真剣勝負
「それは告白と受け取って良いのか?」
夏菜はまた僕から距離を取ると真っ直ぐ見つめてくる。
手を伸ばせば触れ合える距離。
彼女の表情は分かり辛いが、長い付き合いで会得していたためそんな微妙な変化に気づく。
少し緊張した面持ち。
こくりっと小さく頷く。
「改めて聞きます。私のことどう思いますか?」
最初に聞かれたのは中学の部活の後。
次に聞かれたのはその年の夏祭り。
前はなんと答えただろうか。
僕が無言で逡巡していると、夏菜は先を促す。
「素直に答えてください」
「生意気でやさしくて可愛い女の子」
「聞かない間にグレードアップしてますけど、私のことをそういう対象としては見れてないですよね?」
「そうだね、ごめん。付き合うっていうことは考えてない」
「異性として見てくれていますよね?」
「うん」
「そうですか」
最初から僕の答えを予見していたのか、夏菜は傷ついた様子も見せずに次の言葉を紬ぐ。
「先輩風に言うなら、勝負をしましょう」
「勝負?」
「勝負内容は恋愛。先輩が私に落ちたら私の勝ち。私が先輩を最後まで落とせなかったら先輩の勝ち」
「最後までってのは?」
「そうですね。先輩が誰かを好きになって交際を始めたら。で、どうでしょうか」
「夏菜がそれでいいのなら」
これは僕に有利な勝負。
言ってしまえば僕の二択で決まってしまう。
生殺与奪の権利を僕が握っているようなものだ。
物騒な言い方だけど。
僕が本当に好きな人が出来るまで、2,3年掛かったとしたら?
僕かと付き合う保証はないけれど、それでも長い時間が掛かるだろう。
貴重な青春を捨ててしまうことになる。
「今回も賭けをしましょうか。勝負内容が勝負内容です。ただ、勝ったほうが一つ希望を出す。いつものですね」
「ベタだね」
「三回目ですよ。ボキャブラリーないんですか」
「一回目は夏菜が言ったんだけどね」
「揚げ足とらないでください。……真面目に聞いてくださいよ」
「すまん」
少しすねて見せる彼女。
けれどすぐにいつもの調子に戻り、真剣な表情に変わる。
「先に言っておきます。私が勝ったら」
少しの間。
夏菜が生唾を飲む。
僕もつられるように緊張し見守る。
風で雲が流れ、隠れていた満月が顔を覗かせた。
月明かりが照らし彼女にスポットが当たる。
桜の花びらが舞い散り、贔屓目にみてもかなりの美少女に育った彼女。
一枚の絵として完成されたように見えた。
「先輩の人生を貰います」




