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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第三章

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戦いの終わり

 

(エシャは何をしているんだ?)


 ハヤトはエシャの行動に頭を捻った。


「さて、一旦引かせてもらうよ。今のままじゃ勝てそうにもないからね。でも、念のために一人くらい倒しておこうか」


 蛮族の言葉にハヤトは身構える。ミストも同じように思ったのか、ハヤトを庇うように移動した。


 だが、それは違ったようで、蛮族はすぐにフィールドへ顔を向けるとエシャの方へ視線を動かした。


(縮地で逃げるつもりか! いや、エシャはこのために……!)


 今、フィールド上にはエシャしかいない。だが、あれから十五分は経っている。それに大量のメロンジュースを飲んでいたのなら間違いないとハヤトは確信した。


「エシャ! 行ったぞ!」


 ハヤトは音声チャットでエシャに伝える。


「デストロイ」


 エシャは誰もいない方向に向かってデストロイを放つ。銃口から大小十個の魔法陣が並んだ。その先には何もないが、それは問題ない。


 直後にエシャの目の前には蛮族の男が現れる。ちょうど銃口の先だ。


 それに気づいた蛮族の男は顔を歪ませた。


 ベルゼーブから大砲のような音と共に放たれた光の弾が蛮族ごと大小十個の魔法陣を破壊しながら吹き飛ばした。同時にエシャもその威力で地面をすべるように後退する。


「ご主人様なら気付いてくれると思いましたよ」


「まあ、たまたまね」


 縮地はターゲットの目の前に移動する技だ。そしてターゲットはフィールド上にいる相手になる。現在、フィールド上にはエシャしかおらず、蛮族の男がエシャの前に移動してくることは予想できた。なのでエシャはデストロイの準備をして待っていたのだ。


「それにミスト様もお疲れ様です。あの蛮族をちゃんと追い返せると信じておりました」


「過分なお言葉ですね。まあ、これはハヤトさんの用意したドラゴンブラッドのおかげで――」


 ミストがそこまで言ったところで、相手の砦内で大きな爆発音があった。


「ハヤト! すまん! 拠点内で自爆をされた! レリックとレン、それにディーテもやられた! 残ったのは俺とルナリアだけだ!」


「大丈夫なのか!?」


「生きてはいるが、相手はまだ二人いる! クランストーンの破壊はもう少しかかるから気を付けてくれ!」


「ああ、それなら大丈夫、相手のリーダーは――」


 エシャが倒した、そう言おうとした瞬間、蛮族の男がエシャの目の前で斧を振りかぶっていた。


「え……?」


 デストロイは人型のキャラクター相手なら確殺だ。だが、ハヤトの目には斧を振りかぶった蛮族の男が見える。


 エシャは後方へ逃げるように地面を蹴る。そして後転をしてから片膝をついて銃を構えた。だが、引き金を引いても弾は出ない。


(デストロイを使った直後だからMPがないんだ……!)


 ハヤトの推測は正しい。エシャのMPはほぼ0なのだ。スイーツ系の料理を食べているため徐々にMPは回復しているが、まだ攻撃ができる状態ではない。


 それを知っているのか、蛮族の男は一気にエシャへ近づいた。そしてまた斧を振りかぶる。


 ハヤトはまずいと思ったが、斧が振り下ろされることはなかった。振り下ろされる前に相手の砦からルナリアが出てきたのだ。


 それだけなら蛮族の男も攻撃を止めることはなかっただろうが、止めたのには理由がある。


 ルナリアが持つアロンダイトの刀身が異常に大きいのだ。よく見ると刀身が大きくなっているのではなく、刀身に黒いオーラがまとわりついて巨大に見せていた。また、アロンダイトの柄に埋め込まれた宝石がこれまで以上に輝いているのだ。


 蛮族の男はエシャに攻撃はせず、素早く距離を取った。なんらかの異常を感じ取っての行動だろう。だが、それは意味のない行動だった。


 ルナリアが縮地のように蛮族の目の前に移動したのだ。


 そしてルナリアはアロンダイトで蛮族の男を一閃。蛮族の男は武器で攻撃を受ける間もなく倒れた。


 ハヤトは蛮族が光の粒子になると思ったが、なぜか倒れた蛮族の男に上空から光が差した。そして羽が落ちてくる。


(不死鳥の羽? エシャのデストロイを受けて無事だったのはそれか……)


 勇者イヴァンも持っていた不死鳥の羽。その場で自動的に復活ができるアイテムだ。


 クラン戦争で神聖魔法の蘇生は使えない。やられた時点で光の粒子となって消えてしまうため、蘇生の対象に選べないのだ。


 状況を見る限り、不死鳥の羽は問題ないようで、クラン戦争でも復活ができるアイテムのようだった。


(吸血鬼のミストさんが復活できるんだから、他にも手段があったんだろうな。くそ、気づかなかった。でも――)


 どれほどアイテムを持っているのかは分からないが、復活できたとしても今のルナリアに勝てるのだろうか、とハヤトは思った。


 普段からは想像できないほど、ルナリアが魔王らしいのだ。


「ルナリア様のアロンダイト、封印が完全に解かれているみたいですね」


「ミストさんはあの状態のアロンダイトを知っているんですか?」


「ええ、まあ。見たのは初めてですが、あれはアロンダイトの真の姿と言えばいいですかね。相手の自爆により、マリスさんとランスロットさんを含めて五人も倒されました。そのすべてがアロンダイトに力を与えているんですよ。威力は倍近いでしょうね」


「味方で良かったと思いましたよ」


「そうですね。もし敵対したら、まずはルナリア様を倒すのがいいですよ」


「そこは敵対しない方向で考えたいですね」


(あれが魔王か。変身するんじゃなくて剣が強くなるんだな。それはともかく、あの蛮族さん、復活しても復活してもルナリアに倒されてるぞ)


 不死鳥の羽は自動で使用するため、プレイヤーは強制的に復活する。普通ならそれでもいいのだろうが、今は絶対に勝てない相手を目の前にしているので、無駄にアイテムを消費していると言ってもいい。


「皆の仇……!」


 ハヤトは相手に同情する。そしてアッシュに早くクランストーンを破壊してあげてくれと心の中で思った。


 祈りが通じたのか、相手の砦でクランストーンが破壊された。そして紙吹雪が舞い、花火が上がる。


「よし!」


 ハヤトはそれを見て右手をしっかり握り込みガッツポーズをする。


 勝ったこと自体も嬉しいが、これなら次のクラン戦争に負けても五位以内に残れる可能性が高い。五位以内ならアニバーサリーの賞金が手に入る。夢を叶えることができるのだ。


(皆には感謝してもしきれない。ちゃんとお礼をしないとな)


 ハヤトはそう考えながら、夜空に浮かぶ花火を眺めていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王からは逃げられない((((;゜Д゜)))))))
[一言] ま お う か ら は に げ ら れ な い。
[良い点] 蛮族さんお疲れ様でした! [気になる点] もし蛮族さんが《悪魔召喚研究会》ん家の公爵さんと戦ったらどうなるんだろう? とか考えてしまいますね。 [一言] 不死鳥をテイムすればむしり放題…
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