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暴露大会in学食

「結論から言うとさ、俺。雅のこと好きなんだよ昔から」



 真剣な顔は変わらず司は告げた。

 少し照れはあるだろうが、そんな感情をおくびにも出さない。



「神楽先輩? 幼馴染みだっけ」

「そう。付き合い長いし、気付いたら好きになってた」



 司のことはあまり知らない。

 顔も良くて性格も良い。

 それだけ知っていればいいと思っている。



「市ノ瀬ちゃんがそうであるように、雅も天才肌なんだよ。一つ歳が違うだけなのに何でも出来て、美人だし憧れてた」

「でも司、彼女とかいたじゃん」

「前に話したこと覚えてるか?」

「うん」



 いつだったか、司に恋愛相談をしたことがあった。

 多分そのこと。



「雅は好きな人がいて、それは俺じゃない。だから、雅のこと忘れようっていうか、想わないようしようと別の誰かを好きになろうとしてたんだよ」



 明かされる彼の恋愛遍歴。



「結局、無理だったってことだよね」

「そ。だからすぐ別れる。相手にもバレバレでさ、良く喧嘩になってそのままってこと。悪いことしたなって罪悪感だけ増えるし、雅のことを想う気持ちも積み重なる。一緒にいるだけでもっと一緒にいたいって気持ちが溢れるんだよ」

「司って不器用なんだね」



 一つだけ合点がいった。

 だから司は帰宅部なのだ。

 民族音楽研究部にあまり顔を出さない。

 僕を含めた3人で同好会になれたのに、ならなかった。



「お前に言われたくないけど」



 むず痒い。

 人の恋の話。

 特に仲の良い友人の話は、どきどきする。



「だから結局、渉も市ノ瀬ちゃんのこと好きなんじゃないか」



 似たような関係性なのはわかった。

 けれど境遇が違う。

 だから僕も司のようにはなれない。



「司はさ、神楽先輩をどうしたい?」

「何の質問だそれ」

「もし付き合えたとしたら」



 これはちょっと気になる事。

 夏菜と付き合ったらと考えると思い浮かぶビジョン。

 未来をキャンパスと例えるなら、僕の絵は真っ黒。

 色々と想像するもの違うとして塗りつぶして今の色になった。



「デートしたい、手を繋ぎたい、唇を交わしたい、肌を重ねたい、笑ってほしい、悲しませたくない。色々だよ。単純な感情だけじゃないのは確かだよ」



 ぽつりと呟くように夏菜は言う。



「わかります」



 笑っていて欲しいとか、悲しませたくない。

 それは同意する。

 二人で遊びに行くのも楽しい。

 キスしたり肌を重ねたいとかは、思わない。



「夏菜も同じこと思っているのか?」



 迷わず。

 力強く。



「はい」



 片思いする二人。

 同じことを考えている。

 麗奈ちゃんはどうなんだろうか。

 目を配らせてみる。



「私ですかっ」



 指名した形になったからか、少し大げさに驚く。



「私は渉先輩寄り性質ですね。あ、勿論夏菜陣営なので敵ですよ。親友を応援してますからっ」

「僕寄り?」

「はい、というよりは渉先輩と司先輩のハイブリットですかねぇ。ま、この際だから私も話しますかね~」



 今度は僕らの視線が麗奈ちゃんに向かう。



「ま、私は見た目通りの恋愛観してました」



 夏菜が言っていた、ギャルっぽい見た目のギャル。

 ギャルの恋愛観なんて僕にはハードル高そう。



「告られてフリーならそのまま付き合っちゃうタイプです。だから本気で恋愛なんてしたことないし、中村みたいに相手が一種のステータスだと考えていた時期もありますね。年上だと点数が高いみたいな」



 麗奈ちゃんが夏菜を見つめる。



「まぁ、これは墓場まで持っていくつもりだったんだけど」



 女子高生のセリフとしては重すぎるだろ。

 しかもギャルが言っている。

 違和感が半端ない。



「なに? 私に関すること」

「うん」



 少しだけ言いづらそうにするものの、しっかりと言葉を紬ぐ。



「もともと夏菜に近づいたのも、ステータスの一種だと思ったんだよねぇ。孤高の天才の唯一の友達みたいな」

「そう」

「私は特別だぞって」



 なにも感じていない夏菜の返事。



「でもねぇ、話しているうちにさぁ。夏菜って裏表ないし女子特有の上辺だけの会話をしなくて心地よくてさ、ちゃんと友達したくなったんだよねぇ。んで、渉先輩たちの中学の卒業式の日に、夏菜が告白されてる現場にいてさ」



 そんな日にも告白されていたのか。

 僕を呼び出しておいて、来なかったのはそれか。

 待ちぼうけを食らって、用事もあったから夏菜を待つことなく学校をあとにした記憶がある。

 その時は直接、卒業おめでとうって言いたかったって。

 あれは誤魔化しだった。



「自分の好きな人を好きだと言って、きっぱりと断る夏菜を見て、憧れちゃったんだよ。私もこうなりたいって、ちゃんとした恋愛したいって。ま、いい男見つかんないだけど。幻滅した?」

「昔の麗奈は知らないけど、今の麗奈と一緒にいるのは楽しいよ」

「夏菜かわいいっ」

「はいはい」



 抱きつこうとする麗奈ちゃんを夏菜は片手で制する。

 顔が半分潰れてしまって、麗奈ちゃんの顔ちょっぴりブサイクに。

 いい友達に恵まれたようだ。



「僕寄りなんかじゃないよ」

「どうしてです?」

「恋愛したいって思って、変わりたいって思ってのことでしょ」

「まぁそうなりますね」

「僕は恋愛のことよくわかないし、結構今の自分が気に入ってるからね。その結果一人なら、一人でもいいやって思ってるから」



 でも、そうだな。

 夏菜とは一緒にいて。

 彼女のおかげで、隣に誰かいるっていう幸せと楽しさを知った。

 僕は変わりたくて変わったんじゃない、変えられたのだろうと。



「僕よりすごいよ、尊敬する」



 夏菜に恋愛というモノで勝負を挑まれた。

 だから今の僕がある。

 昔とくらべて少しだけ考え方も変化している自覚はある。

 それでも、まだ僕は僕だ。

 成長出来ていない。

 小学生、中学生のまま。


 今こうして学んでいる。

 でも、どの女の子よりも夏菜のことは好きかもね。

 身近にいるからだろうか。

 司も言っていた、気付いたら好きになっていた。

 そういうこともあるかも知れない。

 今までの僕と比べると良い変化。



「やばっ。夏菜が言ってた素で恥ずかしいことを平然と言う渉先輩の良さわかったかも」

「麗奈」

「大丈夫だって、夏菜と親友になる前だったらわかんないけどぉ。なんてね、二人の間に入り込めそうもないし、私じゃ渉先輩は振り向かないって」

「先輩も先輩です。私の目の前で他の女子を褒めないでください」



 矛先がこちらに向いてしまった。



「嫉妬?」

「はい。嫉妬です」

「ごっほ! げほごほっ」

「先輩汚いです」



 こういう素直な言葉が本当に僕の弱点だったようだ。

 喉が詰まる。

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