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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第四章

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俳優

 

 ハヤトがディーテから話を聞いた三日後、ちょうどログインしているときにスタンピードが始まった。


 ハヤトはアッシュ達と傭兵団、そしてネイ達と一緒に帝都へと移動する。


 ハヤトは戦えないので破壊対象外の建物の屋上に陣取った。そして帝都を見渡す。ハヤトが以前モニター越しに見た景色とは違ってかなり見晴らしがいい。


 平日の午前中ということもあって、プレイヤーの数は少ない。だが、こんな時間にログインしていると言うことは相当な手練れと言い換えることもできる。少数精鋭での戦いとも言えるだろう。


 アッシュとしても人が少ない方がいいとのことだった。


 炎龍エディ・オウルのHPを炎化しないギリギリまで減らしてから最後にセシルでとどめを刺す作戦なので、人が多すぎるとその見極めが難しくなるためだ。そもそも参加メンバー全員の作戦ではなく、あくまでもアッシュ達の作戦なので他のプレイヤー達との連携ではない。


(モンスターのHPは数値では見えないけど、いわゆるHPバーで確認はできる。三分の一直前まで減らすのは難しいだろう。間違って余計にHPを減らしたら炎化して勝てなくなるからな)


 そして今回、セシルにはエクスカリバー・レプリカを渡す代わりにこちらの作戦通りにやってくれと口を酸っぱくして言っている。セシルは確かに強いのだが、気まぐれというか落ち着きがない。面白そうなことを思いつくとすぐにやりだすのだ。


 エシャ曰く、セシルは自由にやらせていたほうが強いですよ、とのことだが、今回の戦いはセシルが肝となっているので、そういうわけにもいかない。


 そこでセシルに言うことを聞かせるために、今回はエシャを連れてきた。


 エシャは所属国の設定上、帝都のスタンピードには参加できないという縛りがある。だが、それはスタンピードのモンスターに攻撃できないという意味であり、その場にいることは可能だ。


 そしてモンスター以外は攻撃することができる。


「セシル、変なことしたらこのベルゼーブで撃ちますから気を付けてくださいね。この銃口はいつでも貴方を狙っていますよ?」


「エシャの場合、変なことしなくても撃つだろ?」


「昔の仲間から理解されているみたいで嬉しいですね」


「俺は嬉しくねぇ。まあ、作戦通りにやるよ。というか、今回はアッシュが許可を出すまで攻撃しちゃダメだからな、その辺で普通のドラゴンでも狩ってるよ――なあ、ハヤト、ずっと言いたかったんだが、よくエシャを雇ってるな? 尊敬するぜ」


 セシルはそう言ってアッシュ達と屋上から階段を下りていった。


 そしてこの場にはハヤトとエシャの二人になる。


「誰かに尊敬されたのは初めてかな」


「メイドギルドだと尊敬を通り越して救世主なんですけどね」


「それは言わないで――それはいいとして、話は変わるけど、アッシュの父親のこと、どう思う?」


 ハヤトはディーテから聞いた話をエシャに相談しようとして話した。その時は現実で喫茶店が暇になったときだったのだが、その後、珍しく喫茶店が忙しくなったので、それ以上の話はできなかった。


 エシャは目をつぶりながら、うーんと唸ったが、すぐに目を開けてハヤトの方を見た。


「私としてはなんとも言えませんね。私もご主人様と同じように両親はいませんし、親が子をどう思うかとか、子が親をどう思うかなんて分からないんですよ。なんとなく、親ならそういうこともするのかな、とは思いますが」


「エシャの時代だと今よりも大変だったから、確かにそうかもしれないね……あれ? そうなると、父親のいるアッシュやレンちゃんって、当時だと珍しいんじゃないの?」


「珍しいですね。でも、アッシュ様はお金持ちでしたから。アッシュ様というか、そのご両親ですけどね」


「え? そうなんだ? なら、なんで仮想現実に?」


 仮想現実で生きることを選択するのは現実に絶望していたからという理由が大半だ。お金があれば絶望しないというわけではないが、お金があれば色々な可能性が生まれるのは間違いないだろう。


 だが、アッシュ達はそれらを捨てて仮想現実だけで生きようとした。ハヤトにはその理由が分からない。


「そのあたりの事情は私も知りませんね。ただ、それもあってブランドル兄妹といえば、当時は有名でしたよ。父親の方はほとんど表には出てきませんでしたけど」


「そうなんだ……ちなみに、アッシュ達がお金持ちの理由は知ってる?」


「私は詳しくないんですが、アッシュ様達のご両親は映画俳優だったんですよ。私が知っているくらいには有名でしたね」


「映画……俳優? 百年前にはいたんだ?」


 この時代のCGはほぼ現実と見分けがつかない。また、電子合成音も人間と変わらず、聞き分けることができないほどになっている。そのため、映画には現実の風景や人などはなにも出てこない。


 そのために、俳優や声優といった職業も今は存在しない。言葉としては残っているが、その職業をしている人も今ではまったくいない状況だ。


「昔はかろうじていたんですよ。当時、アッシュ様達のご両親が出演した映画が世界的な大ヒットになって、その利権で大金持ちになったと聞いたことがありますね。確かアッシュ様も何かの作品に出演していた気がします。それがヒットしたかどうかは知りませんけど」


「それは驚きだね。実は俺って昔の映画が好きなんだよ。もしかしたら、俺が見た映画に出ているのかな? 結構見ている方だし」


「可能性はあると思いますよ。タイトルは忘れましたが当時はかなり有名でしたから」


 そもそもハヤトが喫茶店をやろうと思った理由の一つが映画だ。映画に感動して自分も喫茶店をやりたいと考えるほどには影響されている。見た当初はおぼろげな夢ではあったが、地球にある行きつけの喫茶店に通うことでその意志が固まったと言ってもいいだろう。


(そういえば、アッシュのお父さんを王都で見たとき、どこかで見たような気がした。もしかして本当に何かの映画で見たのか? あとで確認してみるか)


 ハヤトはさらにエシャからアッシュ達に関する何かを聞こうとしたが、エシャはよくは知らないとのことだった。


 そんな会話をしていると、徐々にドラゴンの数が減ってきた。


「ドラゴンの殲滅速度が上がってますね。ご主人様が作ったドラゴンイーター・レプリカのおかげでしょう。この調子ならどの施設も壊されることなく炎龍を倒せるかもしれませんね」


「そうなるといいんだけど、どうだろうね」


 ドラゴンの殲滅速度が上がりだしたのはここ最近だ。オークションでドラゴンイーター・レプリカが出回ったことが影響している。


 品質によって性能は多少異なるが、最低でもドラゴンに対してダメージ二倍を叩き出す武器として高値で取引されている。一部のプレイヤーはどうやって手に入れるんだと血眼になって探しているほどだ。


 この「アナザー・フロンティア・オンライン」はネット上に情報がない。


 それはクラン戦争が始まった頃からディーテが発見しだい削除しているからだ。最初は人を呼び込むためにゲームの情報に関してもある程度は許容していたが、クラン戦争では戦術やスキル構成などが重要な情報となるため、イベントが始まったときに削除した。その方が仮想現実をより楽しめるとディーテが考えたからだ。


 そのこともあり、このゲームでは情報の秘匿が流行っている。自身で見つけた情報は誰にも教えず独占するのだ。


 「ドラゴンイーター・レプリカ」を作れるのがハヤトだけと分かると、プレイヤーが拠点に押しかけてくる可能性がある。それを考慮して、オークションには傭兵団の団員が複数人で出品していた。そうやってハヤトを守っている。


 そして売り上げに関してはハヤトや傭兵団で山分けとなっており、ハヤトはクラン戦争をしていたころくらいまでお金を取り戻すことができた。


(復興用のアイテムを作るのにもそれなりにお金がかかるから助かる。殲滅速度が上がったおかげで破壊される施設も減ったし、そろそろ強硬派のドラゴン退治だけに焦点を当てても大丈夫かな)


 ハヤトがそう考えた直後、空に巨大な炎の塊が出現した。それが帝都の広場に落ちる。


 広場では炎龍エディ・オウルとの戦いが始まろうとしていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] これエシルと炎龍が直線上に並んだ時、エシルが最強攻撃で炎龍にダメージ与えるのと同時にベルゼーブでエシルを撃ち抜けば、炎龍を確実に倒せるんじゃない?
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