第十一話 初めての装備作成
「さて、ここが【えとらんぜ】御用達の鍛冶屋、【金剛工房】だ」
カグヤさんが指し示した場所には黄金色の看板にデカデカと【金剛工房】と描かれた鍛冶屋があった。
なんだろう、前の世界にもこんな看板のお店ってあったよなぁ……
なんて考えながら中に入ると、屈強なおじさんたちが待ち構えていた。
「いるぁっしゃいますぇぇえええええ!!!!」
「ごぉぉめいさまあ!ごあんないいいいい!!!!」
いやいや、居酒屋かここは、いったことないけど。
とてつもなく元気な掛け声が飛び交うお店に入ってしまった。
「びっくりしたでしょ?ここは皆さん元気すぎて、お客さんがついていけないのよね。腕は確かなんだけどね」
「へいらっしゃい!【えとらんぜ】の皆さん!いつもお世話になっております!今日はなんの御用でしょうか?」
お店の大将だろうか?
一際大柄な男性がアデリナさんとカグヤさんに声を掛ける。
「こんにちわ、ゴルディさん、うちにも新人が入ったから装備を新調してもらおうと思ってね」
「期待の新人だから腕によりをかけて作ってやってくれよな」
「はい!承知いたしやした!おうおう!!!野郎ども!ご新規様ごあんなぃぃい!!」
「はいい!!!!よろこんでぇぇええええ!!!!」
もういいわ、どこの居酒屋チェーンなんだここは、いったことないけど。
屈強な男たちが喉が張り裂けんばかりの大声を張り上げている様子は異様の一言だ。
「新人さんはこちらのお二人ですかい?私はゴルディ、この【金剛工房】の工房長を務めております、以後お見知りおきを!」
「はい!私は、子々津 都といいます、よろしくお願いします!」
「私は、牛乃 歩美といいます、よろしくお願いします」
ゴルディさんはニコニコと笑顔のまま、私と歩美に握手を求めてくる。
ものすごい大柄だけど話してみるとものすごい物腰が柔らかくて、話しやすそうだ。
「さて挨拶も終わったところで、とりあえず武器からお願いしようかしら」
「はい!どんな武器をご所望でしょうか?」
「そうね、都ちゃんのジョブは【盗賊】だから短剣を、歩美ちゃんのジョブは【斧戦士】だから斧をお願いするわ」
「はい!短剣と斧ですね!素材はどうしましょうか?」
「素材はこっちにあるぜ!」
カグヤさんはアイテムボックスを取り出すと、中から素材を出してカウンターに並べていく。
カウンターに並べられたのは、私たちが倒した地獄サソリとキングリザードの素材だ。
「ほう、これは地獄サソリとキングリザードの素材ですね。なかなか立派なもんだ。素材はこれを使うとして、ベースの鉱石はどうしますか?」
「ベースは、うちが預けている鉱石の中から好きなやつを使ってもらえるかしら。オリハルコンでもアダマンタイトでもヒヒイロカネでも、一番性能を発揮できるものでお願いするわ」
「いいんですか!?ものすごい貴重な鉱石ばかりですけど!」
「ええ、せっかくうちの期待の新人たちの初装備だから、そこはケチらずにいくつもりなの」
アデリナさんがどんどん打ち合わせを進めていく。
どうやら、物凄く貴重な鉱石を私たちの装備に使ってもらえるらしい。
あまりの大判振る舞いにゴルディさんが驚いている。
「後は、同じ素材を使って防具も一通りお願いできるかしら?」
「はい、防具はどんな感じで?」
「都ちゃんは、盗賊だからスピード重視の軽装備かしらね、できる限り強度も上げてちょうだい。歩美ちゃんの装備は、防御力重視でお願い、多少重くなっても構わないから、とにかく頑丈な装備をお願いするわ」
「はい、承知しました!それでは、ご注文の内容ですと……四十万ゴールドほどになります!」
おお、かなり高いように思える。
私たちが倒したキングリザードのクエストの報酬が三万ゴールドだったが、それより遥かに高かった。
「ええ、わかったわ、支払いは後払いでいいかしら?」
「はい!本来なら手付金を頂きたいのですが、【えとらんぜ】さんには普段からお世話になってますので全額後払いでも大丈夫です!」
「ありがとう。納期はどれくらいかかりそうかしら?」
「そうですね……超特急で仕上げて一週間ほど待って頂ければ……」
「わかったわ、じゃあそれでお願い、一週間後にまた取りにくるわね」
四十万ゴールドという大金を即決で払うと決めてしまうアデリナさん、やはりSランククランだとかなりの所持金があるのかな?
とにかく私たちの装備が完成するまで一週間ほどかかるみたいだ。
「ああ、そういえば、できあがる装備の適正レベルはどれくらいになりそうなんだ?」
カグヤさんが質問する。装備の適正レベル?
ひょっとして、レベルが低いと装備できないとかの制限があるのかもしれない。
「そうですね……ざっと見積もって、最低でもレベル30は必要になりますね」
がーん、じゃあ完成しても装備できないじゃん。
私と歩美のレベルは現在たった12だ。
一週間でレベル30まで上げなきゃならないなんて、到底無理なんじゃないだろうか?
さすがにアデリナさんとカグヤさんでもそんな無理はいわないだろう、鬼じゃあるまいし――
「ええ、それに関しては問題ないわ、この二人にはあと一週間でレベル50にはなってもらうつもりだから」
ががーん、鬼や、鬼がいた。
私の想像の遥か上のラインの厳しさだった。
たった一週間でレベル50なんて不可能だよ!
「大河くんはさすがに無理だと思うよね?」
「いえ、僕のときは一週間でレベル60までいきましたよ!」
がががーん、経験者がいた。
「何回か死にかけたけど楽しかったなぁ」
あかん、満面の笑みで死にかけた話をしとる。
これって典型的なブラック企業の社員さんじゃないか!
「さて、これで注文は終わったわ、それじゃあ、ギルドにいってクエストでも受けにいきましょうか」
アデリナさんが手をパンっと叩いて提案してきた。
そろそろご飯でも食べましょうか!みたいなノリでクエストを提案しないでいただきたい。
今度はどんな戦いが待っているのだろう。
私と歩美はため息をつきながらギルドへ向かうのだった。
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