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第二十話 いよいよ決戦!

 「さて、トイレも行ったし、装備も完璧、コンディションも良好、後は……大斧ゴリラをぶちのめすのみだね」


 先程の第一試合を見て、あまりのレベルの高さに一瞬気圧されたものの、今はやるしかないと腹を括っている。

 私たちを一方的に召喚しておいて、ゴミのように奈落の底へ追放しやがった【マゼンティア公国】の賢者どもに一泡吹かせられるかと思うと、むしろやる気しか出てこない。


 「都ちゃん、頑張ろうね」


 同じく準備万端の歩美が話しかけてくる。

 大丈夫だよ相棒、私は今、この異世界にきてから、かつてないほどのやる気に満ちているのさ。


 「さて、都ちゃん、歩美ちゃん、準備はいいかしら?」

 「はい!!!」


 アデリナさんが頃合いを見て声掛けをしてくれた。

 二人で元気に返事をした直後に、控室のドアが開き、アルフレド団長が現れた。


 「そろそろ時間だと思ってね、間に合って良かったよ」


 アルフレド団長がにっこりと微笑みながらそう言うと……


 「よっしゃぁ!出陣前に円陣組むぞぉ!!!」


 カグヤさんが力強く宣言し、【えとらんぜ】の六人で肩を組み合い、円陣を形成した。

 私と歩美は元の世界では帰宅部だったため、経験がないが、運動部の人たちが大事な大会などで気合を入れるためにやるあれだ。


 「よーし、それじゃあまずあたしから一言!二人はこの一週間、文句も言わずによく頑張ったぁ!その努力は嘘をつかねぇ!だから自分を信じて思いっ切り戦ってこい!!!」

 「「はい!!!」」


 カグヤさんの力強い激励に思わず二人揃って返事をしてしまう。

 何だろう?すごい安心感を感じると共に、この一週間の地獄の特訓を褒められて涙が出そうになった。


 「じゃあ、次は私ね、二人とも私たちの無茶ぶりにも負けずによく頑張ったわね、二人の成長には目を見張るものがあるわ、今日はその成果を思う存分発揮してちょうだい。終わったらまたみんなで【星降り亭】で美味しいものでも食べましょう」


 アデリナさんにもこの一週間の特訓の頑張りを褒められた。

 その言葉を聞いて胸の奥がかーっと熱くなるのを感じる。

 歩美の方を見ると、同じように目を潤ませて聞いていた。

 私と同じことを考えているのだろう。


 「それでは、次は僕ですね。お二人が【えとらんぜ】に入ってきてから僕は毎日が楽しいです。異世界から召喚されてから少し寂しい思いもしたけれど、お二人のおかげで、異世界召喚されたのも悪くはないかな?って思えるようになりました。だから感謝で一杯です。今日は、感謝をこめて応援しますので、頑張ってください!!!」


 大河くんの想いを聞いてもはや涙を堪え切れなくなってしまった。

 歩美はとっくに号泣している。

 まさか大河くんに感謝されるとは……

 こちらこそありがとね、大河くんには毎日元気をもらってばかりだよ。


 「よし、最後は僕かな?まあ他の三人が言いたいことは全部言ってくれたかな。二人ともほどよく緊張しながら吹っ切れた良い顔をしているね、大丈夫、君たちなら問題無く勝てるさ。二人が【えとらんぜ】に加入してくれて本当に良かった。悔いの残らないように全力で頑張ろう!!!」

 「「はい!わかりました!!!」」


 アルフレド団長の激励に、二人揃って返事をする。

 何だろう?この人に激励されると何とも言えない安心感が湧いてくる。

 正直、これだけレベルを上げて準備を重ねても、不安は残っている。

 その不安感をいい感じで払拭し、モチベーションに変えてくれている。

 かく言うリーダーとはこうあるべきだという姿を体現しているのがアルフレド団長といえるだろう。


 「よっしゃぁ!!!【えとらんぜ】!!!いざ出陣だぁぁぁ!!!」

 「オオオオオオオ!!!!!!」


 最後に全員で声を出して円陣を解いた。

 いや、本当に気が引き締まった。

 皆の想いを受けて負けるわけにはいかないって、心の底から思えた。

 歩美と向き合い、気合を入れるかのように二人で頷き合う。


 そして意を決したかのように闘技場へ向けて力強く歩き出した。


 

◆◆◆◆



 『大変長らくお待たせしましたぁ!!!これから第二試合を開始しまぁぁす!!!』


 会場にアナウンスが流れると観客たちから堰を切ったように大歓声が起こり始める。



『それでは選手入場です!!!赤の門から入場してくるのはぁぁ!!!【マゼンティア公国】代表!!!Aランククラン【ブラックアックス】所属ぅ!!!【黒斧】のザンジバルとぉぉ!!!【双斧】のゴードンだぁぁぁ!!!』

 

 アナウンスに紹介された後、入場門から二人が現れると、これまた大歓声が巻き起こる。

 第一試合の時に負けないほどのボルテージの高さに会場の熱気は再度、高まり続ける。


 「ザンジバルゥゥ!!!さっさとやっちまええ!!!頼むぞぉぉぉ!!!」


 【マゼンティア公国】からきたファンだろうか、過激な声援が聞こえてくる。


 「……ちっ、言われなくともわかってんだよぉ!」


 ザンジバルは舌打ちをしながら背中にかついでいた大斧を振りかざし、そのまま地面にズンッ!!!と突き刺す。

 

 「さあ、殺戮の時間だぜぇ!!!」


 獰猛な笑みを浮かべながら、本日の獲物の登場を待った。


『続きましてぇぇ!!!青の門から入場してくるのはぁぁ!!!【ダルシアン王国】代表!!!Sランククラン【えとらんぜ】所属ぅ!!!みやこと、あゆみだぁぁぁ!!!』


 アナウンスに続いて、入場門から二人が現れる。

 当然、大歓声が起こるが、門から現れた二人の姿に疑問を持つものも多く、若干のざわつきが混じっている。


 「な、なんだ?黒装束に全身ピンクの鎧だぁ!?ふざけてんのか!?」

 「あらやだ、可愛いわねぇ」

 「あんな姿で戦えるのか?っていうか全然強そうに見えねえぞ!」


 観客たちが次々と疑問を口に出し、必然的に会場全体がざわざわと不穏な歓声を上げ始める。


 いつもなら、その様子に不安を覚える二人だが、今日の彼女たちは違う。


 「ふふん、何かいろいろと聞こえるけど、全く気にならないわね、さっさと大斧ゴリラとそのお供を倒しちゃおうじゃないの」

 「そうだねー、さっさと倒して【星降り亭】でお腹いっぱい食べようねー」


 歩美が、のんきに試合後のご飯のことを考えながら、背中にかついでいた【闘斧:桃獄】を振りかざし、そのままズンッと地面に突き刺す。

 先程、ザンジバルがしたのと全く行動だ。


 「さて、手筈通りやるよ、油断しないでよ歩美」

 「うん、わかったよ都ちゃん、頑張ろうね」


 二人は言葉を交わし合い、相対する二人組に意識を集中した。

 いよいよ、決選の火蓋が切って落とされるのであった。

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