ルシアン先輩
今回から現在の時間軸にタダイマです。
ルシアンとミシェル編、スタート。
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オルブレイ辺境伯令嬢ミシェルは放課後の部活動として和刀剣術部に入部した。
和刀剣術部とはその名の通り東方の国と呼ばれる※東和州で使われている刀を用いた東和の剣術を稽古する部活動である。
(※詳しくは作者の他作品『さよならをあなたに』を参照)
黒髪のミシェルに東和の剣術道着はよく映え、同性である女子生徒もうっとりするほどの凛々しさであった。
幼い頃から父親であるファビアンに西方剣術の指導を受けて育ったミシェルにとって東方剣術は新鮮で興味深く、彼女はあっという間に部活動に夢中になった。
和刀を鞘からスラっと抜く時の緊張感が堪らない。
西方剣術は斬る、突く、薙ぎ倒す、叩く、と攻撃の幅が多様だが、和刀の“斬る”事のみに重きを置いた性質を巧く引きだす東方剣術はとても興味深く面白い。
普段の稽古は東和から取り寄せた木刀なる物を用いるが、顧問の指導の下で和刀を手にした時の身の引き締まる感覚がミシェルは堪らなく好きだった。
ミシェルが今日も放課後に木刀の素振りで自主稽古をしていると、西方騎士団が本拠地を構える地方都市ハイレン出身の部活動仲間が話かけてきた。
「ミシェル様ぁ~……もうホント毎回尊すぎて無理なんですけどぉ~」
「尊いって?」
その女子生徒が見る方向へと視線を辿ると、そこにはミシェルの従兄であり魔術学園の先輩でもあるルシアン・ワイズの姿があった。
ルシアンもこの東和剣術部の部員だ。
元々はルシアンに勧められて部活の見学に来たのが東方剣術との出会いであった。
女子生徒がうっとりとため息を吐きながら言う。
「素敵よねぇワイズ先輩……エキゾチックな黒髪のミシェル様が東和の道着が似合うのはわかるけど、銀髪のワイズ先輩が違和感なく着こなすってどうなのよぉ~……もう尊すぎて倒れちゃいそう」
「ふふ、本当ね」
ミシェルは女子生徒のそのもの言いが可笑しくてくすりと笑う。
「ミシェル様はワイズ先輩とは従兄妹同士なのよね?いいなぁあんなに素敵な人が親戚なんてぇ~!ね、実はワイズ先輩が初恋の人だったりするんでしょ?」
「え?いいえ?」
「ウソっ!?あんなにカッコイイ人が側にいて!?」
「そういえば私……初恋ってまだなのかも……」
「それまたウソでしょ!?あなたもそんな見目麗しいのに!?」
連続で驚き続ける女子生徒に、ミシェルは言った。
「自分の見目がどうとか私は本当に疎くて……幼い頃はお父さまにそっくりで“チビゴリラちゃん”なんて呼ばれていたから……同年代の男の子からはよく揶揄われたの」
「……周りが喧しい失礼なガキばかりだったなら、そりゃ初恋に落ちるきっかけなんてないわよね……でもきっと、ミシェル様を揶揄った連中は今頃焦っているでしょうね。こんなに綺麗ななったミシェル様を見て、昔の事を後悔していると思うわ」
「そうかしら?」
「そうよ。感慨深いわよね~」
だとしてもやはりミシェルには何の感慨も湧かない。
だって幼い頃からいくら“チビゴリラ”とか“ゴリラミニ無双”とか言われても何とも思わなかったから。
───ああでも………
それは従兄のルシアンのおかげなのかもしれない。
昔からルシアンはミシェルに魔法の言葉をくれていたから。
「ミシェルは可愛いね」
「ミシェルはいい子だ」
「すごいなミシェルは。頑張り屋さんだ」
その言葉はいつもミシェルの心をくすぐってポカポカな気持ちにしてくれた。
だから主に王都でだが、面白可笑しく自分の見目を揶揄う人間と接しても平気だったのだ。
あまりに度を越すと普段は温厚な父親からどす黒いオーラが出て、他者を圧倒してしたいたのもあるが。
そんな事を考えながらミシェルがぼんやりとルシアンを見つめていると、その視線に彼が気付いた。
そしてミシェルの姿を認め、柔らかな笑みを浮かべる。
「きゃっ!ワイズ先輩がこっちに来るわ!」
女子生徒が興奮してミシェルの隣で言った。
ルシアンはゆったりとした歩調で道場内を歩き、ミシェルの元へとやってくる。
ミシェルはそれを見ながら笑みを返し、先輩でもあるルシアンにこう告げた。
「今日もよろしくお願いします。ルシアン先輩」
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今日はちと短めでごめんなさい。
( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )ピエン




