小さな願い
年を越してからの日々は穏やかな物だった。
翌日には夏菜の体調を見てから二人で学業の神様を祀る神社に初詣。
参拝をしてからおみくじ。
ふたりともおみくじ結果は微妙だったけれど、書いてある内容で恋愛に関しては良いことが書かれていた。
占いなんか信じてはいないが、良いことが書かれていると信じたくもなる。登校前に見るテレビの12星座占いのランキングみたいなものも1位だったりすると嬉しいみたいな。
都合がいい話ではある。
特に末永く添い遂げるという一文。
「お守り6つ? も買うんですか」
「うん。健康祈願は僕らので、学業は麗奈ちゃんの弟と妹さんの分。次に合った時に彼女に渡してくれる?」
「人がいいですよね。そんな仲の良い関係でもないのに」
「まぁ……夏菜と一緒にいるんだから、今後も会う機会もあるでしょ」
「そういうことなら。残りの二つはうちの両親ですか?」
「そ」
参拝へ続く道は人が川のようになっていて、横切って渡ることは出来ない。
けれど少し道から離れれば楽に呼吸出来る程度の人混み。
彼女の背に回り鞄に学業祈願のお守りと商売繁盛を願うお守りを仕舞う。
「でも麗奈も同じ物を買うと思うんですよね」
「だろうね」
僕らの住む地域だと神社といえばここだ。
毎年のように受験生やその子を持つ親たちでいっぱい。そうでなくても僕らのような恋人もたくさん訪れる。
友達同士も結構な割合。
「でもこういうのって人の願いを込めるものなんだから、いくつあってもいいんじゃないの」
たとえあまり知らない間柄であっても、この願いは本物。
だったら渡しても問題ない。
「……私も買ってきます」
そう行って巫女さんのところへ向かい赤いお守りを二つ手に、精算を終えると小さな紙袋に包まれて片方が僕の手に渡る。
中を覗くと縁結び。
「え? 僕は叶ってるんだけど」
「もっと縁が結ばれるようにですよ」
「なるほど。じゃあ大事にしないとね」
「そうしてください」
夏菜の携帯と同時に僕の携帯も鳴る。
二人して首を捻った。
「春人さんからだ」
「私は母さんからですね」
なんで同時。
片方だけでも通じるのに。
内容も同様でもうすぐ家につくという知らせ、買い物を済ませてから帰るということで昼過ぎには家にいるよという内容。
「お茶目だな」
「ですね。初めて見ました」
ただのメッセージにこんなにほっこりとさせられる気分になるとは。
「んじゃ、帰ろっか」
「はい」
電車を乗り換えながら最寄りの駅。
神社すぐの駅は人で溢れかえっていたが、自宅付近の駅はぽつぽつと人がいる程度で静か。
駅に用がある人というよりは散歩で立ち寄っただけというようなご老人や犬の散歩をしている僕らと同じ世代。
日常的な風景。
年を越す瞬間は来年はいいことがありそうという期待感で溢れるが、越してみると案外日常の一コマ。
それでも新鮮な空気に触れると小さな灯火が消えずに残っている。
自宅。
もう自宅って認識しちゃってるな。
僕も案外図太い性格をしている。
苦笑しながら靴を脱ぎ廊下を渡ってリビングへ。
「おかえり~」
と、春人さんが出迎えてくれる。
冬乃さんもこちらに手をひらひらと降ってくれているが、片手には日本酒。
「もう出来上がってるんですか?」
「わりと」
残念な子をみるように春人さんは自分の妻を撫でている。
「お前らの帰りが遅いって愚痴ってたよ」
「そんなに遅かったですかね?」
僕が春人さんと会話をしていると夏菜は傍で僕のコートを受け取り、自分の分と纏めてソファに掛けて置いてくれる。
甲斐甲斐しく世話をしてくれる光景に、ちょっとにんまりとしてしまう。
彼ら対面に座り、コタツの中へ脚を伸ばした。
外を歩いてきたからか変な声が出そう。
「ありがとう」
「はい」
「車の中でちびちびと呑んでたから時間間隔が狂ってるだけ」
「そうですか」
「渉もお屠蘇呑んどけ。一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」
「はぁ」
そんな意味があったのは初めて知ったけれどニオイがきついな。
独特の香りがする。
昔、祖父の実家でなんどか飲んだことがあるが味は兎も角ニオイが苦手なんだよね。
小さな盃を受け取りそのまま口に。
「良い飲みっぷり」
盃を夏菜に渡す。
彼女も僕と一緒にいたからまだ飲んでない。
「え、いいんですか?」
「日本の行事だからいいんじゃないの」
「渉が責任とるから大丈夫だろ」
「は?」
僕よりも少ない量。
盃の中には500円玉ぐらいお屠蘇。
アルコールは飛ばしていると思う。
口当たりはやわらかくアルコールの喉を焼くような感覚もなかった。
「それじゃいただきます」
不安になって夏菜を凝視する。
「アルコール飛ばしてますよね?」
「それはもちろん」
「なら――」
いいんですが、と言うよりも前に夏菜の顔が真っ赤に染まり目が据わっていく。
「駄目じゃないっすか」
「チョコに入ったアルコールで酔う娘だぞ」
「なんであんたが偉そうなんっすか」
「一人で酔っ払いの相手はしたくない」
「またか」
この野郎。
「盃を渡したの渉だからなちゃんと責任とれよな」
「あんたの娘だろ」
「俺の娘だが、お前の嫁だ」
「まだ婚姻結んでない」
「知らん、娘はやる」
「お前なんかにやらないって言うのがテンプレなんじゃ」
「テンプレとか知ったことか、娘の幸せを願うなら幸せにしてくれる相手に任せる」
「おぉ……」
なんかちょっと感動。
そこまで信用されているのかと。
「返品不可な。我が娘ながら手に負えん」
「おい」
台無しにしないと生きていけないのだろうかこの人は。
僕と春人さんが騒いでいると、無視されたと思っているのか女性陣が子犬のように相方の膝にまとわりつく。
ただ夏菜よりは冬乃さんのほうが大胆で、春人さんの膝に座ると腕と脚でしがみつき離さない。
はしたないと思うけど、なんかしっくりとくるような気も。
「お酒やめさせないんですか?」
「酔った冬乃可愛いだろ」
すげぇや、この人。
「はいはい、よしよし」
春人さんが冬乃さんを撫でると嬉しそうにしながら、頬を彼の胸元に擦り付ける。
胸焼けしそう。
おせちを摘みながら二人やりとりを眺める。
おせちは春人さんの手作り。
彼らが実家に帰省するよりも前から仕込み、大晦日の朝には出来上がっていた。
数日に分けて食べるものだと思うのだが箸が進む。丁寧な味付けで飽きないようにと薄味。今朝も食べたばっかりなのに実際に飽きない。
「美味しそうに食べるな渉は」
「美味しいですからね」
「なるほどねぇ。夏菜が張り切るわけだ」
「なにがです?」
「作った側としてはすげぇ嬉しい」
「ありがとうございます」
あんまりおせち料理は好きじゃなかったけど、これは本当に美味しい。
市販の物は味が濃いのだ。
やたら甘かったり、塩辛かったり。
保存食だからかな?
「んーっ」
僕の膝を枕にして、定まらない視線で夏菜が唸りをあげて、冬乃さんと同じく体制になる。
「どうした?」
「ばか」
「え?」
「父さんの料理が美味しいのはわかるけど、わかるけど」
「拗ねた?」
寝起きと酔ったこの子は幼くなる。
正面でいちゃつく彼女の母親、普段は落ち着いた雰囲気を纏っているのにじゃれつく姿は夏菜とそう変わりない。
春人さんが押されている。
押し倒されて、お酒を口移しされているっていう。
教育上よろしくはないはずだけれど、出来上がったこの娘は真っ当。
……。
うーん。
認めたくないな。
「したいの?」
「耳元で囁くなよ、ちょっとぞわぞわした」
吹きかけるように言うものだから鳥肌が立った。
嫌というわけではなく、こそばゆい。
「春人さんお酒弱くなかったっけ?」
「父さんのことはどうでもいいの、こっち向いて」
いつもの丁寧な言葉遣いは何処へやら。
赤い顔に蕩けた瞳。
垂れた目つきは更に垂れ下がってさえ見える。
表情筋の動きは微細ながらも、こちらもいつもより活発である。
「……ん」
前に僕がしたように両手を広げてみせてくる彼女。
少し迷った末にこれぐらいならと、望まれる形でハグをしてみるものの。
「悩んだ。減点」
「減点式か。加点式にしない?」
「だめ」
「ほら二人いるし」
「関係ない。二人もしてるし問題ない、なのでさらに減点」
完全に駄々っ子。
いやぁ、まぁ、その通りなんだけど。
コタツの境界線から手が伸びて、ひらひらと振られる。
好きにしろ。
ってことか。
すごい家に同居することになったのだと、今更ながら少しだけ後悔……は、しないな。
新鮮でちょっぴり楽しい。
自分の発言を理解していない状態の夏菜としょうもないやり取りをしていると、向こう側が静かになった。
すぐに答えは出て、春人さんが冬乃さんを抱きかかえて起き上がる。彼の腕の中で冬乃さんは幸せそうな顔で船を漕いでいた。
春人さんは顔を真っ赤にして眠そう。それどころか少し気持ち悪そう。
完全に酔ってはいないようだけれど顔に出るタイプらしい。
足取りは確かなので心配はないだろう。
酒に弱いのに口移しを受け入れるあたり、何を考えているのだろうか。
何も考えてなさそう。
求められたから受け入れた。
それだけのような気がする。
※
「邪魔者がいなくなりました」
「酷い言いようだね」
「両親のことは尊敬していますし大事思っていますが、今は関係ないですよね」
「……そうかもね」
瞳を見る。
そろそろ限界が近そう。
彼がそうしたように僕も彼女を抱きかかえ、片手で鞄とコートを手にして部屋へ連れていく。
ベッドに降ろしカーテンを閉めてからエアコンのスイッチを入れる。
執拗に自分の隣を叩く夏菜に苦笑しながら座ると、すぐさま押し倒される。
完全に密着したまま、体温と唾液を交換する。
口内を蹂躙されながらも、僕は少しだけ懐かしいと感じている。
震えも嫌悪もない。
唇が離れると同時に彼女をぼんやりとした視線で眺める。
酔い以外の顔の赤さ、目が合うと逸らされる。
髪をかき上げ、耳に掛けると特に耳の赤さが目立つ。
攻めていることに慣れていない手付き、次への動作にラグが発生している。僕の服に侵入する掌はひんやりとしてびっくりしたけれど、次第に熱を帯びていく。
彼女の手は僕のお腹を撫でるだけで次第に迷って止まる。
冷静に……少しの情熱を持って彼女を見ていられる。
「これからどうするの?」
「黙って」
物理的に口を塞がれる。
強気な姿勢は崩れない。
でも、加虐心は僕のほうが多分強い。
力技で彼女と僕の体勢を変える。
「……っ。これからどうするんですか?」
「こうする」
左手は恋人繋ぎにしたまま、彼女のマネをして首筋を吸いながら這う。
最初はくすぐったいようで彼女の脚が揺れていたが次第に大人しくなり、じんわりと首筋から汗が滲み出てきている。
「変な感じ……です」
「変って?」
「なんというか、……気持ちいい?」
「疑問形なんだ」
「自分でもよくわかり、ません」
残った右手で丁寧に彼女の服を脱がせていく。
買ったばかりのニット。
一度昨夜パジャマに着替えたのに今日も同じ服。
意味は知らない。
そういう市ノ瀬の文化なんだと勝手に想像している。
「うぅ」
「いつも挑発するのに恥ずかしいんだ」
「恥ずかしいものは恥ずかしいんです。するのとされるのとじゃ大違いです」
「まぁ……確かに」
僕もされるほうが恥ずかしい。
自分からする場合は覚悟が出来ている。
「納得されたところで攻守交代を……」
「駄目だよ」
完全に服を脱がせると片手で彼女の両手首を捕まえる。
酔った彼女と対面するのもこれで3回目、ちゃんと耳を傾ければ理解出来る。実際はふにゃふにゃしているのに自然と脳内補完出来ている。
冬乃さんの半分は何を言っているのか理解出来なかった。
春人さんとは普通に会話出来ていたところからみるとそういう事なのだろう。
深く考えない。
良いことだから。
「変? こんな事になるなんて思ってなかったから」
「下着?」
「うん」
「黒は大人っぽくて夏菜に似合っていると思うよ」
飾り気のない黒い布の下着。
様々な下着を持っている彼女の物の中でも特にシンプル。
こちらのほうがかえって彼女らしいと思う。
「本当に言ってます?」
「本当だって」
「そっか」
喜んでいるのはなんとなく伝わる。
悪戯というよりも愛撫に近い行為を続けながら会話を続ける。
「二人っきりですよ」
「君の両親が家にいるけど」
「部屋には二人だけです」
「……」
「誰でしたかね。私との勝負で詭弁で引き分けにしたのは」
「僕だね」
僕が言葉の力で怯んでいるうちにまた上下が逆になり、顔を身体に顔を埋めてくる。
「ご理解いただけましたか」
「まぁ。逃げるつもりはないから」
「はい、わかってます。先輩の心臓の鼓動、凄いことになってますよ」
自覚はしている。
緊張もしている。
「私がリードします」
「未経験なのに?」
「それはお互い様じゃないですか、違うとか言われたら戦争ですよ」
「そりゃ怖いな」
「丸一日無視しますから」
「……そりゃ怖いや」
どこまで本気なんだろうね。
「……はぁ……はぁ」
彼女も緊張からか目を瞑り呼吸を整えている。
腰に当てていた手の平もじんわりと熱を帯びている。
試しにへそから鳩尾辺りをフェザータッチで触れてみた。
「んんっ……ん、人が覚悟を決めているのに」
「ごめんって、でも最初は僕にリードさせてくれないかなって」
「どうしてですか?」
「僕も男で年上だからね、ちっぽけなプライドかな」
「そういうことであれば」
さっきまでのやりとりがなんだったのか、素直に彼女との位置が入れ替わる。
「タイミング悪くて、いつも中途半端でごめんな」
遮光カーテンで薄暗い部屋だけれど昼の真っ只中。
家の中は静か。
外は子供たちの遊ぶ声や車が家の前を通った音。
教室の喧騒なんかも僕は結構好きだったりする。
眠くもなるけれど、集中力も増すんだよね不思議と。
でも今はそれが邪魔。
彼女の音だけを聞いていたいなんて。
「んむっ……、ん、ちゅ」
わざとらしく音を立てながらキスをしながら、抱きしめるようにして夏菜の背中に手を伸ばす。意図を察して彼女は背中を仰け反らせる。
出来たばかりの空間に指を滑り込ませながら、ホックを弾くように外した。
窮屈にしていた柔らかな物体が揺れる。
「んぁ、手慣れてませんか?」
「これぐらい童貞でも出来るって。――その疑いの目はやめろって」
「冗談ですって」
薄暗い部屋でも綺麗なピンク色。
「改めてみると本当に大きいな」
胸の大きさに比例してぷっくりとした円輪も大きい。
その円をなぞるように優しくゆっくりと触れる。
「あ、やっ……」
押し殺すような声が漏れると、先端の桃色が固く膨らむ。
我慢できずに舌先で指と似たような動作をすると、僕を抱きしめていた彼女の腕に力が困る。触れていなかったその先端を舌で弾くと、跳ねるように元の位置に戻る。
耳障りだった外の騒音もいつの間にか意識の外へと消えて、彼女の艶めかしい声と体温、鼓動の音だけの世界となる。
顔を離し、何度目かの対面。
「痛くない?」
「……大丈夫です。思った以上にちょっとぴりっと感じがするだけ、ですかね」
「本当に初めてだから加減がわからないから、素直に言ってね」
「はい。でも、少し……怖いかもです」
「やめようか?」
「あ、違うんです。そういうわけでは」
夏菜は枕を手探りで拾い上げると顔隠す。
「胸だけでこんなに感じるので、その最後までするとどうなるのかが、です」
「やめるチャンスはここまでかな」
「?」
「これ以上進むなら僕が我慢出来そうにない」
そう言いながら彼女の腰を持ち上げて、ふとももからふくらはぎを通り過ぎて、一度足首で引っかかるの黒い布。
少し強引に引っ張り、完全に生まれたままの姿になる彼女。
「綺麗だね」
「うふっ……、ありがとうございます」
何度か見たことある彼女の裸。
その度に圧倒される。
膝に手を起き押し広げようとするが、わずかに抵抗するような力を感じる。こちらが少し力を加えるとすぐに観念したように徐々にふとももが離れていく。
小さく彼女が喉を鳴らす。
こちらも緊張で喉が枯れている。
生まれて帰る場所なんて言われる秘部。
そんな詩があるぐらいだ。
神秘的。
わずかに白くやわらかいふとももに垂れるとろっとした雫。
「変じゃないですか?」
「綺麗だよ」
「そればっかりですね」
「……不満か?」
「そういうわけじゃ、まじまじと見られてるから」
不安なのかな。
夏菜の声が荒くなっている事に気づく。
待たせすぎも良くない。
誰も到達したことのない彼女に口を這わせる。
びくっとした反応が面白いけどぷにぷにとした肉厚な弾力もいつかは興奮となって僕に帰ってくる。彼女はどうだろうか、顔から未知の表情をしている。
流れ出てくる液体は準備完了の知らせを送ってくるが、どうなのだろう。
「先輩も我慢出来ませんよね?」
彼女の視線の先。
うん、確かに見られるのは恥ずかしいな。
「いつでもどうぞ」
「わかった」
※
「痛かった?」
「ちょっとだけ、処女相手に獣ですね」
「いや」
何か誤魔化そうとしたけれどその通りで。
「悪かったって」
「いいんですけどね。それだけ良かったことですよね」
「そうなんだけど」
途中で本当に歯止めが効かなくなったことは後悔している。
もう少し冷静でいられたのならもっと優しく出来た。
「嫌な思い出なってない?」
「そんなことは絶対にないので」
「そっか」
ならよかった。
終わった後。
長い余韻を二人で過ごす。
小さな風船をゴミ箱に何個か処理をした後、こっそりと静かな家を歩いて二人で汗だくになった身体をシャワーで清める。
初体験で何度もするとは思わなかった。
若いって怖いね。
部屋に戻り、シーツを替えたりと作業をこなしようやく一息。
それぞれ好みのホットドリンクを手に寛ぐこんな時間も、行為の前後では深みが違う。
少し性行為というものを馬鹿にしていたのかもしれない。
恐れは少なからずあった。
違うのは幸福感。
性欲と愛情の違い。
僕は確かに夏菜のことを好きだと思っていたけれど、更に大事にしたいと思う気持ちが強くなった。
「してみてどうだった?」
「んふふ」
「声に出して笑うの珍しいね」
ツボに入って悶絶するような笑いとは別種の物。
今までは静かにくすっと言うような笑い方だった。
「身も心も気持ちいいことあるんだな……って思いました。それをくれたのが先輩なんだってことも」
「……うん」
「聞いといて照れないでくださいよ」
それからも暫くは会話を楽しみつつもふざけ合ったり、春人さんのゲーム機を借りて二人で対戦をして遊んだりしていた。
夜の9時。
寝るには少し早い時間。
疲れによるものなのか、夏菜はすでに眠そうな目がさらにとろんっと落ちて、僕の肩を枕にして眠り始めた。
ベッドに寝かせて撫でる。
彼女の頭を撫でるのは最近の僕の趣味になりつつある。が、素直に喜んでしまうのであまりしないでいたりする。
暫くは起きてこないだろう。
持ち上げていた彼女の身体をゆっくりと起こさないように下ろす。
「……ずっと、一緒」
彼女の寝言が聞こえてた。
「そうだね」
夢にまで僕が登場したのであればちょっと嬉しい。
妙な感覚のまま彼女が起きるまで静かに隣で見守ることにした。
完全に酔いはさめているようだけれど、覚えてないってことになってなければいいな。




