事の顛末ぅ〜
「だははははっ!!やってやったのネ!あのバカぼんに目にもの見せてくれたやったのネ!さすがはアタシの愛弟子ィ~!」
フェリックスがアーバン・マフレインを騎士団に連行して行った後、カメリアはノエルを母親の元に届けるべく医務室へと戻った。
そしてアーバンとの事の顛末を医務室に居る皆に報告したのであった。
中でもやはりメロディが喜んだのは、
カメリアが直接アーバンに触らせて現実を突き付けた事だ。
それが冒頭の言葉である。
「バカぼんったらぶったまげたでしょうネ~!美少女カメちゃんが“亀ちゃん”を飼ってるんだから゛……ブハッ!ヤダもー最高~♡」
「えろりぃたんびーふ!」
「メロディったら喜び過ぎよ。でもカメリアさん、大丈夫?いくら理解させるためでも、嫌いな人間に体を触らせるなんて嫌だったでしょう?」
医務室に戻ってきた娘のノエルを膝にのせながら、ハノンが心配そうにそう言ってカメリアを見た。
カメリアはふるふると首を振る。
「一瞬だけでしたし、どうしてもあの身勝手な令息に目に物見せてやりたかったんです。口で言っても信じないと思いますし、見られる方がなんか嫌だなと思ったので」
カメリアがそうハノンに答えると、メロディが透かさず言う。
「目に物見せる……確かに目にモノを見せてやったわよネ!見せたんじゃなくて触ったんだけどネ!だーはっはっはっ!」
それを聞き、ハノンはノエルの耳を塞ぎながらメロディを睨めつける。
「メロディ……すぐそうやって下ネタに持っていくのやめなさいよ。少なくとも子供の前ではヤメロ」
「ヤダ、アタシったら!でもついお口からペロッて出ちゃうのよネ~」
「脊髄反射でものを言うからでしょ。エロディの場合は下半身反射かしら?」
「いやんモ~♡ハノンサマったら褒めないでヨ~♡」
「褒めてないわっ」
「いやんモ~~♡」
「えろりぃたんびーふ!」
相変わらず考えがすぐに食べ物に直結するノエルが元気よくそう言うと、メロディはハノンの膝に座るノエルを抱き上げた。
そして片手でノエルの小さなお鼻をツンツンしながら言う。
「ノエルたん、メロリィたんは聞いたわヨ。勝手に転移魔法使っちゃったんですってェ?」
「うん!」
「うん!ジャナイわヨこのおチビちゅわん!モ~この可愛いおチビは暴走しちゃって~!ダディが一緒だったからイイけど、危ないコトはしちゃダメョ?ア・ブ・ナ・イ♡コトはオトナになってからネ♡」
「えろりぃたんびーふ!」
「何言ってるのこのエロディが」
「モー!エロディって言わないでヨ~♡そんな褒めないで♡」
「だから褒めてないから」
「えろりぃたんびーふ!」
「モ~~~♡」
「ぷっ……!あはははっ!」
永遠に終わらなさそうな会話を聞きながら、カメリアは思わず吹き出していた。
とにかくアーバンは捕らえられ、国により正しく処分が下されるだろう。
アーバンはアデリオール国民ではないが、学園内で起きた事はアデリオールの法に則り裁かれる。
有り得ないとは思うが万が一アーバンが自国に逃げ果せたとしても、アーバンが…引いてはマフレイン家が犯した罪は大陸法にも抵触する犯罪だ。
自国であっても、たとえ権力を駆使しても逃れる事は出来ないはずだとカメリアは考えた。
そして事実、アーバンはアデリオールで裁きを受ける事となった。
まだ未成年であるアーバンは、罪を犯した少年たちが入れられる監獄へと送られることになった。
そこは平民も収容される監獄で、貴賎を問わず同等に扱われる。
そして同等に罪に応じた労役が課せられるのだ。
高位貴族の嫡男として蝶よ花よと自称エレガントに生きてきたアーバンにとっては耐え難い屈辱と共に苦しい労役刑まで処せられ、かなりの罰となるだろう。
その監獄で罪を償って、その後は真っ当に生きて欲しい。
カメリアはそう思った。
そしてアーバンの生家マフレイン家だが、
息子の不祥事から芋蔓式に罪が露見し、侯爵位をはじめとする罪の分だけ所有していた爵位を剥奪され、今では男爵位を残すのみになってしまったという。
多額の罰金や賠償金も支払い、もはやマフレイン家に権力は存在しない。
国内有数の名家から一気に、吹けば飛ぶような弱小貴族へと転落したそうだ。
自業自得とはこの事。哀れなものである。
その事が明るみになるのはまだ先の事ではあるが、
とにもかくにもカメリアとアーバンの一件と魔術学園の学園祭は無事に終了したのであった。
その学園祭が終わる少し前、仕事のために遅れて学園にやって来たメロディの家族、パートナーのダンノと愛娘のリズムと合流した。
「リズム!べりーすうぃーとマイどーたー!」
メロディが愛する娘を抱き上げて頬ずりすると、リズムは小さな手でメロディの顔を押して遠退けた。
「まま、おしろいがつくー」
「あらヤダめんごめんご!」
そう言ってリズムを下ろしてやった。
赤ん坊の頃から一緒に成長したノエルとリズムは幼いながらに友情を育む親友同士だ。
そのリズムの姿を見てノエルが走り出す。
「りずむー!」
自分の元に駆け寄ったノエルの手をリズムはすぐに繋いだ。
「のえるってばまたかってに……まいごになってもしらないよ?」
「のえる、まいごにならないもん!ままはちかくにいるし」
「まえにおでかけしたときもまいごになったじゃない」
「えへへ」
「も~のえるってば」
「りずむもびーふ!」
「メロディといっしょにしないで」
メロディの娘にありながら、リズムは至極真面に育っていた。
これも偏にダンノの尽力の賜物であろう。
そんな小さな親友同士の会話を微笑ましげに聞く母親たち。
ハノンがノエルとリズムに言った。
「そろそろルシアンやポレットもクラスの出し物の当番が終わっている頃でしょう。一緒に迎えに行きましょうか」
「わーい!」
「はーい」
ノエルとリズムが元気よく返事をした。
二人の手は仲良く繋がれたままで、帰宅時に別れる時まで離されることはなかった。




