雪原のチビゴリラちゃん
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北方騎士団に届く荷の中に、隣国から贈られたバナナがあるのはよくある事なのだが、今回贈られたバナナはいつもと様相が違っていた。
「ん?なんだかこのバナナが入っている箱、いつもと感じが違う事ないか?」
積荷の確認も副団長としては大切な仕事だと、毎回荷が届く度にチェックをするファビアンが部下の一人に尋ねた。
ファビアンを崇拝する隣国の騎士や高位貴族から贈られてくるバナナはいつも木箱に入れられているだけなのだが、今回贈られたバナナの木箱には青いリボンが掛けられていた。
「あ、それは副団長宛ではないからですよ」
「俺にじゃなければ、一体誰に贈られたバナナなんだ?」
「ミシェルお嬢様にです」
「な゛に゛っ!?」
ファビアンは無意識のうちに声を張り上げていた。
すると隣にいて木箱の事を答えてくれた部下が顔を顰めて耳を押さえる。
「ちょっ…副団長、鼓膜が死にますっ、急にデカい声を出さんで下さいっ……」
「あぁ、すまんすまん。しかし何故ウチのミシェルにっ?」
「知らぬは父親ばかりなりってね」
「なんだそれは?」
不穏な返しにファビアンの眉間にシワが寄る。
「この頃、ミシェルお嬢様が馬上訓練の為に国境付近の哨戒に参加されているでしょう?その様子を隣国のヤツらが見て、副団長にそっくりな女の子が時々国境に現れるぞ!と話題になったそうなんです」
「そ、それで?」
「まだ十歳くらいの小柄な少女が大人顔負けの手綱捌きで馬を操る姿に感銘を受けたヤツが多いらしく、しかもそれがあの、雪原のシルバーバックのご令嬢だと知ったもんだから一時大騒ぎになったんだとかなんとか」
「ふ、ふむ」
「そしてミシェルお嬢様の事を“雪原のチビゴリラちゃん”と呼び、副団長と同じように崇拝する者が出て来たらしいです。このバナナはその内の誰かが贈ってきたんでしょうね」
「む、むむむむ……雪原のチビゴリラちゃん…」
ファビアンは複雑な顔をしてバナナの木箱を見つめた。
良いイメージで好感を抱いてくれるのは良いとして、偶像化されるのは父親として不満というか不安である。
ミシェルにはもう訓練であったとしても、あまり国境に近付くなと言っておかねばならない……。
ファビアンは木箱に掛けられているリボンを見る。
青いリボン、ミシェルの瞳の色だ。
相手は国境の向こう側からミシェルの瞳の色を見て、それを印象深く感じたのだろうか。
そしてこのリボンを選んだのだろうか……
「むむむむむむ」
まだ早い。まだ早いぞ。
色恋など三十を過ぎてからで良いのだ。
(それは遅すぎ)
ファビアンはその後も「むむむむむむむ」と、
“む”がゲシュタルト崩壊するほど言い続けた。
それから少しして、隣国から騎士団関係者の子女の剣術交流会の申し入れがあった。
その申し入れの書面の中に、
是非ロードリック侯爵家のご令嬢ミシェル嬢の参加も希望する旨が書かれていた。
「む!?むむむむむむむむむむむ!?」
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ファビアン、どうする?交流会。
いくら副団長でも大人は参加できないぞ?
次回の更新は木曜日です。
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