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【連載版】すべてにおいて負ける僕が唯一勝利したこと  作者: 「」
一年は淡く過ぎ去り、想いを育む
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そういう日

 一年生は林間学校などあるが、二、三年になるとただ授業があるだけで六月の体育祭まで特にやることもない。

 冬の気配はすでに春に解けて、もう夏の芽が顔を出し始めていた。暑くなる日差しと気温。暮れる時間もゆっくりと人知れず伸びていく。美しくに咲いていた桜や梅は緑一色。空の色も移ろい水色からやや紫がかった明るい空色。

 こんな青空の下で一人歩くのは久しぶりかもしれない。


 我らが民族音楽研究部にも変化が訪れていた。

 肝心のベースの居ない僕らの部活はバンド演奏として機能していなかったのは明らか、新入部員として絵梨花ちゃんを迎え彼女が担当することに決まり、顧問から受け取った部費で練習用にと馴染みになりつつある楽器店に一人で訪れていた。


 薄暗い店内。

 ギター、ベースなどが所狭しと並んでいる。中古品も多く、値札にはASKと太いマジックで書かれている。

 レジ付近にはこちらもぎっしりと派手な色をしたエフェクターが置かれていた。


 ベースと言えば王道のジャズベースか、ロックとパンクの定番ミュージックマン。

 初心者だからこそ良い楽器を使って欲しいという考えのもと選びにきたのだけれど、流石に予算オーバー。規定人数ぎりぎりの底辺部活では配られる予算はそんなに多くない。


 ギターにある程度の知見があってもベースはそこまで詳しくない。卒業式以来に神楽先輩に電話掛けてアドバイスを受けることにした。

 ギブソンにエピフォンがあるように、フェンダーにもスクワイアという低価格モデルが存在している。その中から神楽先輩のお墨付きを選ぶ。

 彼女の話を参考にしお礼を述べてから電話を切り、別の相手にメッセージを送信する。


 4万円台のお値段ながらパワフルなサウンドに自由な音作りの出来る一本。色はどうしようかと画像検索。添付してから送りつけることにした。

 待つ間、店内を見て回り以外な掘り出し物がないかと探そうと歩き出し、その一歩目から携帯が小さく震える。あまりにも早い返事に驚きはしたものの、ありがたいという気持ちが先行。

 白いボディに黒いピックガードのついた可愛げのある色が良いとのことで。


 アンプは部室にあるもので十分。

 あとは消耗品。

 替えの弦を選ぶ。ピックはどうしようか、ベースは九割指弾きと言われているらしいが。

 神楽先輩もピックを使っているのを見たのは数えるほど。

 まぁ高いものじゃないし、楽曲によって選択肢が増えるのはいいことだろうといくつか選んで購入。ベース本体は配達をお願いしたいところだけれど、いつも部室にいるわけではなく、どちらかと言えば学内での秘密基地。


 いい買い物が出来たとホクホク顔で店を後にする。


 それから数日の放課後。

 絵梨花ちゃんの練習に付き合い、バイト以外は部室にいることが増えていた。

 快く思わないのが一人。



「さっさと上手くなってくれない?」

「習い始めて数週間そこらでそんなに上手くなれるの貴女ぐらいですよ市ノ瀬先輩」

「先輩も上達早いけど」

「二人と一緒にしないでください」



 という割にはこの子も上達が早い。

 夏菜と比較するのは無粋で、規格外な彼女と比べられるのは可哀想というもの。


 一般的に比べれば理解度が高く、言った傍から反映される。指の動きがぎこちないものの、しっかりとした重低音を奏でている。

 一音一音がすごく丁寧。

 絵梨花ちゃんも天才肌なのだろう。

 夏菜という存在がいなければ僕は間違いなく目を丸くして驚いていた。



「ベースでよかったの? こう言っちゃなんだけど地味だよね」

「でも大事なパートですよね」

「うん。バンドにおけるリズム隊は木や幹みたいなもんだしね。いくらギターやボーカルが花を添えても土台がしっかりしてないと輝かない」

「ならいいかな」



 勿論例外はある。



「ねぇ、市ノ瀬先輩。渉先輩っていつもこんな言い回しなんですか」

「そうだけど」

「むず痒い」

「先輩の良いところなんだけど」



 やめてほしいな本人の前で言うの。

 恥ずかしくなってくるからさ。


 うちの部活の看板娘。

 市ノ瀬夏菜。

 基本的に未参加。ただいるだけ。

 僕の隣に陣取り頬杖をついてる。


 一年生の時は暗黙の了解で許されてなかったが、制服のアレンジが可能になり僕の使っていないネクタイをリボン替わりに使用していて、制服の上からパーカーやカーディガンを羽織るという出で立ち。気温が上がってきた今は夏用の制服に僕の無くしたと思っていたパーカーを身につけている。

 学年によって色が違うのに彼女だけ三年生と同色になっており、その容姿と相まって余計に目立つようになっていた。


 結局暑くなってきたことで髪はいつものミディアムボブに切り揃え毛先だけ緩いパーマを当てている。少し長い前髪は横に流してヘアピンで留めており視界を確保。眠そうな目つきは相変わらずで、普段は何を考えているのか予想がつかない。

 組んだ脚も薄いストッキングで覆われおり、程よく肉の付いた綺麗な脚がナイロン生地の光沢で甘美で艷やか。そして指先にはお揃いのリング。

 手持ち無沙汰になると回しているのをよく見かける。


 良くも悪くも夏菜だなっていう感想を抱く。

 ほっとすると言ったほうが聞こえがいいかもしれない。



「先輩、そろそろ」

「もうそんな時間か」

「というわけで妹ちゃん練習終わり」

「一時間半って短すぎませんか」

「仕方ないじゃない、私バイト」



 ちなみに僕は休み。

 練習の終わりを告げるのは夏菜が部室を離れ、二人きりになるのを良しとしないから。

 僕も絵梨花ちゃんも二人でいるとお互いに気を使い合うだろうから素直に帰宅することにしていた。



「渉さんもしっかり市ノ瀬先輩のでかい尻に敷かれてますね」

「夏菜に心配掛けないのが一番だからね」



 別に敷かれているという自覚はない。

 一緒にいる時間が増えるならそれで良しとしている。



「わからないことがあったら、いつでも連絡してくれていいから」

「はい、お疲れ様でした」

「うん、お疲れ様。また明日ね」

「はい」



 夏菜が荷物を纏めて僕の手を取り学校を後にした。

 茜色に染まる帰り道の下り坂。

 昼間にあった熱は抜けて、吹き上げてくる風はひんやりとして夜の準備に入っている。


 部室を出てから更に坂道まで夏菜はずっと黙ったままだった。

 時折、何か考えている仕草を見せる。

 いつになく長い時間を要していて、問題の奥深さを物語る。


 僕とは違い彼女は考え事に集中していても周りは見えているので大丈夫だと思うが、いつも以上に気をつけながら夏菜の手を引く。



「……先輩」



 坂道を下りきり、ようやく夏菜が口を開いた。

 車の駆動音にもかき消されそうなか細い声。

 こちらの心配を煽る。



「どうしたの?」



 その場で立ち止まり向かい合う。

 見上げる彼女の双眸。

 ゆっくりと唇も動き出す。



「私、お尻大きいですか?」

「……普通じゃないかな」



 言われたことを気にしてたんだ。

 結構意外。

 というかそれをずっと考えていたのかという驚き。

 身体的特徴を気にするとなると、僕の言葉は逃げ道を辿る。

 対応も対処もわからない。



「先輩、目に魚でも飼ってるんですか」

「回遊魚をちょっと」

「寝ている時も泳いでるなんて大変ですね」

「そうなんだよ」

「私も先輩も嘘つけないんですから、正直に言ったらどうですか」

「……安産型ではあるよね」

「……そうですか」



 ややテンションの下がった彼女をバイト先まで送り届けると、真っ直ぐ自宅に帰ることにした。

 どう答えればよかったんだろうね。



 ※



 バイトが終わり帰宅してすぐの彼女。

 部屋着に着替えて、無言のまま僕にしなだれかかってくる。



「お疲れ様」

「はい」

「忙しかった?」

「新しいバイトの人に色々と教えていたので、普段の作業の倍ですね」

「あぁ、大学生の」



 春になると人が抜けて補充に別の人が入ってくるのは当たり前の話。

 新しい学校に慣れてバイトを始める時期でもあった。



「よしよし」



 彼女の髪を労るように撫でる。

 癒やされているのは僕のような気がしないでもない。



「……」



 鏡に映る彼女の顔。

 無言でありながらも目を細めて気持ちよさそうにする。

 野良犬や猫を撫でているような錯覚に陥る。



「もっと撫でてあげるからこっちおいで」



 膝を叩く。



「人をペットのように扱って……」



 そんな不満を言いながらも太ももに心地の良い重さが伸し掛かる。



「でも先輩ってよく動物にたかられてますよね」

「言い方よ……」



 流石に警戒心の高い鳥なんかは近づいてこないが、犬猫は脚元によくすり寄ってくる。

 僕も動物と触れ合うのは好きなので問題は起きてない。



「変な匂いでもするんかな?」



 外側向きだった顔を寝返りをうちながらこちらに向け、すんすんと夏菜の鼻が鳴る。

 お腹の辺りに妙な温かい風。

 ちょっとくすぐったい。



「落ち着く匂いしてますよ」

「どんな?」

「石鹸の清潔で優しい香りです」



 臭くないならいいか。

 お風呂に入ったばかりなのに臭いとか言われると体質から改善しなければいけないわけで、気が重くなっていたところだ。



「撫でられるのってなんでこう気持ちいいんでしょうね」

「人によるんだろうけれど」



 僕の場合はというと警戒しなくていい相手であること、人のぬくもりが感じられるから。特に膝枕をされながら撫でられると優しさに包み込まれるような気がして好きだ。



「寝ちゃいそうになりますね」

「寝てもいいよ」



 眠るには早い時間。

 ゆったりした安らぐ一時。



「あ」



 思い出すかのように夏菜は一声あげるとリビングに降りていった。……かと思うとすぐに戻ってくる。

 手は少量の水の入ったコップ。

 机に座ると彼女がいつも持ち歩いているポーチから痛み止めなどの入っているピルケースを取り出した。

 今朝もしんどそうにしていたもんなぁー。



「少し待っていてください」



 一錠薬を服用し、元の位置に戻る。

 健康的な生活をしていて風邪も引きづらい彼女が薬を飲むということ。今朝も寝起きに一錠服用していて、熱がありそうには見えない。

 彼女が過ごしやすい環境にするために気を使う日。


 一緒に暮らしているから初日より二日目のほうが辛いと知っている。

 幸い明日は休日。

 僕は夕方からバイトがあるが彼女は休み。

 逆だったとしてもシフトを交代すればいい。



「お腹擦って」

「うん。この辺?」



 下腹部を彼女が満足するまで優しく撫でる。

 本人曰く軽い方。

 でも傍から見ていて、尚且つ男の僕では辛さがわからないから出来ることをするしない。

 司とかは結構辛く当たられてるって話を聞く限り本当に個人差があるようだ。



「ん」



 僕の膝に頭を乗っけたまま丸くなる。

 お腹を冷やすのもどうだろうかと、僕の羽織っていた薄手のカーディガンを彼女に被せて、その上から下腹部を撫で直す。



「ありがとうございます」

「痛み止めきれた?」

「いえ、あれは低用量ピルです」

「……また急だね。避妊用の薬だよね」

「それもありますが、生理痛とかpmsを抑えられることも出来ますから。実際、ゴムより避妊成功率高いって話ですよ」

「ふん?」

「母さんの勧めです」



 親子で何か会話が合ったらしい。

 なんかの入れ知恵かな? 思わず警戒するが。



「副作用とか――」



 は勿論知っていること前提で飲むこと決めたのだから、僕から言うことはない。

 避妊の成功率があがるのであれば万が一ということも減らせる。



「心配からきてるでしょうから、そんな自己完結しなくても」



 くすりと夏菜は笑みをこぼした。



「三ヶ月以内には落ち着くそうで、一週間もすればゴムなしでもいけるようになりますよ? 先輩にとっても朗報かと」

「人が生でしたいなんて」

「したくないですか?」

「興味がないと言えば嘘になる」

「正直でよろしい」

「別に僕のことはどうでもいいとして」



 避妊具があっても行為については愛情表現だと考えているから問題ない。

 行動では足りず、言葉では伝わらない。

 だから抱き合う。

 今のままでも幸福感と充実感は満ち足りているが、それ以外に想いを伝える行為があるのであれば、迷うことなく手にするんじゃいかな。



「そんなこと言わないで下さい。先輩にも幸せになってもらうためなことですから」

「うん? ……うん」



 ちと悲観的な妄想が頭を過ぎり胸を痛める。

 日本でピルというとマイナスなイメージがつきやすい。

 ただの連想ゲーム。

 いくら彼女と過ごして上書きしていたとしても、長年生まれ育った環境とトラウマは稀に牙を向く。ちりちりと胸を焦がすような焦燥感。



「あいってっ」



 強めに顔を叩かれる。

 一瞬反応が遅れるほどだった。



「そう考えてしまうのも分かりますが」

「よくわかったね。顔には出してないつもりだったんだけれど」

「先輩が私のことを気付くように、私もまた先輩のことだったらなんでも気づきますよ」



 溜息を僕の膝で吐く。



「ほんとムカつきますね」

「ごめんって信用してないわけじゃないから」

「知ってます。自分の不甲斐なさにもムカついただけですから、いくら言葉と行動で示しても完全に拭い去ることが出来ない自分に腹が立つ。人から優秀な人間として認められているわけですが、出来ないことは出来ないその事実に」

「え、八つ当たり?」

「半分は」

「まぁ、いいけどさ」



 悪いのは僕だし。

 彼女は何も悪くない。



「あ、投げやりじゃないからね」

「わかってます。二人の問題ってことは忘れないでくださいよ」

「うん」

「先輩が不安になるたびに抱きしめますから、何度だって言い聞かせます」

「期待してる」

「はい。ならこの話はこれで終わりです」



 夜も更けて時計の針は静かに動く。人の営みの音も減り、静かに粛々と時間だけが流れている。一階にいた夫婦の声も聞こえなくなり、既に寝室で眠っているのだろうと知れた。

 時間と共に粘り気のあった雰囲気は霧散し、お互いにふざけあえるようになっていた。



「明日は寝てる?」

「どこか出かけるつもりでしたか?」

「買い物とかあるなら僕が行ってこようかなって、消耗品とか買い出しに行っとかないとそろそろ無くなるって言ってたからさ」

「それなら私も行きたいです」

「じゃあ、起きてから調子良かったら一緒に行こうか」

「はい」

「電気消すね」



 下腹部から頭に手を移動させ軽く撫でるように叩く。

 移動してというお願いの合図。

 少しだけ嫌がる素振りも見せながらも、僕の膝から頭部をどかし身体ごと壁側に移動し布団を整える。

 扉のすぐ隣にあるスイッチを押し、暗闇の中感覚までベッドに辿り着き腰を降ろす。

 仰向けになり目を瞑ると手を握られ、もう一つの手のひらは僕の胸に当てられると体温を感じられるほど密着。



「甘えたいの?」

「知ってますよ、今日から暫くは先輩が私に対して甘々なのは」

「そうだよ」

「ではお言葉に甘えて……。こっち向いてください」



 夏菜の方に僕の身体を向けるように寝返る。

 繋がれた手は途絶え、彼女が背をこちらに対して預けてきた。



「手を前に……」



 言われた通りに夏菜のほうに突き出す。

 すると直ぐに腕を掴まれて下腹部に導かれる。

 して欲しいこと、して欲しくないことをこうやって伝えてくれるから、僕もまた自然と気を使える。本人が一番辛いだろうに。



「おっけ。夏菜が寝付くまで撫でておくよ」

「ありがとうございます。でも寝るにも早いですからお話しませんか」

「もちろん」



 そう言いながらもバイトで疲れているのだろう、直ぐに船を漕ぎ始めた。

 撫でるスピードをさらにゆっくりと変えて次第には止める。

 後ろ髪に顔を埋めると、こっそりと息を吸い込み僕も眠りに入った。



 朝は唐突にやってくる。

 それほど熟睡出来た証であるのだが、ふわふわとした寝ているのか起きているのかの境目の微睡みを体験出来ずにがっかりする。

 つまりは目覚めが良かった。


 このまま起き上がるつもりではあったものの、眠っている間にこちらに向き直して抱きついていた彼女の姿を確認して暫くこのままでいようと予定を変更。

 細く柔らかい赤茶色の髪を弄ぶ。

 自分の指に巻いては解いて、飽きたら彼女の背中に触れる。


 露出度の高い部屋着、露出と引き換えに過ごしやすいとのこと。

 キャミソールとの違いはよくわからないが、多分裾の長さだと勝手に結論づける。


 きめ細やかで、吸い付くような肌。

 彼女のどこを触れても全てが愛おしい。


 眠っていながらもこそばゆいのか身体を捩り始めた。

 起こしちゃ悪いと手を止めるが、素直な欲求と理性を足して割る。結果としてもう一度髪に触れることにした。

 長い睫毛がゆっくりと上昇。



「ごめん、起こしちゃった?」

「うー……ぁ?」

「はは」



 いつもながら寝起きは赤ん坊のようで頼りない。

 春をすぎれば機嫌が悪いこともあまりない。



「ふぁ……んー?」



 あくびと疑問。

 ハムスターが顔が自身の顔を洗うように、くしくしと両手で顔を擦る。



「うん」



 何に返事したのかわからないが、頷く彼女は僕に両手を伸ばす。

 胸を通り過ぎて背中に。自分の両手では物足りなかったのか、僕で顔を擦り始める。



「少し気持ち悪い」

「大丈夫か?」

「うー……。平気」

「辛かったら言ってね」

「ん。もう少し寝る」

「おっけ」



 ベッドに眠らせ布団を被せて、いつでも薬を飲めるように冷蔵庫から水を取り出し、彼女のポーチを一緒にして置いておく。

 何かお腹に入れておく必要もあるだろう。

 もう一度キッチンに向かい、身体が温まり食べやすく消化に良さそうなものピックアップして作っておく。


 この家に住むようになってから、僕は僕で料理の腕を上げていた。

 春人さんや夏菜にばかり任せているのが心苦して、それを彼女も理解してくれたうえで、手伝いを申し入れると快諾してくれることが増えた。

 どこにあるかわからなかった調理器具や調味料も今では彼女たちに聞くことなく場所を把握。

 ただ僕の場合、頭に入ったレシピ通りの物しか作れない。計量も数値通りに。


 ついでに自分の朝食も作り、栄養を補給しておく。

 うん。まぁまぁ、かな?

 料理の腕ばかりは彼女に遠く及ばない。


 昼過ぎになって夏菜が起きてくる。

 寝癖をそのままに少し暖かそうな服装に着替えている。



「すみません、いま起きました」

「あはは、謝る必要ないのに」

「はい。あと準備ありがとうございます」

「スープなら直ぐ出せるけど」

「お願いしてもいいですか」

「うん」



 買い出しに出るつもりだったが、辛そうな彼女を目の前にして予定を変更。ゆっくりとした一日を過ごすことになった。

 そのせいでバイトに行くのが億劫になってしまったのだが。

 これはこれで楽しい一日だったということ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >どう答えればよかったんだろうね 嘘はつかず、安産型というのはのべつつ、でも自分は好きだよ、と肯定してあげるのが良いのではなかろうか。それが嘘とか誤魔化しが入るならまだしも、事実ではあるな…
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