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二幕目は陛下と共にですの

 青ざめ立ち尽くしているグルトムの皇太子。どうするのかとお聞きしているターワンのお方様。


「さて、今宵は婚約者のお披露目の舞踏会と聞いておるが……、どうなさるおつもりじゃ、明後日、『ドローシア姫』を連れ、ワシは出立しなければならんのじゃが、そちのが連れ去ったのぉ……さてさて困ったのぉ……早馬にてそちの父親に問い合わせようかの?ん、どうする」


 年の功ですわね。チクリチクリと責めるように話されておりましてよ。わたくしは、予め決められていた通りに動きます。マーヤに来る様合図を送りましたの。


 事を知らされているマーヤが、緊張しているのか、かたい顔で、お姉さまが落とされたヴェールをわたくしに、運んで参りました。跪き差し出してくる彼女。わたくしは、手渡されたソレをふわりと広げて彼女に被せます。


「そうですわね……でも、ご安心なさって、お姉さまなら、ここにおりましてよ」


 わたくしは指に嵌めていたそれを、マーヤに手渡します。共に贈られた色違いの指輪ですわ。紅珊瑚はお姉さま、わたくしは真珠です。二品共に見事な逸品。それを外される事が無かったお姉さまでしたから、少しばかり腑に落ちませんわ。


 ()()()、あっさりとお外しになられました事に。初めて親しくお話をしたお姉さま。抱えていらっしゃるモノは……読めませんわ。


 ――、俯きそれをそろりと指にはめる彼女。取り敢えず今日から数日間、マーヤが身代わりになる事になっておりますの。


 側におられたターワンのお方が手を差し出されます、それを少しばかり震えつつ、取り立ち上がったマーヤ。気丈な彼女はしっかりと顔を上げておりますわ。衣装をそれなりに整えれば……いけそうですわね。


 マーヤはわたくしの側で、お姉さまの立ち居振る舞いをずっと見てきたのですから。それに今日の舞踏会は椅子の花になればおよろしいのですし、今はかつての侍女や取り巻きは遠ざけられているとお聞きしてます。


 姉妹の立場を利用して、今宵はわたくしと共に過ごすことにすれば良いのです。文句を言い出すお義母様は伏せておられますものね、ホホホホ。


 ただ流石に勉強不足なので、そのまま嫁がす事は出来ません、そして何よりこのお方様は、サーシェリーをお求めになられてますもの。


「……、み、身代わりですと!そ、それで良いのか!それよりも二人を捕らえ連れ帰る事が先決ではないのか!」


「グルトムの、慶事の今日これから、城内からこれ以上多くの兵が出るのは良くない、まあ、ワシ達に任せておいてくれまいか?ソナタに何か良い手があればそれでもかまわぬ」


 人の悪い笑みを浮かべて、この場を収めるターワンの王。黙り込むグルトムの皇太子。この顛末をお国に知らされれば、どうなる事やら。


「すまぬ、これより少しばかり皆様と話をしたいのだが、良いですか?時を作れるだろうか」


 陛下がお父様に話されます。では我が部屋で……と応えられます。


「使いやりますので部屋にてお待ちください、ラジャのお方、そして……よろしいですな、お国元に早馬など出すことをお考えにない様に」


 渋顔の彼に、しかと釘を刺されましたの。そしてお父様は、ここで見た事聞いたことを忘れる様にと、命を出されます。では、城に……そう仰ると先に立ち向かわれます。ザワザワと人が、時が動き始めました。



 ☆☆☆☆☆


「では……、こちらも進めておこう」


 わたくしは城内の貴賓室で、陛下と共に落ち着いております。マーヤの元にはクロシェ夫人が付いていらっしゃるとお聞きしてます。懐かしいですわ。後でゆっくり話せるかしら。


「ええ、ターワンのお爺様は、サーシェリーが欲しいのです」


「サーシェリーか……他の令嬢ならばともかく、身代わりに出せと言って通用しないぞ、あれは王族だからな、資格はある。何も他国の姫に成りすまさなくても、と弟は突っぱねるだろう」 


「そうですわね、でも陛下は、幾つか手札はお持ちで御座いましょう?」


 わたくしは指にはめているそれをお見せします。


「ご禁制を持っている事だな。それと良からぬ話。しかし……、もう一つ弱い、知らぬ存ぜぬになるだろう……」


 先の先を読まれる陛下。確かにそうでございます。わたくしは何か打つ手は無いかと考え、そして思いつきましたの!


「……、ではパトリシアを使いましょうか、陛下」


「パトリシア?何処の令嬢だ?それを身代わりにか?」


「いいえ、身代わりはあくまでサーシェリーです。どうでも彼女がいいと、それかわたくしとお爺様は仰ってますよの。良いですの?陛下、わたくしを巡り戦争になどなるなんて」


「それはいかんな、そなたは我が国の大切な華なのだから。それに我が国は、手に入れた物は決して離さないぞ。元は盗賊ゆえ、で……王妃よ。でどうするのだ?」


 陛下はニヤリと笑い聞いてこられます。わたくしが悪巧みを出来る様になったのを楽しんでいる様ですわね。わたくしもウキウキしてますけれど。


「キャロラインのお支度と共に、側仕えを幾人か送る事になっております。その侍女の中に……パトリシアを入れるのですわ。それで……事は動くと思いましてよ、お帰りになられたら直ぐに命を出して下さいな」


「直ぐにか?」


「ええ、直ぐに。そして出されたその夜には……、舞踏会を開きましょう。我が国に立ち寄れておられる『お姉さま』とターワンのお方をおもてなしするために」


 うふふ、娘を側仕えにと売り込みに来られていたパトリシアの母親。選ばれたと知ったら……そして恋仲のシャルル。パトリシアとの仲は今でも反対されていると聞いております。



 オーホホホホホ、楽しくなってきましてよ。



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― 新着の感想 ―
[一言] この国王夫妻、マジパないですなー。
[一言] >オーホホホホホ、楽しくなってきましてよ。 ホントそれ( ˘ω˘ )
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