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【連載版】すべてにおいて負ける僕が唯一勝利したこと  作者: 「」
ちぐはぐコミュニケーション
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障害物リレー

 Tシャツに着替えて司と合流する。

 僕を追いかけて来ようとしてた彼女も、自分の出番が迫っていたために仕方なくといった感じで諦めて去っていった。

 今日の彼女はいつも以上に積極的。

 なにがそうさせたのかはわからない。

 いや、僕が図に乗ったのが良くなかった。

 あそこで彼女のテンションを上げた。

 これからは慎重に彼女を扱うしかないな。

 僕も今日は気が抜けない。



「おかえり渉。って、なにその変なシャツ」

「なにって、普通のTシャツだけど」



 デフォルメされた鶏の絵柄。

 ただ、鳴き声が『わんっ』って書かれている。



「いや、お前の感性がわからない」

「夏菜にも言われたことあるから、相当なんだろうな……」



 でも可愛くないか? これ。



「お前の服のセンスが上がったら市ノ瀬ちゃんがコーディネートしたんだろうなって」

「そこまでか」



 ちょっとだけ自信を失う。

 夏菜も最近はオシャレになっているが、少し前までボーイッシュな服装を好んで着ていた。

 ボディラインが出ないように1サイズ以上のパーカーを特に愛用していた。

 いや、今でもパーカーは高頻度で着ているな。

 僕のTシャツが貶されている間に、一年の障害物リレーは始まっており、既に何組か競争を終えリラックスしている。

 しかし、目立つなあの格好。

 同じことを思ったのか司も夏菜のことを話題に出す。



「どこにいても、あの格好だとすぐわかるな」

「うん」



 注目を集めていることもあるだろうが、その中でもとりわけ目立つ服装。

 太陽に光を浴びて輝いて見える。

 風が吹けばスカートがふわりと舞う。

 片手で髪を、もう片方でスカートを抑える。

 ふとした瞬間の仕草が絵になる。


 2、3組が出場したあと、ようやく夏菜がスタートラインの前に立つ。

 去年僕も障害物リレーに参加したけれど、やはり去年とは種目が違った。

 最後の借り物はずっと続いているので据え置きだった。


 夏菜はスタートダッシュを決めて1番最初にネットを潜る。

 ただ一人だけスカートということもあり、完全に正面からはアンスコが見えていそうな角度でしゃがみ込んで進んでいく。

 ネットを抑えている男子たちは役得かもしれない。

 僕の側から見える男子は完全に鼻が伸びている。

 彼女もそれに気付いてるようだが、気にした様子はない。

 ならば僕も気にする必要はない。


 ネットを抜けた先。

 パン食い競走。

 流石に衛生上、袋がついたまま。

 ただこれ。

 男子に合わせたままの高さ。

 夏菜の身長は平均よりやや低い、なかなか取れないようだ。

 パンを支えている洗濯ばさみ、それに繋がっている紐の中央。

 1番低い位置のものを懸命に取ろうとして、何度かジャンプを繰り返している。

 棒を支えている男子も下げてあげればいいのに。


 あ、いや。

 理解した。

 スカートも捲れるし、胸も上下に大きく揺れる。

 これは怒ってもいい。

 けれど夏菜は、一度大きく下がり助走をつけて大きく飛んだ。

 元バスケ部。

 助走があれば、パンに届く。

 口を大きく開いてパンを包む袋の端をしっかりと咥えた。

 時間がかかってしまったことで、順位を少し落としてしまった。

 ただ少しだけ勝ち誇った笑み。



「男ってそこまで見たいものなんかね」

「まぁみたいだろ」

「へぇ」

「渉は市ノ瀬ちゃんの裸見放題だろうけど、他の男子はそうもいかないだろ」

「見放題なわけないだろ」



 今まで見た中で、今のコスを着ている状態が1番露出が高い。

 しかし違和感があった。

 どこかで夏菜の下着姿を見た記憶がある。

 思い出そうとするものの、諦めた。

 ぼんやりとした物しか思い浮かばない。


 次の種目は一人で済む物で夏菜は1位に返り咲く。

 そして最後の種目、借り物競走。

 箱に入れられたお題を無作為に選ぶ。

 判定は緩いものの、お題は学生の適当なノリで入れられたものだから仕方ない、僕らのクラスにも用紙を渡されて書かされる羽目になった。

 借り物競走ではあるが、半分は連想ゲームにもなっている。


 さて、夏菜はというと。

 目の前にいた、少し目を離した隙に。

 有無を言わさず腕を掴まれて引きずられる。

 ちょっとだけクラスの連中が沸いた。

 黄色い悲鳴も聞こえる。



「もしかして、またペット?」

「違いますよ、今回はまとなお題でした」

「なんだったの?」

「主人です」

「ってことは夏菜は僕の嫁ってことになる?」

「いずれ。……去年の先輩のペットに比べればまだ可愛いものじゃないですか」

「それはたしかに」

「納得したところで、自分の脚で歩いてもらえますか?」



 今回の審査員は、去年と同じ人。

 ここから僕は借りモノとして黙っておく。



「なんかデジャヴ。いや、去年とまったく同じ二人か……」



 どうやら覚えていたようだ。



「お題を見せてくれるか」

「はい」



 手のひらサイズの紙切れを審査員に渡す。

 去年同様、複雑な顔をしている。



「いや、うん。オッケー。ゴールしていいよ」

「どうも」

「若い頃から特殊な関係だけど仲良くな、あんまり羽目外すなよ」

「はぁ……わかりました」

「じゃ、飼い主の君もペットだとしても女の子なんだから大事にな」

「「……え?」」



 僕と夏菜は見合わせる。

 主人。

 旦那と妻みたいな意味で捉えていたが、主人とペットとも言い換える。

 去年も同じ審査員だから起きたこと。



「「なるほど」」



 頷き合いゴールテープを切った。



「それではご主人さま、おつかれさまでした」

「やめろ……」

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