第二十四話 激戦を終えて
第二試合が【えとらんぜ】代表の都と歩美の勝利で幕を閉じた直後、【ダルシアン闘技場】の一室での出来事。
ここは【マゼンティア公国】側に用意されたVIP用の控室だ。
「な、なぜじゃ!?まさかあのザンジバルが負けるとは!?」
「しかも、あんな小娘共にしてやられるとは、何たる失態じゃ!」
【マゼンティア公国】からゲストとして招かれた賢者たちが狼狽している。
年老いた老人の賢者二人が立ち上がって喚き散らしており、その中央でリーダー各の男性が腕を組んで目を瞑っている。
「これで【ダルシアン王国】なんぞに二連敗じゃ!」
「これは何たる恥ずべきことか!このままおめおめと本国へ帰れぬぞ!」
口から唾を吐き散らしながら叫び続ける賢者二人、やがて中央の男性が口を開いた。
「まあまあ、ノーマ卿にゼブル卿、一度落ち着いてはどうか?」
「はあ……はあ……しかしマグナス卿、これではいい笑いものですぞ。何とか汚名を注がねば」
マグナス卿と呼ばれた、リーダー格の男は、眉間にしわを寄せ険しい表情のまま、ノーマ卿とゼブル卿と呼ばれた二人の年老いた賢者たちを見据えた。
今、マグナス卿の問いかけに答えたのは、少し小太り気味のノーマ卿の方だ。
「一つ、質問があります。あの【ブラックアックス】の二人を打倒した、若い女性の二人組、確か【えとらんぜ】とかいうクランの代表でしたかな?」
「……ん?ああ、確かそうじゃが、それがどうされましたかな?」
丁寧な口調だが、やや威圧的に放たれたその質問に、もう一人老人の賢者が訝しげに答える。
こちらは、瘦せ型で長身のゼブル卿と言われた方の賢者だ。
「いや、確か少し前に我が国で異世界から冒険者を召喚した時に、追放者を二名出しておりましたな?確か子供のような若い女性が二人で、確かスキルが【特性:ねずみ】と【特性:うし】と記録されていたと思いますが……」
「確かに、少し前に使い物にならない二人組を召喚してしまったことはあったな、野蛮な獣の特性スキルを備えておったので、わしらの魔法で奈落の底へ追放してやったわい、一体それがどうし……ま、まさか!?」
ここまで言われて初めて気づいたのか、ノーマ卿とゼブル卿は激しく動揺し始めた。
「そんな!?あの小娘共が、あの時召喚した奴らとでも言うのか!?」
「あ、ありえん!わしらは奈落の底へ確かに追放したぞ!?何故生きてここにおるのだ!?」
マグナス卿は、険しい表情を崩さないまま話し続ける。
さっきから動揺し、声を張り上げっぱなしのノーマ卿とゼブル卿とは対照的で冷静で落ち着いた低い声色だ。
「……それは私にもわかりませんな。だが、あなた方が召喚した二人が恐ろしい力を発揮しているのは確かだ。何故、そんな力を持つ者たちを召喚しておきながら、手元に置かなかったのですか?」
「そ、それは……獣の特性スキルを持っておったので、何の役にも立たんと思ったんじゃ!」
「確かに、我が国では獣の特性スキルは野蛮で役に立たないで通っておりますので手元に置かなかったのは仕方ないかもしれない、それでは、奈落の底送りなどと生温いことはせずにその場で殺しておくべきでしたね。そうすれば、今回このような形で足元をすくわれることもなかったでしょうに……」
「くっ!だが、あの時はあんな小娘共が奈落の底から生還するとは夢にも思わなかったんじゃ!」
マグナス卿に淡々と指摘され、二人の賢者は、先程から冷や汗をかきながら、弁明を続けているが、よっぽど恐ろしいのか、二人とも小刻みに震えている。
「まあ、お二人の責任に関しては、第三試合が終わるまで保留としましょうか。次の試合の結果によっては覚悟して頂きますので」
「そ、そんな!?……まあ、次の代表ならば、負けることはないじゃろう!良かろうマグナス卿、第三試合を楽しみにして下され!」
「そ、そうじゃ!何せ次の試合の戦士は……」
思いがけず自分たちの処分が掛かってしまったこの試合、負けることは許されないが、次の試合の代表によほどの自信があるのだろう。
ノーマ卿とゼブル卿は額の汗を拭いながら、ニヤリと醜悪な笑みを浮かべた。
◆◆◆◆
舞台は変わって、【ダルシアン王国】側の控室、激戦を終えた私たち、【えとらんぜ】のメンバーの祝福を受けていた。
「本当に立派だったわよ、相手はAランククランの団長よ、正に大金星ね」
「やったじゃねぇか!さすがあたしたち【えとらんぜ】の一員だぜ!」
「お二人ともすごかったです!最後の相手を倒したところなんて涙が出てきましたよ!」
アデリナさんとカグヤさん、そして大河くんが満面の笑みで賛辞の言葉を投げかけてくる。
何だったらこのまま胴上げされかねない勢いだ。
三人に盛大に祝ってもらいながら、自らが成し遂げたことへの達成感に酔いしれていると、控室のドアがガチャリと開いて、アルフレド団長が入ってきた。
「やあ、二人とも、本当によく頑張った。感動したよ。二人が頑張っている姿を見てると僕もやる気が出てきたな、いや本当に本気で頑張れそうだ」
アルフレド団長が例にもれず、満足気な笑みを浮かべながら、こちらを褒めちぎってくる。
団長のやる気を出すことができたのは良かった。
本当に本気で頑張ってくれるらしい……ん?何を?
「ところで、君たちの勝利を見てどうしても話したいって人がきてるんだけど、紹介しても良いかい?」
「え?別に大丈夫ですけど、どなたなんですか?」
「ええと、会えばわかるよ、なんでも君たちの戦いぶりに感動してどうしても話してみたいらしくてね、じゃあちょっと呼んでくるよ!」
そう言い残してアルフレド団長は控室から一度退出し、すぐさま戻ってきた。
どうやら、紹介したい人とやらを呼びに行っていたらしい。
一体どんな人なんだろう?
正直さっきの試合で少し疲れてしまったので、あまり気を遣うような人は遠慮したいんだけどなぁ。
「お待たせ、紹介したい人を連れてきたよ!」
そういってアルフレド団長に続いてそれは綺麗でおしとやかな女性の人が入ってきた。
高貴といった言葉がぴったりかもしれない。
「え!?」
「な!?」
「は!?」
途端に他の三人が驚きながら変な声をあげた。
どうやらこの女性に心当たりがあるらしい。
「紹介するよ、こちらはセフィーネ様、【ダルシアン王国】の王女様だよ」
……なんですと?
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