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日常にもちょっとした変化あり。

 新しいプリントが前の席から流れてくる。

 何度目かの進路希望調査。

 進学にチェックを入れ、希望する大学名を記入する。

 学部まで記入する項目が増えていた。


 元々この学校は自由な校風。

 授業中などでスマートフォンに触れていても叱られたりなんかしない。

 こっそりと内申に響くだけ。

 ただこういう調べ物が必要な場合に限り、減点はされないので希望大学を検索し学部を調べる。

 本来は学部から大学を選ぶんじゃないかって思ったりするのだけれど生憎とやりたいことは未だ見つからず。


 共創学部ってなんだこれ。

『共創学部では、個々の学生が課題解決のために必要とする専門性を身につけた上で、学生同士はもちろん現実社会の中で異なるバックグランドを持つ人たちとコミュニケートし互いに認め合い、切磋琢磨し協働して解を見つけ出すプロセスを学んで行きます』

 なるほど、わからない。

 鼻と上唇の間、人中と呼ばれる場所にシャープペンシルを挟みながら別の学部を見ることにした。


 文学部、教育学部、法学部、経済学、医学、理学、薬学、歯学、芸術工学、農学。

 共創学部を合わせた以上の11学部。

 この中だと経済学か文学部が安牌。

 仮決めとしては十分だろう。

 ただ空欄が一つ残ったので、教育学部を記入する。


 単純に冬乃さんが思い浮かんだだけだ。

 進路相談受けてもらったしね。

 夏菜の両親を見ていると子供を導く存在ってのにも憧れるものがある。


 案外教室の皆も悩んでいるようで一足先にプリントを提出し、窓の外を傍観する。

 三学期は特に行事もなく授業だけ。

 部活に入っている人間はそろそろ新入生歓迎会の準備を始めなければならないが、それもまだ先の話。

 一大イベントと言えば卒業式。


 三年生はすでに受験。

 僕が受ける予定であり、神楽先輩が受ける大学は来月が受験。

 申込日がそろそろといったところ。


 一年は来月に職業体験があったっけな。

 どこ行ったっけ。

 お菓子の工場だったな。

 ちょうどバレンタインが終わった時期でチョコが無料で食べれた記憶が残っている。



「提出したやつから自由にしていいぞー」



 担任の声が静かな教室に響く。

 その言葉を皮切りにざわざわとした学校特有の喧騒。



「だからといってうるさくしていいわけじゃないからな」



 一瞬にして静まる。

 なんとなく獰猛使いみたいだなと思った。

 これを言ってくれるあたり優しい担任。



「渉は進路決めたのか」

「うん、詰めてはないけど一応ね。司は就職だよね」

「それがさお義父さんが」

「お義父さんね」

「からかうなって。雅の父親がな援助してくれるって言ってくれて、俺ももしかしたら進学できることになるかもしれない」

「いい人だね」

「本当にね。正直、情けなくて夜に泣いた」

「覚悟を持って、誠意を見せた結果じゃない」

「あぁ、同じこと言われた」



 子供のようで、それでいて大人の気配がする笑顔。

 見ているこっちが安心する、そんな顔。

 成長が伺える。

 父親になる片鱗だろうか。



「それで志望校は雅と同じ大学。それ以外だと就職っていう縛りはあるんだけど」

「じゃあ頑張んなきゃだね」

「あぁ。それで渉は?」

「僕も同じところだよ」



 彼女の夢がカフェのオーナーだったりするのであれば支えるために調理の道を目指したり、パターンによってはパティシエを目指したりするという物語がよくある。

 風邪を引いた夏菜の変わりに調理したことで、その道も考えたりもしたけれど。

 今は保留。



「お、それじゃ来年以降も一緒だな」

「司が受かればね」



 本当にそうなって欲しい。

 神楽先輩は入学してもすぐ休学。

 そうなると三人が同期になるのかなぁ。

 それはそれで面白そう。


 前を進む二人の少し後ろで僕が歩く。

 オマケみたいだけど、幸せそうな人を眺めるのは幸せお裾分けを貰っているような気分になる。

 でもちょっぴり寂しい。

 想像だけど。



「わからないところがあったら僕が教えるよ」

「さんきゅ」

「あ、でも家に神楽先輩もいるか」

「まぁーね。羨ましい?」

「なんで」



 神楽先輩と一緒に住みたいとか思われてるのかな、僕。



「嫁と一緒に寝泊まりしてるからな俺」



 あぁ、そういうこと。

 同学年で嫁とかいう単語が出てくるところには驚く。



「いや、僕も夏菜と一緒に暮らしてるしな」

「は?」

「だから羨ましくはないね」



 家族プラス1みたいな環境だけど、なにもかもが新鮮。

 彼ら個人個人の考えをもって動いているのが分かって楽しいし勉強にもなる。

 こうすれば彼女が喜ぶみたいな具体的なものじゃなく、人と関わる上での思い遣り。



「……え、いつから?」

「去年の暮れ」



 言い方的にかなり昔みたいに聞こえるが3週間も経っていない。



「どうしてそんなことになってんのさ」

「家出みたいなもんかな」

「市ノ瀬ちゃんがお前の家に住んでいるわけではなくて、渉が市ノ瀬ちゃんの家にってことか?」

「そう」

「どうしたらそうなるんだよ」



 特に隠すことでもないので、この数日で起きたことをつらつらと話した。



「なんで言わなかったんだ?」

「大変そうだったっていうのもあるけど、家のことだしね。言う必要性もあまり感じなかったからかな」

「お前本当に自分のこと言わないよな」

「言っても良いことないしね。これだって司じゃなかったら話さなかったことだし」

「確かにそうかもしれないけど……」



 軽いか重いか話で言えば軽い。

 どこにでもありふれた話。

 ただ聞いたところでどうしようもないし、気分のいい話でもない。



「男は女で変わるし、女も男で変わるってことかね」



 なんて司が呟く。

 それには僕も頷いてみせる。



「僕も司も相手に恵まれたってことだね、いい影響を受けたし変わらないとなって自ら思うこともあったし」



 ただ、うちの親の場合は悪い影響を受けた。それだけなんだろうな。



「環境もあるだろうしね。でも、なんか納得したわ」

「ん?」

「始業式の日、渉に久々に会ったけど雰囲気少し変わってたからさ。なんかいつもより穏やかになってた」

「司ほど変わってないよ」

「それはそうだな。へへっ」

「気持ち悪い笑いやめてよ」

「言うようになったな……。市ノ瀬ちゃんの悪い影響受けたんじゃない」



 ロングホームルームは進路希望調査で潰れたが、結果として休み時間として過ごした。

 少し前に比べて司ともなんだか信頼関係が築かれているような。

 僕が気づいていないだけで、彼は前から僕のことを心配してくれていた可能性もある。

 今の僕には心の余裕が出来て、見えなかった物が見えるようにもなっているかもしれない。



 ※



 2年の3学期。

 年末は緩い授業が続いてたが、3年とは違い僕らには定期試験があるので授業内容はみっちりとしたものが続く。

 凝り固まった身体をほぐしながら伸びをし、昼食はどうしようかと考えているところに、僕の教室に夏菜の姿が。

 扉の端にひょっこりと顔をだし、探すように見回す。

 僕が気づくよりも先にクラスメイトたちが気付いたようで茶化すように僕の名字が呼ばれる。

 一部のクラスメイトは非難と嫉妬の目。

 どういった気持ちで受け止めればいいんだろうね。

 堂々としてればいいか。



「それで夏菜はどうしたの?」

「お昼は麗奈と食べるのでそれの報告に」

「わざわざ? メッセージでも良かったのに」

「先輩の顔が見たかったので」



 嬉しさやら恥ずかしさでまともに夏菜の顔見れずそっぽ向くと、視界の端に麗奈ちゃんが映る。少し離れた場所に待機しており、こちらに気づいて手を振っていてくれた。

 この子、人付き合い良いな。

 僕だったら面倒で一人先に行くことを選びそう。



「それだけ」



『また放課後』と言葉が続き去っていく。

 いくつかある小さな変化の一つ。

 今みたいに学校での隙間時間に良く会いに来てくれるようになったことだ。

 恥ずかしいけれど可愛いからいいんだけどね。

 僕も勿論嬉しいし、疲れた身体が癒やされる気がする。


 腰の動きに合わせて揺れるスカートに窓から差し込む太陽の光りで輝く髪。

 小さな水色の財布を片手に去っていく後ろ姿。

 最後まで見送り、僕も教室に戻る。


 放課後はバイト。

 昼休みの間に英気を養うとしよう。

 人の家にお世話になっているからというのもありシフトを単純に増やした。今年の秋頃には受験に専念するために辞めることにもなるだろうし、今のうちに稼げるだけ稼いでおきたい。


 朝の弱い僕ら。

 お弁当なんて用意出来るはずもなく、春人さんが更に早起きする必要があるために、基本的に夏菜が気まぐれを起こせば出てくる代物。

 冬は特に拝めない一品である。

 お願いすれば無理して早起きして作ってくれそうな気もするが、毎朝のように見る彼女の寝起きを知っている僕としてはお願いするつもりはない。


 そう考えると去年の春。

 新入生歓迎会で用意してくれたお弁当はレアだったんだな。

 ある意味に置いて彼女の本気の一部ということ。

 胃袋を掴まれたのは間違いない。

 舌が肥えたのか学食の食事は味気なく、司が行くと言わなければ行かない。

 

 という訳で購買でいくつかの菓子パンと惣菜パンを購入し、暖かいお茶のペットボトルを手に中庭へと進む。

 冬本番、比較的暖かい筈の中庭も寒々としていて、どこかの飼い猫であるシロの姿ももちろん居ない。

 去年の今頃はどうしていただろうか。

 学食、中庭、教室、部室。

 そのどれか。

 案外僕の行動範囲は狭い。


 司の行動の有無で学食は外れ、シロがいるかどうかで中庭は外れる。

 部室は鍵が掛かっていることもあって、教室で食べることが多かったか。

 部室の鍵。

 今は僕が部長ということもあり管理している。

 そうと決まれば部室に行くとしよう。


 一人静かな昼食の後、授業を真面目に受けると気づけば放課後、夏菜といつもの場所で待ち合わせをすると一緒に下校。

 スーパーまで一緒に行動を共にし途中の道で別れる。

 ダリアの裏口から入りすぐに着替え、タイムカードを切ってフロアに出た。



「そういえば春人さん」

「んー」



 お客さんが少ない時間帯。

 二人居たお客さんのうち一人の会計を済ませてお見送り。

 暇になったこの店のオーナーはカウンターで自分の分のコーヒーを淹れている。機嫌が良さそうで鼻歌混じり。

 どこかで聞いたことのある曲。

 サビに入ると、鼻歌はやめて口ずさむ。単純に歌詞を知らないだけだったようだ。


『恋しちゃったんだ たぶん』


 たぶんのところを『ふふん』って歌っている春人さんに思わず笑ってしまう。本当に気分が良さそうだった。

 三十代大人の男性なのに可愛いな。



「なんか良いことであったんですか?」

「んー? なんだと思う?」



 前言撤回、うざいなこの人。

 夏菜や冬乃さんが言うには可愛いかもしれないけど。



「冬乃さん関係でしょどうせ」

「あたり」

「昨日、冬乃が新しい服買ってきてね、めっちゃ可愛いかったんだよ」

「惚気ですか」

「惚気だな」

「仕事でもしますか」



 春人さんと会話をすることに疲れて僕はカウンターから出て、お客さんが先程までいたテーブルを片付けに入ろうとする。

 が、襟首を掴まれてアヒルのような声が出てしまう。



「なんっすか……」

「もっと聞いてけって」

「嫌ですって、何が悲しくて彼女の親の惚気話を」

「お前も惚気ていいから」

「自分の娘が出てくるんですけど、恥ずかしくならないんですか?」

「むしろ親には見せない顔に興味がある」

「そうですか……」



 そうですよね。

 こんな人だもんな。



「仕事が終わってからにしませんか?」

「真面目だなお前」

「あなたが不真面目なんっすよ」



 お店のオーナーから逃げるように片付けを開始する。

 食器を片付け、テーブルを磨く。無くなりそうな紙ナプキンを補充。

 もう一人のお客である男性。

 お冷はまだ十分にあるようで、声を掛ける必要はなさそうだ。

 と。



「彼はいつからそこに?」



 カウンターに戻り、春人さんに尋ねる。



「何知り合いなの?」



 窓際のテーブル席。

 見知った中学生が一人、参考書を開きながら唸っている。



「夏菜の友達の弟ですね」



 彼を見ながら懐かしい気持ちにもなる。

 僕の場合は隅っこの比較的目立たない場所で勉強していた。

 集中力が切れたのか辺りを見渡している。

 何かを探すような視線で……。


 純情だな。

 こちらが微笑ましくなる。



「話すなら話してきてもいいけど、今暇だし」

「いえ仲良くはないので」



 僕、夏菜、麗奈ちゃん、智樹くん。

 知り合いの知り合い程度の仲。

 気に掛けることはあっても、お節介と警戒が二つだけ。


 警戒。

 夏菜が彼に靡くというわけではなく、彼が夏菜を悲しませる事態に発展しないかっていう危惧。

 常に目に見える範囲に夏菜がいるわけでもない。



「春人さんって冬乃さんが居そうなところとか張り込みました?」

「学生の頃によく見掛ける場所に足繁く通ったなぁ」

「へぇ、やっぱりそういうもんなんですか」



 僕の場合は当たり前のように傍にいた。

 夏菜を恋愛という意味で意識することがなかった中学時代ですらも部活に行けば会えた。会えなかった日があったとしても、次までの勝負の準備期間として己を高めることを考えていた。

 意識してからも一緒だったから、そういう青春みたいなのは程遠い。

 言い方を変えれば与えられる側で、自ら取りに行くことはなかった。



「会えたら嬉しくてドキドキして、会えなかったらその日一日が無駄になったような感じ」

「聞いてるこっちが恥ずかしいっすね」

「青春って恥みたいなもんだろ。青いからこそ輝くってね」

「今は?」

「今は煌めいているわ。冬乃がいて夏菜がいて幸甚の至りって奴」



 そんなことを言う春人さんの顔は子供ように無垢できらきらと輝いてる。



「おまけにもうすぐ孫の顔まで見れそうだし」

「げほっ……。高1の娘をもっている親の発言とは思えないんですが」

「流石に俺らがいない時にやれよ」

「続けるんですね」



 バレてそうだ。

 そりゃ同じ家に住んでいるしね。



「でも付き合ってるんだからそういうこともやるだろ」



 意外とバレてなかった。



「まぁそうっすけど。避妊はちゃんと」

「……」

「なんっすかその顔」



 この人、孫の顔がって本気で言ってやがったのか。



「あの……」



 春人さんと盛り上がっている? ところに声を掛けられる。

 客は一人しかいなかったから智樹くんだとすぐにわかる。



「すみません騒がしかったですか?」



 勉強中に店員が談笑しているのだから、この店の緩さを知らないなら腹が立ってもおかしくない。収益の3分の1が常連客。

 ネットにある評価でコーヒーや料理の味で気になった新規客がそこそこ。

 そのレビューに店員の質に差があるなんて書かれていた。

 可愛い女の子もいるが無愛想な店員という書き込みあったり、一目で誰かわかる。


 新規の方がリピーターになってくれたりなんかして、案外居着いてくれる。

 僕も居心地が良かったからずっと通っていたんだけど。



「そうではなくて、あの女性の従業員で赤茶色の髪の人って」

「今日は休みだよ」



 僕が答える。

 というかこの子。僕に気付いてすらいない。



「そうですか。では、会計お願いします」

「はい」



 会計を済ませると、とぼとぼと疲れただけの背中が煤けて見えた。

 ある日の春人さんもこんな感じだったのかな。

 彼が帰り数分後は夜のピークが訪れ、仕事に忙殺された。

 バイトが終わり帰宅。夕食の後に部屋でのんびりと思い思いの時間を過ごしながら今日あったことを夏菜に話してみた。

 カーペットの上でクッションを両足で挟みながら、素脚をぶらぶらと揺らしながら爪の手入れをしていた手が止まる。



「父さんにもそんな初々しい時期が?」

「そっちなんだ」

「追いかける側の気持ちは必死ですよ。会えないとその日一日は情緒不安定になりますから。会えたとしても、思い返しては落ち込みますけど」

「……大変だね」

「なんで他人事なんですか」

「勝者の特権?」



 僕は勝った気にはなってないけど。

 棚ぼたというような感想。



「惚れたほうの弱いところはそこなんですよね、何も言い返せません。でも言っておきますが勝負は引き分けですからね」

「負けず嫌いめ」

「誰のせいでこうなったのか」



 クッションとぬいぐるみが飛んでくる。

 キャッチしちょうど良いサイズ間なので抱きしめる。



「返して」

「はい」



 没収されてしまった。

 替わりに夏菜が膝に収まる。



「それでさ、智樹くんもお客としていたんだけどさ」

「はい」

「僕に気付かなかったんだよね」

「素の先輩は陰薄いですからね」



 僕の髪を一房手に取る。

 言いたいことはわかる。今日は面倒で髪型をセットしていなかった。



「そんなに印象違うのかな」

「はい」

「こういうのって目が隠れるほど前髪長いとかならわかるんだけど」

「漫画の読みすぎじゃないですか? 髪型一つで印象は驚くほど変わりますよ」



 僕の髪から手が離れて、その指は本人の前髪へ。



「こうやって」



 流れを作って普段隠れいてたおでこを露出する。



「あぁ、少し大人っぽくなったね」



 少しの違いなのに印象がすごく変る。



「私の顔立ちは元が童顔寄りなのでこれが限界ですけどね」

「表情は色気あるんだけどね」

「この無表情がですか?」

「そう。眠そうな目に泣きぼくろ、通った鼻筋にぷっくりした唇は瑞々しくて艶がある」

「……眠そうは余計ですけど、そういう風に思っていてくれたんですね」

「前から美少女だってことは言ってたろ」

「自覚はありますし言われ慣れてもいますが、先輩に言われるとすごく嬉しいです。以前はこの人本当にそう思っているのか甚だ疑問でしたが」



 唇の端が僅かに上がる。

 頬も緩んでいる。



「でも容姿より内面褒められるほうが嬉しいもんじゃないの? 性格も勿論いいんだけどね」

「褒めすぎじゃないですか?」

「本当のことだし」

「……うぅ、……本当に本当にこういうところ嫌いです。無自覚なのが余計に腹が立ちます。言われるほうの身にもいい加減なってください」



 機嫌を直そうと夏菜を抱きしめてみる。



「でも今日は騙されませんから」

「じゃあ明日デートしようか」



 興味を持ってもらえたようで身体がぴくりと動く。



「どこに?」

「スイーツカフェとか」

「……」

「睨まないでくれる?」

「先輩が行きたいだけですよね。まぁいいですよ、付き合ってあげます」



 そういう割に嬉しそうである。

 僕の彼女って結構ちょろいのでは。



「変なこと考えてましたね?」

「ちょろって思っただけ」

「今頃気付きました? 先輩に対してはその通りですよ。でも、落ち込んだり機嫌悪くなるのも簡単なので取り扱いに気をつけてください」



 僕が珍獣なら彼女は怪獣だったり。

 それはそれとして二人でどこに行くかスマートフォンで調べる。

 カフェなら夏菜の将来にも役立つこと発見出来るかもしれない。

 彼女の思い描くカフェの話を聞くのも楽しそう。

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