ハノンの初出仕 フェリックス編
王家専属の魔法薬剤師として現場復帰する事が決まったハノン。
今日はいよいよ記念すべき初出仕である。
が、屋敷を出る前からさっそく一悶着あった。
「……なぜ私もあなたの馬で行くのかしら?馬車がいいのだけど……」
フェリックスは毎日騎士らしく、いつも愛馬ダグラス号(青鹿毛、イケメン牡馬)で出仕しているのだが、今朝も屋敷の馬車寄せにダグラス号を用意させていた。
それは毎朝のことなのでとくに問題ないのだが、なぜか馬車が用意されていない。
自分は当然馬車で行くと思っていたハノンはまさかと思ってフェリックスにそう尋ねた。
フェリックスは深みを増したイケメンスマイルでさらりと答える。
「せっかく天気が良く気候も穏やかなんだ。どうせなら相乗りで一緒に出仕しよう。心配は要らないよ、帰りの馬車の手配はきちんと家令に申し伝えているから」
「そんないい笑顔で言われてもわけがわからないわ?なぜ行きも馬車ではいけないの?」
「帰りは帰宅時間が違うから仕方ないとして、行きは一緒なのだから構わないだろう」
「いいえ?とっても構うんですけど?夫婦二人で馬に相乗り出仕なんて聞いたことがないんですけど?」
「ははははっ」
夫の摩訶不思議な屁理屈にツッコミを入れずにはいられないハノンを、フェリックスは朗らかに笑いながら軽々とダグラス号に乗せた。
「ははははっじゃないわよっ?ちょっ……降ろしてっ、恥ずかしいから私は馬車で行くからっ……!」
「今から馬車の用意をしたのでは間に合わない。記念すべき初仕事に遅れてしまうぞ」
フェリックスはそう言ってひらりとハノンの後ろへと騎乗する。
「王宮中の語り草になるくらいなら遅刻した方がマシよ!王妃様や妃殿下方なら理解してくれるわ!」
そう。王宮では有名人の一人であるフェリックスとの夫婦仲を見せつけるように相乗りで登城した日には、その日のうち……どころかものの数時間で王宮中に知れ渡ってしまうだろう。
それなのにフェリックスは然もあらんと曰う。
「語り草になるために相乗りで行くんだ」
「はぁ?どうして?」
「キミが誰の妻であるか、下衆な男どもに知らしめる必要があるからな」
「またそんなこと言って!こんなおばさんに誰も見向きしないって何度言えばわかるの?」
「ハノンこそ何度言えばわかるんだ。キミは自分の魅力をきちんと知っておくべきだ」
「充分に理解している上での発言ですが?」
「ハイヨー、ダグラス!」
「ハイヨー、じゃないわよ!フェリックスのバカ!」
ハノンの抗議も虚しく、フェリックスはダグラスに号令して出発してしまう。
その後も馬上にてハノンはフェリックスに文句を言い続けるも結局はそれも傍から見ればイチャついてるようにしか見えず、案の定王宮中の人間……どころか王宮に繋がる通り一帯の知ることとなってしまった。
図らずしも、いやそれも織り込み済みであったフェリックスの、夫婦仲を見せつけるという思惑通りになった訳である。
そんなこんなでようやく王宮の医務室に着いたハノン。
「出仕するだけで疲れてしまうわ……」
とブツブツいいながら医務室の扉を開けた。
だが扉を開けた瞬間に見つけた人物に、ハノンは驚き過ぎて逆に冷めた目になって相手に尋ねたのであった。
「……なぜ貴女もここにいるの?メロディ……」
「アハハ♡驚いた?ドッキリ大成功~?今日からアタシも王宮魔法薬剤師なの!ヨロチクビ♡ハノン~!マタ一緒に働けて嬉チクビだワ~♡」
当然、ハノンに合わせてメロディも今日が初出仕なのであった。
ツヅク♡
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やっぱりたまには主人公を書かないとね!




