巡りで出来た酒を次の酒の酵母とするのか、まぁワシも別に酒に詳しい訳でもなく、その解釈が正しいのか、もしかしたら何の効果もなく、ただのまじない程度なのかもしれないが。

 何にせよスゴアルアドは皆酒に目がないという事は間違いないだろう、何せワシらを完全に無視して酒の話で盛り上がり始めたのだから。


「(お酒って、そんなに美味しいの?)」


「それは人によるのぉ」


「(私も飲んでみたい)」


「もうちょっと大きくならぬと体に毒じゃからの、おぬしはまだ飲めぬのぉ」


「(毒を飲んで美味しいって言ってるの?)」


「毒は薬にもなるものじゃ。誰かにとっての毒は、誰かにとっての薬やもしれん、逆もまた然りじゃ」


「(難しい)」


「ま、難しく考える必要はないのじゃ」


 節度を持って飲めば酒が体に悪さをすることは無い、とはいえアラクネの子の姿だけを見れば、まだ酒を飲むには早いだろう。

 別に水が悪い訳ではないので、水代わりに酒を飲む必要もなく、そも酒を旨く感じるかどうかは人によるので、無理に飲む必要もない。

 だからもっと大きくなった時に、少し舐めるくらいがいいだろうと、酒の話で未だに盛り上がっているスゴアルアドを横目に、アラクネの子の頭をなでてやるのだった……

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