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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第四章

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対策研究

 

 ネイはエクスカリバー・レプリカをセシルに売ることはなかったが、セシルは全くあきらめていないようで、ネイ達と共に行動するようになった。


 そして協力して教会周辺のドラゴンを倒していく。


 黒龍の戦い方に関してはハヤトの知っている内容と変わっていなかった。ネイを含む三人が前衛として接近戦で戦い、中衛三人は弓で攻撃、後衛は魔法での支援になる。派手さはないが、堅実な戦い方と言えるだろう。


「ネイ達は少し火力が弱いですわね」


 ゴスロリ服を着たロザリエが、ハヤトの背後でオレンジジュースを飲みながら、そんなことを言い出した。独り言のようだが、近くまで来たということは、ハヤトに言ったのだろう。


「あのクランにロザリエさんが入ったら結構な火力が出せると思うんだけどね」


「ですから、私はルナリア様に仕えていると言っていますでしょう? それにスタンピードだと、私は魔国以外では戦えませんわ」


(なんとなくだけど、クランに入りたそうな感じなんだよな。なにか適当な理由があれば入りそうなんだけど。ただ、スタンピードだと所属国の制限があるからこのイベント中は意味がないのか。いや、魔国でのスタンピードなら問題ないはずだ)


「なら、せめて魔国でスタンピードが起きたらネイ達の力になってあげてよ。クランに入るかどうかは別にして」


「まあ、それくらいなら構いませんけど――」


「安心して。そのときは私が魔王として黒龍のクランに参加する。アロンダイトの恰好いいところを見せれば、ネイもレプリカを装備するはず」


「ちょ、ルナリア様、何を言ってるんですか! ルナリア様は魔王なんですから魔王城でどっしり構えていてください!」


「誰の言うことも聞かない傍若無人のスタイルで行くのが今年の目標」


 ロザリエの苦労が見て取れる状況を少しだけ哀れに思いながらハヤトはモニターに視線を戻す。


 モニターの映像ではドラゴンの姿がかなり減っていた。


 そう思った直後にネイが空の方を指した。モニターの映像もそれに合わせて空の方を映す。


 そこには巨大な炎の塊があり、それが上空から落ちてくる映像だった。いうなれば、魔法のメテオスォーム。隕石が一つだけだが、それが地上に向かって落ちてきたのだ。


 それが地上に落ちると巨大な音が響き、その後に雄たけびが聞こえた。


 それはドラゴンロアと呼ばれる竜の咆哮で、体が硬直するスタン効果を発生させる攻撃だ。ハヤトの見立てではその効果範囲は帝都全体。帝都にいるキャラクターは全員がスタン状態になったと推測する。


(スタン無効の装備が必要だな。あれ一回とは限らないし、無防備だとダメージも高いはずだ)


 アッシュ達の傭兵団はアッシュやレンを入れて三十名。ハヤトはその全員にスタン無効の指輪か腕輪を用意するつもりだ。さらにネイ達やクランメンバーにも用意するので、相当な数が必要になる。


 スタン状態から回復したネイ達は、炎龍が落ちてきた帝都の中央広場付近を目指した。


 そこでは激しい戦闘が繰り広げられている。十メートルほどのドラゴンに向かって、数百人のキャラクターが一斉に攻撃しているのだ。


 ドラゴンのHPはなかなか減らない。相当なダメージを与えているにも拘らず、HPの残量を示す値はほとんど減っていなかった。


 そして前衛職はかなり厳しい。炎龍は定期的に翼による風圧でノックバックを発生させて近寄らせないようにしている。さらには炎のドラゴンブレスを吐き、かなり遠くまで攻撃する。中衛や後衛は攻撃をよく見ていないと巻き込まれて一瞬で倒されるだろう。


(ノックバック無効の装備も必要だな。ネイ達には以前作ってあげたからアッシュ達だけでいいだろう。それと炎耐性の防具だな)


 ハヤトは必要になりそうなものを考える。強硬派のドラゴンは五体。そのすべてに対策が必要になるが、一部の攻撃は共通の部分もあるだろうと、炎龍との戦いをじっくりと観察する。


 そしてこの場にいるメンバーにも対策に必要なものがあれば言って欲しいと依頼する。ハヤトが気づかないような対策に期待してのことだ。


 モニターの映像を見ていると、アッシュ達が現れた。そしてアッシュを先頭に炎龍に襲い掛かる。


 アッシュの持つ剣はドラゴンイーターと呼ばれ、ドラゴンに対して五倍のダメージを与えるというものだ。今回のスタンピードではかなり活躍ができるだろう。


 そしてレンのドラゴンカース。効果範囲はやや狭いが、敵一体の能力を一つ、半分に下げる。これもボスモンスターに対してかなりの有利を得られる。


(ドラゴンに対する特攻性能がある武器があれば傭兵団の皆も戦いやすいか? さすがにドラゴンにダメージ五倍はないだろうが、二倍くらいのダメージを出せる性能は作れたはずだ。ランダム性能だから何度も作らないとダメだろうけど)


 武器や防具を作る際、高品質になるほど特別な性能――スキルが付く場合がある。だが、それは狙って付けられるものではない。完全にランダムなのだ。そのために狙った性能を付けた武具を作るには何度も挑戦しなくてはならない。


 これは素材が大量に必要だなと思った直後、モニターから声が聞こえてきた。


「あー、アッシュじゃん! ドラゴンイーターを譲って!」


 ネイ達と一緒に行動していたセシルがアッシュの方へ向かったかと思うと、いきなり武器をくれと言い出した。


 アッシュの顔が明らかにゆがむ。


「悪いがその話は後にしてくれ。まずはあのドラゴンを撃退してからだ」


「おっしゃ! なら任せろ!」


 セシルは両手の剣を腰の両脇にある鞘に納めると、刀を抜いた。それを両手で持ち構える。


 そして次の一撃を必ずダメージ二倍にする刀のウェポンスキル「山茶花」を使用する。


 だが、セシルは何もせずに、刀を鞘に納めて今度は背中の両手剣を持ち、構えた。


 その行為にハヤトは首を傾げる。


「あれは何をしているのかな?」


「あれはセシルだからできる戦い方ですね。基本的にダメージ増加系のウェポンスキルは、その装備を外してアイテムバッグに戻すとなかったことにされますけど、セシルの場合は装備を外しているわけではないんですよ。持ち替えているだけで」


「装備を外していない……? もしかして、ダメージ増加系のウェポンスキルを別の武器で使えるってこと?」


「正解です。私もそれができればデストロイのダメージが上がって誰でも確殺できるようになるんですけどね」


 ハヤトが呆れた顔でモニターを見るとセシルは両手剣のウェポンスキル「ハードヒット」を使用した。これもダメージ増加系のスキルで、次の攻撃のダメージを二倍にして、さらにノックバックを発生させる技だ。


 さらにセシルは背中にある別の両手剣に持ち替える。


 その剣は魔剣サンセット。エクスカリバーやアロンダイトと同じように、ユニークなウェポンスキルが使える剣。


 セシルはその剣のウェポンスキル「黄昏」を使う。次の攻撃ダメージを四倍にする攻撃だ。


 ハヤトはそれをエシャに聞いて少し不安になる。


「あのさ、通常ではあり得ないダメージ増加の重ね掛けなんだけど、重ね掛けって加算? それとも乗算?」


「セシルが言うには乗算らしいですよ」


「2×2×4ってこと? なら次の攻撃は16倍のダメージか。他のプレイヤーから怒られると思うけど?」


 他のプレイヤーにできないことをしているのなら、それは明らかにプレイヤーから文句を言われる案件だ。


 エシャのベルゼーブのような魔法銃やデストロイも同じではあるが、クラン戦争のときとは事情が違う。


 クラン戦争のときは対戦相手にしか分からない。なので動画でピックアップされなければ他のプレイヤーが知る機会は少ないだろう。だが、今回はその場にいるプレイヤー全員が見ることになる。


 エシャは他の誰にも聞かれないように小さな声で答える。


「いままでも帝都のスタンピードであれをやってたみたいですけど、NPCだから許されているって感じですね。それに先行実装だと思われているようです。ディーテがそんなことを言ってました」


「そのうちにアップデートで皆もできるようになると思われているのか。実際、できるのかな?」


「さあ、それは分かりませんね。それはあとでディーテに聞いてください――どうやら、セシルが攻撃するみたいですよ」


 ハヤトはモニターへ視線を戻す。


「吹っ飛べ、オラァ!」


 そんな掛け声とともに、セシルは剣で炎龍に斬りかかった。斬るというよりも横から叩きつけるというイメージだ。


 その攻撃が当たると、炎龍のHPが大きく削られた上に、ドラゴンの巨体がかなり吹き飛ばされる。


 帝都の中央広場付近にある建物に激しくぶつかるが、施設ではないようなので破壊対象ではないようだ。


 それと同時にプレイヤー達から歓声があがった。


 炎龍のHPは残り三分の一程度。プレイヤー達はこぞって攻撃を開始した。


「またお前か! なら、そろそろ本気をださねぇとな!」


 炎龍がそんなことを言い出した。


 直後に炎龍が炎に包まれる。物質的な肉体がなくなり、体が炎そのものになった。そして周囲のキャラクターに継続的なダメージを与えるようになる。


 ハヤトは高温で周囲のキャラにダメージを与えていると判断した。


(本気を出すと継続的にダメージを与えるようになるのか。というか、あの状態のドラゴンに物理攻撃が効くのか?)


 炎龍は体がなくなり、ドラゴンの形をした炎そのものになっている。ハヤトが見た限り、物理攻撃が効くようには思えない。


 ハヤトの推測は当たっていたようで、一部のプレイヤー達は戦いを放棄して逃げ出した。残ったキャラは魔法や属性攻撃などができる者達だけだ。


 魔法や属性攻撃だけではそれほどダメージを与えることができずに時間切れとなった。防衛に失敗したという形にはなるが、すべての施設が壊れたわけではないので、秘宝のかけらは奪われていない。


 また、防衛に失敗したとしても貢献ポイントは貰えるのでプレイヤー達は特に悲観することもなく「おつかれー」と軽く言いながら解散していった。


(ドラゴンの形態が変わるとアッシュ達はあまり活躍できないんだな。ダメージを与えられるのはレンちゃんの呪詛魔法くらいか。そのあたりの対策が必要だな)


 ハヤトはモニターを見ながらそんなことを考えていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] そろそろ喫茶店パートに入りそう [気になる点] サンセット…… 対となる武器が有りそうな名前 [一言] アッシュとネイへ。 コレクターさんを振り切って帰るまでがスタンピードです
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