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【連載版】すべてにおいて負ける僕が唯一勝利したこと  作者: 「」
ちぐはぐコミュニケーション
45/177

まだまだ終わらない

「で?」

「で? とはなんでしょう?」



 泊まることは承認した。

 聞けば今日は春人さんと冬乃さんかなり遅くなるようで『娘のことをよろしく』と、軽いノリのメッセージが届いてた。

 そう、それはいい。



「なんで着替えてもチアからチアなんだよ」



 汗もかいているからと、帰ってからお風呂を沸かした。

 レンタルだからクリーニングに出す必要があるからと言って、夏菜は着替えずに下校していた。

 彼女から入るように伝えたが、やることがあると言ってたので僕から入浴して、そのあとの風呂上がり夏菜の姿。

 白いチアコスから、色違いの紫。



「もしものために買っておいたんですが」

「なんで買ったの?」



 というかいつ持ち込んだの……。

 通販か。

 夏菜名義で何か届いてたのを思い出した。



「覚えてないんですか? 先輩が勝ったらチアコスで部屋の掃除をするっていう罰ゲーム」

「いや、僕負けたし」

「だからもしもの場合といった筈です」

「本当に?」



 目をそらす夏菜。

 彼女が自分の勝利を疑うはずがない。



「本当に?」

「私が絶対に勝つと思ってました」

「なんで買ったのさ」

「色仕掛ですかね?」



 目を合わせてくれない。



「僕がそれに惑わされると?」



 まぁ、実際見てる分には楽しめる。



「ですよね。知ってました」

「なら何故買った」

「案外安いんですよこれ」

「それで?」

「こんなもので先輩が釣れたら安いものです」

「そうか」



 声色は変えず、いつものダウナー口調。

 なのにテンションは高い。

 彼女と親しい間柄でないと判別出来ない程度に。


 でも実際釣れているから。

 彼女の判断は間違っていない。



「お腹冷えるよ」

「大丈夫です」



 やたらサイズの合っていない黒いパーカーを羽織る。

 ファスナーを閉める気配もなく、お腹がばっちり見えたまま。

 というか、このパーカー前に夏菜に貸したまま、行方不明になってた奴、



「それ僕の、だよね?」

「はい。私は先輩のモノですね」

「そのネタ引っ張るのやめてくれ……」

「先輩が慣れるまで擦ります」



 夏菜はこの言葉を呑み込んで自分なりに消化したようだ。

 本当に引き摺っているのは僕の方。



「まぁいいや。それあげるよ」

「いいんですか?」

「同じのあと2着あるし」



 3着持っていて、夏菜が着てるのは1番新しいやつ。



「2日連続同じの着てるなって思っていましたが、そういう絡繰でしたか」



 たまに洗濯してくれるが、無断で僕の衣装ケースを開けることは彼女はしない。

 何かするたび確認を取ってくる。

 流石に冷蔵庫など彼女テリトリーになりつつある場所は、確認を取らなくていいと伝えてある。

 それでもたまに確認してくるのだけれど、素の夏菜の性格が律儀なところをあらわしていて微笑ましい。


 立ったままなのは疲れたのかソファで寛ぐ。

 僕も二つコーヒーを淹れてソファに。

 一つには砂糖とミルクを入れてある。



「紅茶切らしてて悪いけど」

「いえ、ありがとうごさいます」



 からかうことも、からかわれることもなくなる。

 あれはあれで楽しい時間だけど、このまったりとした時間も好き。

 


「あ、そうだ先輩。渡すものがありました」



 ソファに膝をつき少し離れた場所にある鞄を拾う。

 チアの衣装ではスカートは短く、お尻はこちらを向いていて完全に下着が見える。

 レースのついた、やや光沢のある白いショーツ。



「はぁ? なんでアンスコ履いてないの?」



 やらかした。

 夏菜が泊まるようになってから気をつけていた。

 といっても、彼女はあまりスカートを履かない。



「あ、すみません。自分でコスプレしてたの忘れてました」



 すぐに顔を逸らすが、もう完全に見てしまった。



「あと、流石にお風呂上がりですし、踊って見せるわけでもないので」

「そりゃそうだ」

「まぁ、えっと。役得? 不慮の事故ということでお互いに忘れましょう」

「下着は恥ずかしいんだ」



 あれだけ挑発してくるのに、見られたと気づいたら。

 耳もだけど、顔まで赤い。



「見られてもいいように下着にも気を使うようにはしてますが、不意に見せるのは恥ずかしいです」



 気まずい雰囲気に、タイミングよく鳴るチャイムの音。

 モニターを見れば出前の配達員。

 体育祭の後ということもあって今日は帰宅中に夏菜と相談しあいピザを頼んでいた。

 僕は棒倒しがなければまだ体力があったのだろうが、夏菜は激しい運動のあと。

 


「今、出ます」



 パタパタとスリッパを鳴り響かせ玄関へ向かう彼女の姿。

 ガチャリと扉を開く。

 困惑しつつ、赤い顔の配達員。

 パーカーを着てるとはいえ、見目麗しい女の子のコスプレ姿。



「待て、せめて前閉じろっ」



 どうみても遅かった。



「あ」



 久々に彼女の抜けているところを見てしまった。

 お金を払って商品を受け取る。

 終始出前の人は苦笑いを浮かべたままだった。



「先輩責任とってください」

「結婚しろってこと?」

「はい」

「無茶を言うね。籍をいれるだけなら」

「変な反応ですね」



 今でも通い妻みたいなことしてるし、本来の夫婦みたいなことをしなければという条件付き。

 夏菜はまだ、15歳。来月で一つ増えるがそれでもあと2年の猶予がある。

 不誠実な言い回しだけど、冗談の範疇。

 その証拠に彼女は眉一つ動かさず、言葉を返してくる。



「このよくある台詞、思いついて言ってみたかっただけですが使えませんね。先輩相手だと特に」

「どういう反応が欲しかったのさ」

「今のが先輩らしいので、そのままで。一応言質もとれましたし」

「夏菜、やりなおそう」

「まだ付き合ってもないですが」

「もしかして僕はめられた?」

「さぁ、どうですかね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 籍を入れたらほぼ八割は陥落したようなものよな… 同棲して、あちらの両親が容認して、しかも職場は相手の実家という時点で5~6割落ちてはいるようなものではあるけれど。
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