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今宵は一人、ベッドの上で

 放課後になり数週間振りに民族音楽研究部に顔を出した。

 借りていたスコアブックを返しに来たついでに、新しい物を借りに来た。

 部活として認められていないのに部室があるのは本当に奇妙だ。

 職員室に鍵がないことから、神楽先輩がいるのは間違いない。

 ちょうど良いから、何曲かオススメを聞いてそれを練習するのもいいかもしれない。



「お疲れ様です」

「あぁ柊くんか、いらっしゃい」

「これ返しに来ました」



 夏菜のトートバッグを借りていて、その中にスコアブックがある。

 掲げてから中身を取り出して、無作為に置かれている本棚の中に押し込める。



「一ノ瀬さんは?」

「今日から林間学校ですよ」

「あぁそうだったな。隣にいるものだと思っていた」



 セットで考えられている。

 僕がオマケなのか、夏菜がオマケなのか。



「神楽先輩のオススメの曲もついで練習しようと思うんですが、何かあります?」

「柊くんはもう好きなように弾いたらいいとは思うが、そうだな……」



 椅子に座ってベースの手入れをしていたが、中断して本棚から一冊のスコアブックを取り出して捲る。



「これとかどうだろうか」



 『Rage Against the Machine』

 これは僕も知っているバンドだ。

 ギターをまるでDJの様ようにスクラッチしたりする演奏をやってたりしてた筈だ。

 歌詞も結構過激的だった記憶がある。



「Guerrilla Radioとか柊くんがハマリそうな曲だと思う」

「聴いてみます」



 鞄からワイヤレスイヤホンを取り出して、耳にセットする。

 スマホとリンクしたのを確認して動画サイトで検索。

 イントロからスカッとするようなパワーのある曲だ。

 確かに僕好みの曲だ。

 途中まで聴いて、神楽先輩に感謝を告げる。



「一ノ瀬さんにも暇なら遊びに来てくれと伝えてくれ」

「神楽先輩、夏菜の連絡先知ってませんでしたっけ?」

「私が言うよりも君が言ったほうが、来るだろう」

「どうっすかね」



 中断した楽曲を再生しながら、空いてる席に座って雑誌を拾い上げて読む。

 神楽先輩は手入れにもどったようで、レモンオイルの匂いが部屋に充満する。

 この部活は各々好きなことをやることになっている。

 学園祭やなにか催しがない限り、一緒に練習することはあまりない。

 昔はライブハウスで演奏していたりしたらしいが、ライブハウスの営業自体が夜遅いこともあって、ご時世的なものでなくなってしまった。

 土日の夜なんか集客が見込めるバンドしかやっていないし、ノルマなんかが絶対にあるため、学生には荷が重い。

 少し遠くに行けばライブカフェなんかもあるらしい。


 しばらく部室でゆっくりしていが、聴いているうちに早く練習がしたくなって、神楽先輩に挨拶を交わして部室を後にした。

 自宅戻り、着替えもせずギターをアンプに繋げる。

 ボリューム設定を確認してから電源をいれた。

 ベッドに座り、ギターを抱える。


 夏菜といる時間も楽しいが、一人でいる時間も僕は好きだ。

 彼女もそれを理解しているのか、僕と同じように一人でいる時間を大切にしているのか全く絡んでこない日がたまにある。


 新しい楽曲を練習するのはわくわくする。

 というよりも、新しい何かに高揚感を覚える。

 ゲームを買ってきて、起動した瞬間に近いだろうか。


 無の時間。

 考え事は消えて、ひたすらにかき鳴らす。

 あるのは稚拙な演奏。

 まだまだ音楽と呼ぶには程遠い。

 何度も同じフレーズを練習しては、次に繋げる。

 満足がいくところまでやると、1から始める。

 それの繰り返し。

 繋げて演奏して、ミスがあればまた最初から。


 小さな爆発するような音がして、ハッとする。

 ギターの弦が切れた。

 弦が古くなっていたのか、まだ僕のストロークが不安定なのか。

 新しいのに張り替えようとするが、ちょうど2弦だけ在庫を切らしていた。

 どうせなら、まとめて張り替えようと決める。

 今日の練習はおしまいにし、伸びをして立ち上がると空腹を覚える。

 

 何か作ろうかと考えながら部屋を一度出るが、リビングにある掛け時計を見やると日付が変わっていた。

 今日は夕飯も抜きだ……。

 米も炊いていないし、冷蔵庫には作り置きもない。

 こういう時のために買ってあるカップラーメンも切らしている。

 コンビニに行くのもだるい。

 寝てしまえば、空腹も忘れる。


 シャワーだけ浴びて、濡れた髪のままベッドに倒れると、すぐに記憶をなくした。


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