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6月に向けて

 ロングホームルーム。

 議題は体育祭。

 今はまだ5月だが、一ヶ月後に体育祭が開催される。


 去年は障害物競走とリレー、あと1年全体の出し物に出た。

 障害物競走の最後、借り物競走が混じっていたが、お題がペットということで、犬連れの保護者がいないかと探してみたもののおらず、結局見学に来ていた夏菜を連れていってもオッケーになったから、結構ぬるいイメージ。

 実際、猫科みたいな性格してる。

 捕食者という。

 あとで散々夏菜に怒られたのだが。


 2年の種目はリレーに綱引き、去年はなかった棒倒し。

 昔は3年の騎馬戦と同様に棒倒しがあったそうで、危険だからって理由で外されたらしい。

 が、今年から復活した。

 危険なのは変わりないが、騎馬戦もどうせ危険だからということで復活したらしい。


 一人、最低一回は競技に出ることになるのだが、人数の関係上複数回出場することとなる。

 あと午後の昼食に前に行われる応援合戦もあり、それに参加する人は確定で一回の参加。


 司と僕がリレー、そして棒倒しに参加することが確定した。

 部活に入っていない人間の宿命。

 部活対抗リレーとかもあるようで、部活が盛んなこの学校では帰宅部のほうが珍しい。

 僕ら2人を除けば、帰宅部はあと4人しかいない。

 彼らも棒倒しと綱引きに振り分けられている。



「それでは、リレーから順番を決めたいと思います」



 委員長である三枝さんが仕切る。

 去年も同じクラスだったから知っているが、責任感の強い子。

 その証拠に去年のリレーを任されて、バトンを落としてしまい号泣していた。

 去年は去年のことして、今年も彼女に委員長を任せておけばいいやってという風潮がある。



「アンカーは柊君でいいですか?」

「え?」



 急に指名されて驚く。



「去年の活躍を見ればわかる通り、柊君は脚が早いので」

「僕、帰宅部ですよ」



 そう言ってみたのだけれど、陸上部含めて同意されてしまった。



「了解っす……」



 逃げ道を塞がれた。

 陸上部員が言うのであれば引けない。

 アンカー確定。

 出るからには勝ちたいから頑張るけどさ。


 男子女子交互に決まっていく。

 僕の前は、また三枝さんでその前が司。

 司もなんだかんだで運動神経いいから、今年は勝てそうだな。

 別のクラスが陸上部で固めてなければ。



「渉、頑張れよ」

「司も頑張るんだよ」



 他人事で言う司のせいで少し不安を覚えた。

 僕の出る種目については序盤で全て決まってしまったので、あとは自由だ。



 ※



「で、そっちが?」



 昼休み、中庭に司とともに訪れる。

 中庭も結構広い作りをしているのだが、とても目立つ二人組が居たのですぐにわかった。



「どうもっ、初めまして橋田麗奈です。夏菜の親友やってますっ」

「あ、うん。よろしくね橋田さん。僕は」

「柊渉さんですよね知ってます。夏菜から全部聞いてますから、あと麗奈でいいですよっ」



 とても元気な子だった。

 開幕からパンチを貰ったように、引き気味になる。

 司とも自己紹介を終えて、夏菜の用意したシートに腰を落とす。

 手作り弁当二人にコンビニの袋二人。

 ちょうど女子二人に男子二人それぞれ。



「夏菜、渉先輩に作ってあげなかったの?」

「先輩が昨日、コンビニで買うって連絡をしてきたから」

「何にしようかって悩んでたじゃん」

「それを今ここで言うのやめて」

「自分で作ってくるからって言えばよかったじゃん」

「そうだけど、迷惑かなって考えるよ」

「渉先輩のことになると日和るねぇ~」

「からかうのやめて」



 ここまで夏菜が押されているのも珍しい。

 仲睦まじい光景と言えるだろうか。



「眼福眼福」



 隣にいる司はおっさんみたいなことを呟く。

 気持ちがわからないわけではない僕。

 見目麗しい女子二人が突きあっている。

 というよりは、橋田さんが一方的にって感じだ。



「先輩も止めてくださいよ」



 助けを求める彼女に、手を合わせる。

 合掌。

 あの中に入っていける勇気は僕にはない。



「後で覚えておいてください」



 怖い。

 目が本気。



「これあげるから」



 財布から洋菓子店の割引券を取り出してみる。

 最近出来たばかりのお店で、店内でも食事が出来る。



「……いつ行ったんですか?」

「昨日、バイト前に」

「一人で?」

「司と」



 僕ほどではないが、司も甘いものが好きだったりする。

 誘う話は司とも出ていたが、早く帰るとのことだったから誘わずにいた。

 これには司も苦笑い。

 いや、楽しんでるな。



「シートとかお弁当とかの準備してたんですよ。最低ですよ先輩」

「すんません」



 と、橋田さんが夏菜に耳打ちをする。



「そういうことなので、今週の土曜連れて行ってください」

「えっと土曜は」

「バイト休みですよね」

「うん」

「じゃ、決まりで」

「うっす」

「先輩の奢りですよね」

「……」

「ですよね?」

「……はい」



 まだ食べれてないメニューもあったから、まぁいいか。

 僕ら二人のやり取りを司も橋田さんもにやにやとして見守っている。

 いつの間にか、二人は意気投合していて楽しそう。


 食事の終わり、ただの談笑タイム。

 今、タイムリーな話題といえば体育祭のこと。



「先輩今年もリレーでるんですね」

「うん、なんか勝手に決まってた」

「応援してますよ」

「夏菜は何に出るの?」



 口ごもる。

 事情を知ってそうな橋田さんに目を配る。



「応援合戦の1年代表に選ばれてましたっ」

「あぁ、そういう……」



 チアリーディング部監修のもと本格的なダンスに女子はチアコスになる。

 ちなみに代表だけ。

 女子の部と男子の部とわかれている。

 男子は昔ながらの学ランだ。

 体育祭中はずっとその姿。

 男子は暑さ、女子は露出。

 ご愁傷さまである。



「私は嫌だったんですけどね……」



 遠い目をしている。



「男子から熱い投票のもの2分1以上の投票の結果ですねっ」

「楽しそうだね橋田さん」

「だから麗奈でいいですってば、まぁ想像してくださいよ、夏菜のチアコス」

「似合うだろうね」



 健康的な肢体を晒して、踊る。

 注目が集まるだろうな。

 僕も見てみたい。



「ですよね」

「麗奈ちゃん嬉しそうだね」

「はい。楽しみが増えましたっ」

「もう、諦めてますよ……。あとは障害物競走に出ます。去年の先輩と一緒ですね」

「内容まで一緒じゃないと思うけど」

「……にゃん」



 唐突に猫手にした夏菜が僕を突く。

 去年の恨みだろうな。

 猫耳を装着した夏菜を連想して、悶える。

 やばい、結構破壊力高い。

 片手で顔を隠し俯きながら、夏菜に懇願してみる。



「忘れてよ」

「忘れてましたけど今日思い出しました。先輩のペットですよ」

「本当にごめんって」



 また傍観者に徹していた二人。

 本当に楽しそうに眺めてくる。



「「ご馳走さま」」



 ほら、仲良し。

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