表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/177

もうひとつ

「よくそんなに食べれますね」



 約束した通り土曜日の昼下がり。

 夏菜と洋菓子店まで足を運んだ。



「甘いものは別腹っていうじゃん」

「限度がありますよ、限度が」



 シフォンケーキに始まり、ザッハトルテ、ミルククレープにフルーツタルト。

 マカロン数種類。

 完食済み。



「これも食べます?」

「いいの?」

「はい、見てるだけで胸焼けしそうで」

「ありがとう。夏菜、最高っ」

「いいから、早く食べてください」



 苦笑しながら皿を差し出してくれる。

 夏菜の半分食べた、レアチーズケーキも加わる。

 一口でいけそう。



「子供なんですから」



 手を組み、橋を作って顎を乗せる。

 そう言うわりに嬉しそうだ。

 ありがたく頂戴する。



「そういえば夏菜」

「はい」

「中村って覚えてる?」

「誰ですかそれ」



 思い出そうとはしている。

 その証拠に癖がでていた。



「中学一緒だった、バスケ部の中村修吾」

「うーん。ヒント下さい」

「もう答えてるんだけど、卒業してからそんな経ってないよね?」

「私、父さんと一緒で興味ない人にはとことん興味ないんですよね」

「知ってる」



 誰かと遭うたびに僕に訊ねてくる。

 最初は冗談かと思っていたが、本気だった。

 司や神楽先輩は覚えていた。

 しかし、春人さんの譲りだったのかそれ。

 客の名前をしっかりと覚えているから、春人さんはそんな風には見えなかった。



「ほら、僕のマンションのエントランスで夏菜と一緒にいたツーブロックの彼」

「……あぁ、あのストーカー」



 思い出してくれたようだが、苦々しい。

 突然沸いてきた虫を見るような、嫌そうな顔である。

 


「そういう状況だったのあれ」

「はい。しつこい人だったのを思い出しました」



 気持ちを切り替えるためか、紅茶をあおるように飲み込む。



「それでその人がどうかしたんですか?」



 自分から聞いといて、答えるべき返事が見がらない。

 本当にストーカー行為していたのなら尚更。

 喧嘩を売られた、夏菜のこと好きみたい。

 どれも言えず。



「うちの高校のバスケ部にいたから、なんとなくだよ」

「そうでしたか」



 興味なさそうである。

 実際興味ないんだろう、公言しているし。


 昨日の一件で中村からメッセージが届いた。

 中間後、体育祭の前に勝負をしてくれ、と。

 バスケ勝負。

 1on1。


 誰に聞いたやら、僕が勝負好きということをどうやら知っていたようだ。

 ブランクがあり、相手は現役。

 二つ返事とはいかない。

 だけど、夏菜のことをモノ扱いしたのが未だに腹に据えかねる。

 打ち負かしたい気持ちがあり、承諾した。


 それでも、勝負と言われると心躍る僕もいたり。

 夏菜には伝えないでおこうと今決めた。



「どうしてバスケ部に?」

「体育祭あるし、運動しとかないとって思って」



 嘘は言っていない。

 ただバスケじゃなくてもいい。



「なるほど」

「夏菜がよければ、ちょっとだけやらない?」

「いいですけど、今日はちょっと」

「あぁ、ごめんね」



 私服姿。

 ショートパンツはいいとしても、どう見ても激しい動きが出来る格好ではない。

 ヒールの高い靴でバスケなんて足首を心配する。

 ストッキングが幾らするかは知らないが、断線する。



「明日はバイトですし、月曜日からバイトのない日の放課後であれば」

「応援の方は?」

「前回のは顔合わせだけで、本格的に始まるのは5月下旬からだそうです」

「夏菜のチア楽しみだね」

「……本当に楽しみにしてくれてます?」

「うん」



 一人だけパフォーマンスが良くて、注目されそう。

 他の頑張っている生徒が可哀相まである。

 夏菜のやる気次第だけど。

 ただ、普通にやっても彼女のことだ仕上げてくる。



「そうですか」



 ちょっとだけやる気に満ちた顔。

 チアの話しになると黄昏れていたけれど、今は唇をぎゅっと閉じて僕を見る瞳は力強い。



「運動もそうだけど、勉強もしないといけないんだよね」

「中間ですからね」

「そうなんだよ、ちょっとずつ進めてるけど」



 試験後の勝負が頭によぎり、集中力に欠ける。



「やる気ないですか?」

「そうでもないけど、ちょっと今回は集中出来てないかなぁ」

「久しぶりに点数勝負しますか? これなら先輩はやる気出すんじゃないですか」

「また何か賭けようか」



 勝負する回数は圧倒的減ってしまったからか、最近はやる度になにかを賭けることがスタンダードになってきた。

 僕は勝てたことがないから搾取される側でもあるけど、たまに夏菜の気まぐれで負けても僕の願いを叶えてくれることがある。



「それでもいいですけど、私本気で勝ちにいきますよ」

「負けるつもりはないけど」

「1年と2年では科目が違いますし、今回は必修5科目の合計点ということでどうでしょうか」

「わかった」

「私が勝ったら、屋上で昼食です」

「二人で?」

「もちろんです」



 これは勝たねば。

 見世物になりたくはない。

 屋上で食べているカップル、特に男子生徒は噂になる。

 男子が珍しいってこともあるから余計に。



「先輩は何を望みます?」



 屋上で昼食と同等の物。

 なにがあるだろうか。



「チアコスで僕の家を掃除とか?」

「……変態」



 深い意味はなかったが、改めて考えると言ってることはその通りだった。



「流石に持って帰れないと思いますが」

「それもそうか」



 それならばどうしようか。

 夏菜にやってもらいたいこと。



「大丈夫です」



 スマホで何か調べていたようで、検索結果がよかったのかテーブルにスマホを置く。



「負けるとは思いませんが、もし負けたらコスプレをして先輩の家の掃除しますよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ