カメリアとルシアン
「会長、学園長の承認を受ける書類はこのまま提出していいですか?」
本日の活動を終えた生徒会室でルシアンが生徒会長であるカメリア・ランバートにそう訊ねた。
カメリアは筆記用具などの私物を鞄に詰めながら答える。
「うんそう。もう執行部の判は押してあるから」
ルシアンは書類をまとめながら室内から他の執行部メンバーが出て行ったのを確認してカメリアにもう一つ訊ねる。
「……その後、付きまといはどうですか?」
カメリアはたいそう良い笑顔を浮かべてルシアンを見た。
「それはもうぴたりと止んだよ。アデリオールのワイズ侯爵家ブランドは西方大陸のどの国でも有効だね。おかげさまでキミが執行部入りをして何かと近くに居てくれるようになってからはなりを潜めている」
「だけど向こうも同格の侯爵家です。それに僕はワイズ侯爵家門の者とはいえ生家は伯爵位、このまま引き下がってくれるとは思えません」
カメリアの言葉を受けたルシアンがそう告げるとカメリアは頷き、辟易とした表情で言う。
「そうだね。向こうからの婚約の打診を何度も断っているにも関わらず一向に諦めてくれないだもんな。相当なしつこさだよ」
カメリアは自分の容姿や出自が貴族の令息たちにとって理想的であることを幼い頃から充分に理解していた。
だから自らの“素”を隠さず、令嬢らしからぬ振る舞いをし続けてきたというのにそれでも令息たちからのアプローチや婚約の打診はひっきりなしであった。
そしてそうやってカメリアを将来の妻にと望む令息たちの中で一人、突出してカメリアに執着する者が現れたのであった。
同じ魔術学園の六年生、モントダーン王国筆頭侯爵家の嫡男であるアーバン・マフレイン。
彼は昨年度から留学生としてこの魔術学園に通っているが、その昨年の学園祭でカメリアを見初めて以来、家を通しては婚約の打診やお茶会や夜会など学園外での交流の誘いを執拗に行い、アーバン個人としては「カメリア嬢、キミ以外に僕の妻になるに相応しい女性はいない」と猛アプローチをしかけてくるのだ。
今の言葉だけで鑑みると、ちょっと押しは強いが一心にカメリアを求める良い縁談のように感じるが、カメリアが彼とは有り得ないと思う理由があるのだ。
それはアーバン自身の為人を示す人との接し方。
自分より家格が下のものは塵芥と同等、どう扱おうと構わないというものだ。
現に学園では身分が下位貴族や平民の生徒とは一切口を利こうとはしないのだ。
それどころか俺様に近寄るなオーラを滲ませ、虫ケラでも見るような視線をその生徒たちに向ける。
しかしさすがにそれでは誰とも話せなくなってしまうので一部伯爵位の人間までならと妥協しているらしい。
そう、アーバン・マフレインとはとにかくいけ好かない奴なのだ。
そんな自意識過剰、自己肯定感天井知らずの人間だからして、
繰り返される婚約の打診や交際の申し込みをハッキリすっぱりきっぱり断っても一向に聞き入れてくれない。
それどころか「恥ずかしがらなくていい」だとか
「僕の側に居ることに気後れする必要はないんだよ」
だとか言って無遠慮に距離を縮めようとする。
そしてカメリアの毎日の予定を事前に調べさせ、自分もそれに合わせて行動するようになったのだ。
登下校はもちろん、休憩時間や自習時間など近付いて来ては無理やり一緒にいようとした。
所謂付きまといである。
もう何を言ってもこちらの聞く耳を持とうとしないアーバンに心底嫌気が差していたカメリアが学園を辞めて自国に戻ろうかと思い悩んでいた時に、ルシアン・ワイズ伯爵令息が生徒会執行部入りしてきたのだ。
カメリアはこれまた悩みに悩み抜いて、
ルシアンにアーバンの付きまといに困っていること、そして助力を願いたいことを打ち明けた。
カメリアから話を聞かされたルシアンがこう質問した。
「お話はわかりました。誰か協力者が必要なのもわかります。だけどなぜ僕に?有力諸侯の令息は学園には他にもいるでしょう?」
「あの自意識過剰オバケを怯ませるには出自だけではダメだから。将来性、そして容姿や能力もハイスペックな人間でないとマフレインは止められなと思ったんだ。それに、キミはあの人と古くからの知り合いだそうじゃないか……その人を秘密裏に紹介して欲しくて……」
「その人……?秘密裏に、紹介……?」
カメリアの言葉に要領を得ないルシアンがオウム返しのように訊ねると、カメリアは頬を染めてその人物の名を口にした。
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年末年始、ドタバタと忙しく更新は短めになりそうです。
ごめんなさい。 °(°´ᯅ`°)° 。
読者様皆さま、今年もこの物語にお付き合いいただき本当にありがとうございました!
書籍発売となりましたのも、皆さまが読んで下さり、応援して下さったからでございます。
本当に感謝してもしきれません。
ありがとうございます!
来年も引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。
どうぞ皆さま、良いお年をお迎えください。
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜
キムラましゅろう




