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第十二話 新たなクエスト

 場所は変わって今はとある山奥にやってきた。


 装備の注文を終えたあとに、アデリナさんの予告通り、冒険者ギルドにてクエストを受け、討伐対象がいるのがこの山奥ということで、カグヤさんの【兎跳び(ラビットジャンプ)】でワープしてきてしまった。

 相変わらず展開がはやすぎる!!!


 「さて、この辺りにいるはずなんだけど……」


 アデリナさんがそうつぶやいた瞬間に、少し離れたところでズシンと、大きな音がした。

 その音は、いつしかズシンズシンと連続でなり始め、こっちの方にだんだんと近付いてきているようだった。


 「都ちゃん、まさか……この音って……」

 「ええそうね、多分……モンスターの足音だこれ」


 私がそう言った瞬間に目の前にそれは現れた。


 Bランクモンスター、レッドトロール。


 冒険者ギルドにて新しく受けたクエストの討伐対象だ。

 普段は山奥で大人しくしているらしいが、なぜか最近町の近くまで出てきて、いろいろと悪さをするらしい。

 そこでギルドの方から討伐クエストが出たということだ。


 真っ赤な肌をした身長五メートルほどの巨人であり、手には大きな棍棒を持っている。


 「現れたわね、手筈通り、今回も私とカグヤは手を出さないわ、都ちゃんと歩美ちゃん、そして大河くんの三人であいつを倒してね」


 まだ良かったのは、今回は大河くんも一緒に戦ってくれるということだ。

 なんでも、三人の連携を今のうちから練習をしておくべきだと、アデリナさんとカグヤさんの意見が一致したため、今回は三人で戦うことになった。


 「都さんと歩美さんと一緒に戦うのは始めですね、よろしくお願いします!」


 爽やかな笑顔で挨拶してくる大河くん、うんうん、相変わらずナイスガイだね。


 「それでは、手筈通りに進めましょう!」


 「ガアアアアアアアアアアアア!!!」



 そう言いながら構える大河くん。

 その姿を見てレッドトロールが、咆哮をあげながら突っ込んできた。


 まずは、いつも通り歩美が相手の動きを遅くする。


 「いくよー!【牛歩戦術(ディレイゾーン)】」


 歩美がスキルを発動すると、とたんにレッドトロールの動きがスローモーションのように鈍くなる。


 「これは便利ですね!よし、いきますよ!【虎拳(タイガーナックル)】!!!」


 大河くんがスキルを発動し、両手に闘気のようなエフェクトを纏いながらレッドトロールのもとに向かっていく。


 歩美のスキルの影響で動きをスローモーションにされたレッドトロールは、当然ながら全く反応できていない。

 大河くんがレッドトロールの目の前まで足を運び――


 「おりゃぁぁあ!」


 思いっきり殴りつけた。

 無抵抗のまま、大河くんのパンチを受けたレッドトロール、二発、三発と連撃を受け続けている。


 「おらあああ!ふっとべえええ!【虎掌(タイガーストライク)】!!!」


 敵の胸元に掌底を当てると、ものすごい勢いでレッドトロールがぶっ飛んでいく。

 ……ていうか大河くん、キャラ変わってない?

 テンションが上がると狂暴になってしまうのか、大丈夫かキャラ設定。


 豪快にぶっ飛ばされたレッドトロールは苦々しい表情を浮かべながら立ち上がる。

 大河くんの猛攻を受けても立ち上がれるなんてなかなか頑丈だな。


 さて、私もそろそろ何かしないと……

 とはいえ、どうしたもんか。


 今回のクエストで、私にはもう一つ制約が課されている。

 それは【窮鼠猫を嚙む(ファイナルリベンジ)】の使用の禁止。

 アデリナさんとカグヤさん曰く、あれを使うと一撃で決まるため面白くないとのことだ。

 何だよ面白くないって、いいじゃんね。


 まあ、HPを一割以下にするっていうのはかなりリスクが伴うので、基本的には【窮鼠猫を嚙む(ファイナルリベンジ)】頼らなくてもいいような戦法を特訓した方がいいという意見もいただき、その意見にはものすごく同意してしまったが……


 とりあえず、短剣を取り出す。

 この短剣はそこまで強いわけではないが、【金剛工房】で新しい武器ができあがるまでの代用品として、アデリナさんから支給されたものだ。

 歩美も同じく、代用品の斧を取り出す。


 私は、ステータス確認時に一つだけ試してみたいスキルを見つけてある。

 今日はそのスキルを試すつもりだ。


 「歩美、もう一回【牛歩戦術(ディレイゾーン)】お願い!」

 「うん!【牛歩戦術(ディレイゾーン)】!」


 再びレッドトロールの動きが鈍る。

 私はスローモーションになったレッドトロールに向かって走り出した。


 「いくよ!【鼠算(インフィニットゲージ)】」


 短剣を構えながら新しいスキルを発動する。

 黄色い闘気のようなエフェクトが私を覆う。

 エフェクトをまとったままレッドトロールの足元に張り付くと、太ももの辺りに短剣を突き刺した。

 わずかに傷がつくが、ほとんどダメージを与えられない――

 が、気にせず短剣での攻撃を続ける。


 すると不思議なことに少しずつレッドトロールの体にダメージが入っていく。

 最初はかすり傷にも満たなかったのに、今では短剣で斬り付けるたびに大きめの傷が入り、鮮血が飛び散り始めている。

 レッドトロールは何が起きたかわからないという表情で私を見ている。

 当然だ、最初は取るに足らないと思っていた非力な私の攻撃が、回数を重ねるにつれて段々と強力になっていくのだ。

 これが、私のスキルの一つ【鼠算(インフィニットゲージ)】の効果だった。


 【鼠算(インフィニットゲージ)】 : 【特性:ねずみ】を持つものが習得できるスキル、連続で攻撃をする度に与えるダメージが倍になっていく。攻撃が途中で途切れた場合は効果を失う。


 このスキルは、連続で攻撃をすればするほどに与えるダメージが倍々で増えていくというものだ。

 最初は与えたダメージがたった1であっても二撃目では2、三撃目では4と雪だるま式に増えていく。

 

 だいたい十回も攻撃すれば、レッドトロールのHPを削りきれるはずだと考えていたが、目算通りにその時はきた――


 「ア、アガアアア……」


 いつしか、レッドトロールのHPは尽き、仰向けに倒れこんでしまった。

 【窮鼠猫を嚙む(ファイナルリベンジ)】に続く、壊れスキルの誕生の瞬間だった。


 「おいおい、そのスキルもかなりのチートっぷりだな。歩美の【牛歩戦術(グラビティゾーン)】と一緒に使ったら、ほとんどの敵なら倒せるんじゃねえか?」


 カグヤさんが苦笑いをしている。

 本来はもっと苦労して倒すはずの相手をスキルを使用することによって、苦もなく倒してしまったことに対して思うところはあるのだろう。

 しかも一番の壊れスキルだと考えていた【窮鼠猫を嚙む(ファイナルリベンジ)】を封印した状態でだ。

 

 「まあ、仕方ないわね、都ちゃんはこっちが課した制約をしっかり守っているもの、使用を禁止したスキル以外で相手を倒しちゃったんだから、なにも文句はないわ」


 アデリナさんもあきらめたような微笑みを浮かべながらフォローしてくれた。

 そうさ、私は言われた通りの成果をあげたんだからね、文句を言われる筋合いはないさ。


 そんな話をしているところで、大河くんが何かに気付いた。


 「あれ?おかしいですね?レッドトロールは確かに倒したのに、リザルト画面のウインドウが出現しません」

 「ああん?そういえばそうだな。いつもならとっくに結果が表示されてるのにやけに遅いじゃねえか」

 「本当ね……これはひょっとして……」


 三人が不吉なことを話し合い始めたその時――



 「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」



 さらに山奥から巨大な何かの叫び声が聞こえてきた。



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