第二十六話 第三試合 聖騎士王 V S 魔導王
【ダルシアン闘技場】での第三試合の出場選手として現れたのは、我らが【えとらんぜ】のアルフレド団長だった。
アルフレド団長は、私たちと話している時と同様に、楽し気な笑みを浮かばながら、闘技場の中央まで移動してくる。
観客たちは、予想だにしなかった選手に出現に、狂乱の如く騒ぎ立てている。
「ま、まさか【えとらんぜ】の団長が出場するとは!?」
「俺、あの人が戦うところ初めて見るぜ!」
「噂では【ダルシアン王国】最強だっていうじゃねえか!」
騒ぎの中、私の頭は混乱の真っ只中だった。
「な、なななな!何ですかあれは!?何でアルフレド団長があんなところに!?」
目の前の光景が全く理解できずに激しく混乱してしまっている。
隣を見ると、歩美がこれでもかというほどに目と口を見開き固まっていた。
うん、同じくらい混乱してるね。
「ごめんなさいね、団長がどうしても二人には秘密にしておきたいって言うものだから、大事な試合前に余計な心配を掛けたくないっていう団長なりの気遣いよ」
「い、いやぁ、それにしても驚かせすぎでしょう、心臓が止まるかと思いましたよ!」
「まあ、団長なりのサプライズってことで」
サプライズが過ぎるよ!
いやいや、余計な心配を掛けたくないっていう心遣いは有難いけど、さすがに言って欲しかったわ!
「でもなぁ、団長の戦いぶりが見られるなんて滅多にないぜ、驚いているのはわかるが、試合が見れてラッキーくらいに思った方がいいな」
カグヤさんの言葉を聞いて、それはそうかと思ってしまった。
確かに、アルフレド団長がどれだけ強いか、どんな戦い方をするのかは、少し……いやかなり興味がある。
まだ驚きのあまり心臓はバクバクいっているが、試合は集中して見よう。
◆◆◆◆
試合会場のアルフレドは、じっと相手を見据えていた。
(あの女の子は、都ちゃんや歩美ちゃんと同じ、召喚者か……なるほど、強大な魔力を感じるね)
相手から溢れ出てきている恐ろしいほどの量の魔力を感じ取り、否が応でも警戒心が高まる。
他に何か、注意すべきところがあるのか否か、相手を観察していると――
「何じろじろ見てるの?さっきから感じ悪いんだけど?」
突然、悪態をつきだした相手、【如月 刹那】の言葉に、アルフレドは目を見開いたが、直ぐに笑みを浮かべ余裕を取り戻す。
「いや、あなたの魔力量が多すぎて少し驚いてしまいましてね、お気を悪くされたのなら申し訳ありません」
歯が浮くような世辞を並べるアルフレドを一瞥すると、大きくため息をつきながら更に悪態をついてくる。
「はん!適当なことを言うのね、まあ試合が始まった瞬間消し炭にしてやるから、覚悟しときなさい」
「あはは、まあお手柔らかにお願いしますね」
刹那の慇懃無礼な言葉にも笑みを絶やさず余裕の対応をするアルフレド。
その姿に更に苛立ちを覚えながら、明確に殺意を出してくる刹那。
いよいよ二人が激突する時が迫っていた……
『それではこれより第三試合を開始いたします!!!』
いよいよ、試合開始のアナウンスが始まった。
アルフレドは、右手に槍を左手に大盾を構える。
対して刹那は、全身に魔力を漲らせながら、手に持っている杖に魔力を集中している。
一瞬で爆発的な魔力を練り上げ、周囲に有り得ないほどの魔力が漂い始める。
間違いなく、試合開始直後に、強大な魔法攻撃を放ってくるだろう。
見え見えの気配を察知しながらも、アルフレドの顔には不敵な笑みが溢れていた。
『第三試合ぃい!!!開始ぃいいい!!!!』
そうこうしている内に、第三試合開始の合図がなされた――
「【紅蓮煉獄陣】!!!」
試合開始の直後に刹那が極大魔法を放ち、試合会場全てが巻き込まれる規模の炎の渦に包まれた。
「まだまだぁ!【轟雷羅刹風】!!!」
更には、大規模な雷を纏った竜巻を発生させる。
先程の【紅蓮煉獄陣】と合わさって、炎、雷、竜巻と大災害さながらの光景が闘技場の中に繰り広げられた。
結界で保護されているため、観客席に被害が及ぶことはないが、あまりの閃光と轟音に、観客たちは一様に悲鳴をあげたり身をすくめたりしている。
「な、なんだありゃぁ……」
「ば、化け物だぁ……あんな魔法ありかよ……」
「絶対死んだだろう……」
超級職の戦いとなると、一般人はほとんどお目にかかれることはない、普段【ダルシアン闘技場】で開催される試合でも、ほとんど下級職か上級職の出場者がほとんどだ。
そのため、超級職が全力で放った魔法の威力に度肝を抜かれ、これだけの規模の魔法をまともに喰らってしまっては助かるわけがないと、大多数の観客たちは絶望した。
「……ふん、あっけなかったわねぇ……」
刹那は気だるげにつぶやきながら、自らが極大魔法を放った爆心地を見つめていると……
雷と竜巻が消え、炎に閉ざされていた爆心地が見えてくる。
その中央に立つのは、光の障壁に守られたアルフレドだった。
「ま、まさか!?無傷だなんて!?」
刹那が驚愕の声を上げた。
アルフレドは、変わらず笑みを浮かべながら直立しており、微動だにしていなかった。
「すごい……あれが、団長の【特性:うま】のスキルなんですか!?」
「いいえ、あれは団長のジョブ、超級職【聖騎士王】の能力よ、強力な障壁を張り、全ての攻撃を遮断することができるの」
超級職【聖騎士王】。
下級職【騎士】、上級職【聖騎士】から派生した、騎士系統の頂点に位置し、防御力に特化した超級職である。
「へえ、とてつもない威力だね、僕も少しどきっとしたよ」
「……ふん、今度は本気でいくから覚悟するのね」
刹那は再び杖を両手で持ち、魔力を集中し始める。
ドス黒い瘴気のような魔力が発生し、刹那の周囲に渦巻き始める。
両目を閉じて念じる様に集中していたが、次の瞬間、カッと目を見開き、魔力を解放する。
「【邪影螺旋流】!!!」
ドス黒い魔力は、二重の奔流となり、螺旋を描くように交わりながらアルフレドへ迫る。
「【聖光】」
アルフレドが右手の槍を掲げると、神々しい光が周囲を照らし出す。
そして、光を帯びたままの槍を振り上げると、目前まで迫る螺旋流に向かって振り下ろすと、ドス黒い魔力は、光の槍の一撃にかき消され、瞬時に消滅してしまった。
「……な?」
一度ならず二度までも、全力で放った極大魔法を防がれてしまい、呆気にとられる刹那。
アルフレドは、再び槍を天に掲げると再び眩い光が輝き出す。
「さてと、次はこちらから攻撃させてもらうよ」
そう言いながら、不敵な笑みを浮かべた。
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