破滅の足音 ② 挿話 学園長震え上がる
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アデリオール魔術学園の長であるエルジュ=バルビエ(57)は震えていた。
とうとう、恐れていたことが起きたのだ。
聖女が編入して以来、頭を抱えたくなる報告が教師や生徒から多数寄せられていた。
大陸国教会を信仰しているわけではない家門の令息たちが次々に聖女を崇拝し始めたという報告や、
特定の教師が聖女を依怙贔屓しているという報告や、
聖女がデイヴィッド王子の婚約者であるポレット=ワイズを非難したなどという報告だ。
それに対し、学園の長といえど生徒の信仰心を咎める権限はないので、とりあえず聖女に傾倒していると見られる教師には幾度となく注意した。
いくら大陸国教会が認め、王国の庇護下にある聖女とはいえ、生徒個人を優遇するなどあってはならないことだと。
その場では教師たちも神妙に頷くのだが、その後も改善される様子は見られなかった。
そして一方では依然として聖女を崇拝する男子生徒の数は増え続ける有様で、どうしたものかと頭を抱えていた時に、今回の事件が起きたのである。
魔術実技の教鞭を執るウノムがやらかした。
聖女のためと曰わり、王子の婚約者であるポレット=ワイズを私刑に掛けようとしたのだ。
よりによってあのワイズ家門の娘にっ!!
西方大陸でも有数の歴史ある名門中の名門、あのワイズ家門の娘にっ!!
歴代数多の英雄を排出し、アデリオールの武門の頂点に立つあのワイズ家門の娘にっ!!
そして灼熱の氷騎士(意味不明)と謳われたアルドン=ワイズ前侯爵のスピリッツを最も色濃く受け継ぐ近衛騎士隊長フェリックス=ワイズ伯爵の娘にっ!!
な、な、な、なんてことしてくれたんだっ!!!
聞けばワイズ伯爵はウノムの凶行を察知し、すぐに飛んできたというではないか。
しかも王家の暗部を引き連れて……。
そして既に静かに激怒しているらしい……。
かつて魔術学園の騎士科で指導をしていたバルビエの教え子の一人であったフェリックス=ワイズ伯。
彼の実力と、敵と認定すれば容赦ないその冷淡さは身をもって知っている。
「…………詰んだな、わし……」
先程から辺りの空気が急激に冷え出したのを肌で感じる。
ワイズ伯が近付いてきているのだろう。
今しがた学園長補佐にそっとマフラーを手渡された。
「………………うっぅ…」
学園長エルジュ=バルビエ。
理事会にて学園長に選出され三年。
三日天下とまではいかないが、三年天下であったなと自嘲しながらデスクの引き出しから便箋を取り出した。
そして大きく嘆息しながら、辞表を書き始めたのであった。
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作者不調のため短めでごめんなさい。
ゴメンネ…_(:3」 ∠ )_




