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第十四話 新たなチートスキル

 ギガントトロールの動きに合わせて、私と歩美、大河くんも動き出す。


 相手はAランクモンスター、こちらは大河くん以外は異世界にきたばかりの初心者も初心者、スキルこそチートではあるが、一撃でもまともに喰らえばその時点であの世行きなのは間違いないだろう。


 ギガントトロールは、右手の棍棒をこちらに向けて威嚇している。

 まるで、自分の獲物はこいつらか?と品定めをしているかのようだ。

 大河くんが、一歩前に踏み出し、私たちを守るかのように立ち塞がる。


 「都さんと歩美さんは、スキルによるフォローをお願いします、基本的には僕が真正面で立ち回りますから」


 あら、やだ、かっこいいじゃん。

 一番ステータスが高いとはいえ、一人であの巨大なギガントトロールに立ち向かうなんて、並大抵の勇気じゃないだろう。


 後ろでは、引き続きアデリナさんとカグヤさんがレッドトロールたちを殲滅している。

 こちらは、戦力差が歴然としているため、早々に決着が着きそうだ。


 ――瞬間、ギガントトロールが弾けるように動き出す。

 他のレッドトロールたちとは一線を画すような素早い動きで私たちの方へ突っ込んでくる。

 私がどう立ち回ろうかと考え始めた瞬間に、大河くんがこれまた目にも止まらぬ素早さで飛び出した。


 「【虎脚(タイガーブレイク)】!!!」


 今度は両足に闘気のようなエフェクトをまとい、ギガントトロールの顎のあたりに鋭い蹴りを見舞った。

 

 「ガアアアア!?」


 思いもよらぬカウンターを喰らいよろめくギガントトロール、顎のあたりを押さえながら目を見開いている。

 

 「今回はさすがに本気でいきますよ……【虎杖(タイガーロッド)】」


 大河くんがスキルを使用すると、身長と同じくらいのサイズの棍が出現した。

 ギガントトロールたちが持っているような無骨な感じのじゃなくて、中国武術とかで使われるような長い棒状のやつだ。

 真ん中あたりを持ち、頭上でぶんぶん回転させている。

 中〇雑技団みたいだ。


 ギガントトロールは目に見えて怒りに満ちた表情を浮かべながら、棍棒を振り上げ、全力で大河くんに向けて叩きつけた。

 大河くんはさすがに避けた……と思わせて棍棒で受け止める……嘘ですやん。


 体長5メートルを越えようかという巨人の棍棒の一撃を身長150センチほどの少年が受け止めてしまうという事実。

 あまりの威力に、大河くんの足元にがめり込みクレーターのようになっているが、大河くん自体はダメージを受けていないようだった。


 「スキあり!とりゃああああ!!!」


 素早く身を翻しながら、ギガントトロールの頭上にジャンプし、脳天に棍棒で一撃を加える。


 「だりゃりゃりゃりゃぁ!!!」


 直後、その身を回転させながら棍棒による連撃を加える。

 スパパパパパァンと小気味よい音を放ちながら見事な連続攻撃を繰り出している。


 たまらず身をよじりながら後退するギガントトロール。


 「都ちゃん、チャンスだよ!私たちもスキルで援護しよう!」

 「うん、そうだね!」


 思わぬ大河くんの奮闘ぶりについ見とれてしまったが、私たちもいい加減戦列に加わらなければいけない。

 とはいえ、考えなしに突っ込んでいっても邪魔になるだけだろう。

 歩美には【牛歩戦術ディレイゾーン】なんていう万能チートサポートスキルがあるが、私にあるのは、少しクセのあるスキルばかりだ。

 

 だとしたらどうするか……

 例えば【泰山鳴動して鼠一匹(アブソリュートガード)】はまだ三回使用可能のため、このまま突っ込んで行ってもある程度は時間を稼げる、その間に【鼠算(インフィニットゲージ)】で倒してしまうという作戦はどうだろうか。


 いやだめだ。

 ギガントトロールとのステータス差を考えたらリスクが高すぎる。

 【鼠算(インフィニットゲージ)】で倒しきれるまでに三回以上攻撃されて死んでしまうのがオチだ。

 

 やっぱり私には無理なのか……

 いや待てよ?一度だけ使用を検討するだけしたスキルがあった。

 あのスキルが私の考え通りに使えるものならば……


 「よし!歩美!私たちもいこう!」

 「うん!よーし!【牛の角を蜂が刺す(プロテクトゾーン)】」


 【牛の角を蜂が刺す(プロテクトゾーン)】 : 【特性:うし】を持つものが習得できるスキル、使用者の周囲の味方の受けるダメージを十分の一にする。


 歩美を中心に直径十メートルほどの光のドームのようなものが出現する。

 このドームの中であれば敵から受けるダメージが十分の一になるということか。


 これまた、もの凄いチートスキルをお持ちで……

 いやでも、これなら私のスキルが心置きなく使える、ナイスだ歩美!


 「ありがとう歩美!よーし!【鼠算(インフィニットゲージ)】」


 私の体が黄色い闘気のようなエフェクトに包まれる。

 その状態のままさらにスキルを使用する。


 「次は……【針鼠(ヘッジホッグ)】!」


 両手に四本ずつの針が出現する。

 最初に使ったときは、両手に一本ずつだったから成長しているようだ。

 私がこれから使おうと思っているスキルは【針鼠(ヘッジホッグ)】を使用している間のみ、発動可能なものだ。

 スキル発動の条件を満たした私は、ギガントトロールへ向けて走り出す。


 ギガントトロールは大河くんと激闘を繰り広げている。 

 お互いの棍棒が何度もぶつかり合い、火花を散らしており、横から見ている限りはほぼ互角の戦いに見えた。

 現に、両者ともに相手との戦いに全神経を集中している。



 ……だからこそ、ギガントトロールの意識が完全に大河くんに向いている今こそ、攻撃の最大のチャンスといえるだろう。

 いつの間にか自分の目の前まで迫ってきていた私にギガントトロールがギョッと驚く。

 そのまま、棍棒を私の方へ横薙ぎにてスイングしてきた。


 私は、覚悟を決めて棍棒の一撃を受け止める……が全くダメージは受けなかった。

 ウインドウが出現して【泰山鳴動して鼠一匹(アブソリュートガード)】が発動を告げる。

 歩美の【牛の角を蜂が刺す(プロテクトゾーン)】の影響でダメージを十分の一にしたのに、その上で一撃で私のHPを削り切るような一撃だったらしい。


 私は一撃の威力にゾッとしながらも、棍棒を振り切った直後に一瞬の硬直が発生したのを見逃さなかった。

 すかさず、ギガントトロールのふところに潜り込み、スキルを使用する。


 「【鼠花火(コンボスター)】!!!」


 私はスキルの使用を宣言すると同時に、体を丸め激しく回転を始める。

 そして回転したまま、ギガントトロールの胸元に突っ込んでいった。


 胸元に突っ込んだ私の体は激しく回転しながら攻撃を加える。

 回転している影響で【針鼠(ヘッジホッグ)】によって出現した針が何度も何度もギガントトロールへ傷をつけていく。

 最初は軽微だったダメージだったが、【鼠算(インフィニットゲージ)】によって、みるみる倍々に増えていくことになる。


 ギガントトロールへのダメージは、1から2から4から8から16へと、雪だるま式に膨らんでいった。

 ひたすら回転しながらダメージを与え続け、6000を越えるダメージを与えたころには、ギガントトールは膝から崩れ落ち動かなくなってしまった……


 「いや……これはいくらなんでもチートすぎるでしょ……」


 大河くんが見たこともない様な苦笑いを浮かべている。

 あちゃー、またやりすぎてしまったか……

 私の相変わらずの暴れっぷりで大河くんの私への接し方が変わらないように祈るのみだ。


 【ギガントトロール】【レッドトロール】討伐報酬


  大巨人の牙、大巨人の角、大巨人の宝珠を入手しました。


  経験値33000を入手、レベルがアップしました。  【Lv12→25】 




 おお、一気に倍以上レベルが上がっちまった。

 これは、最初に倒したレッドトロールの分も含めて入手できたということなのか。



 何にせよ、図らずも初めてのAランクモンスターとの遭遇は、私と歩美のニューチートスキルが炸裂し、予想よりも簡単にクリアできてしまった。

 

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