リーリオVSディヴァースタイレンタ その1
ついに迎えた二戦目当日。
昨日十分に話をしたから今から語ることなんてないばかりにコルネリア様と視線だけを合わせてお互いにうなずく。
この国で通用するかはわからないけど昨日勝利を命令された身として敬礼のポーズをとってからリーリオのコックピットに乗り込んだ。
戦闘を開始する定位置へ移動する間にこの間おっちゃんとの会話の中で生まれた疑問について質問してみる。
「あんたは何物なの? 元々リーリオに支援AIなんて搭載されてないっていう話なんだけど」
「エラー、質問の意味が理解できません」
この返答は本当に自分が何者かをわかっていないのか、それともわかっていないフリをして誤魔化しているのか。
コイツは初めてリーリオに乗ってから今日までわたしに不利益になるようなことは一切してないし嘘もついたことがない。
それに、どこかは思い出せないけどこの声を以前聴いたことがあるような気がしてならない。
コルネリア様に聴こえる「声」と無関係ではないという推測が当たっているのなら少なくとも敵ではないのだろう、わたしが来るまでリーリオを動かせなくなったという問題はあったけれど。
「正体を明かしたくないならまあいいわ、少なくともいつもみたいに管制はしてくれるのよね」
「はい、あなたの勝利を支援することがここにいる理由です」
今度はハッキリとした応えが来る、完全に勘でしかないが嘘は言ってないような気がした。
「これよりドリューナル対ルノンガッテの戦いを執り行う、両者指定位置へ!」
相対する二機。
相手の姿は先に公開資料を見た時とやはり同じ印象を受ける。
幼い頃に孤児院のテレビで見たアニメで主人公が乗っていた機体と似ている、気がする。
才能が認められパイロット候補生になった時、実際に乗る機体があの時見たものとはまるで違うデザインをしているという現実を突きつけられて少しガッカリしたんだっけ。
勿論パイロット候補生になる前からあの国で採用されていた機体のことくらい知ってはいたけど自分が乗ることになるって決まった前と後じゃあ感じることも違う。
それを思い返すと目の前の機体に乗っている相手パイロットのことが少し羨ましくなってくる。
リーリオのデザインが気に入らないというわけじゃないけどあれはあれで乗ってみたい。
と、思考が逸れた。
相手の武装は実体剣とシールド、リーリオとほぼ同じ構成。
リーリオもそうだがおっちゃん曰く近接用の武器がエネルギー系ではく実体系が主流なのは、首の切断による一発勝利を狙う際に頭部のコックピットを巻き込まないようにするためらしい。
初戦の記録映像を見た限りでは内蔵武器も使っていなかったから近接格闘主体なんだろう、ついでに飛行もしていない。
つまりセカンドウェポンにもよるけど開始と同時に空中へ退避して射撃主体で攻めれば有利に戦えるハズだ。
「それでは両名とも名乗りを」
「ラスト、乗機の名はリーリオ」
「ユキヒコ・ハルカゼ、乗機の名はディヴァースタイレンタ」
互いに名乗り合う、パイロットの方はまた変わった名前だ。
「それではノーワデイズウォー、スタート!」
よし、空中に……。
「セカンドウェポン!」
開幕からセカンドウェポン宣言!?
なんていう思い切りの良さだよ、だったらこっちも。
「セカンドウェポン!」
宣言する、どうせ今使えるのは一種類だけなんだから出し惜しみする理由もない。
「「装着完了!」」
お互いに装着完了し、改めて対峙する。
向こうは背中にオプションパーツっぽいモノを搭載したな、初戦で使ってたのとは別のやつだ。
対するこっちは増設型の大型シールド。
元のシールドの上から更に大型砲と重厚な装甲が一体となったシールドを装備する、大型砲の威力は初戦でわたしがやらかしたエネルギーガンの最大出力を超える威力らしい。
それでいて勿論一発撃つだけでオシャカになることもない強力なものだが、おっちゃんが「威力馬鹿」と言うだけあって取り回しは悪く連射もできないけど。
そこは元からあるエネルギーガンと使い分けろということだろう、ついでにこれはボムバードバスターシールドという名前らしい。
両名の装着完了宣言が出たことで開幕1秒で止まっていたタイマーが動き出す。
さあ、どう来る?




