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・開拓5日目 シスター・リンネと枢機卿

「石材と木炭、金属のスクラップに、壷ね」

「銅鉱石もですよーっ」


「そうそう、どれもアタシのつてでどうにかなると思うわ。商売柄、これでも顔が広いのよ」

「本当に?」


 商売の話をリンネに持ちかけると、あまりにあっさりとことが運んでいって戸惑った。


「ええ。引き替えにうちの聖堂に少しの寄付をしてくれる?」

「聖堂……? ちょっと待って、うちの聖堂ってどういう意味?」

「もー、ノアちゃんは鈍いですねー、ピオニーはもうわかりましたよー。リンネちゃんはきっと、シスターさんに違いないのです!」


「いやいやいやいや、シスターが酒場で夜の仕事なんてしてるわけないでしょ」

「ふふふ……。でも、そのまさかだったらどうする……?」


「……まさか、嘘でしょ?」

「あら、シスターが酒場でバイトしてはダメだなんて、うちの教えには載ってないわ」


 まさかのマジだった。酒場女リンネの正体は、聖堂に仕えるシスター・リンネだった。

 そのやさしさに納得できる反面、なんてメチャクチャなシスターなのだろうと、思考回路がたっぷり十数秒停止した。


「だけど本当に大人だったのね……。残念、せっかくかわいい男の子を拾ったと思ったのに……」

「そですよねっ、ノアちゃんかわいいですよねーっ! ヘソはこーんなに曲がってますけどっ、お花とか、宝石とか、お庭とかも好きで、なんかエレガントなんですよーっ!」


「バラすなよ……」

「あら、かわいい」


 2人は妙に気が合うようだった。

 彼女は俺たちに来客用のお茶まで入れてくれて、ゆっくりと夜の会話を楽しむと、なんと自分のベッドまで客人に差し出してくれた。



 ・



「弟がいたの。ちょっと生意気なところがあなたにそっくり」


 俺だけ床で寝ようとすると、毛布と彼女が降ってきたのは、あえて語る必要もないことだろう。

 彼女が俺に手を差し伸べてくれたのは、病で亡くなった弟に似ていたからだった。


「ああ、神よ、感謝しております」


 彼女は俺が眠っていると思いこんでいたので、こちらも寝たふりでごまかした。ただ――


「これが、これがあの有名な、合法ショタなのですね……」


 …………え?


「ふ、ふふふ、ふふふふふ……。アタシがやさしいだけのお姉さんに見えましたか……? 見かけに騙されるなんて、ノアくんは無防備でいけない子ですね……ふふふふふふ♪」


 裏には裏があって、そのまた裏があった。


「スーハァッ、スーハァッ……しょ、少年……少年の、匂ひ……っ」


 その、あの……止めて……。なんか、鼻息荒くないですか、シスター!?


 シスター・リンネの裏の裏の裏の顔は、タヌキ寝入りをする青年を抱き枕にして、その発作が落ち着いて眠りに付くまで、馬のように激しい鼻息を立て続けたという……。



 ・



「本当に全部買い取ってくれるんですか?」

「もちろん! 街の外壁を見ただろう、ノア殿。防壁の補修に街の拡張、石材の需要は引く手あまただ。喜んで買い取らせてもらおう」


 翌朝、シスター・リンネに連れられて、聖堂へとやってきた。そこで枢機卿(すうきけい)と呼ばれる現司祭と謁見が叶い、彼が全ての物資を引き取ってくれると申し出てくれた。


「ありがとうございます、枢機卿(・・・)

「ウィンザーラッドの当主も愚かなことをしたものだ。私ならSクラスの加護持ちを捨てたりなどしない」


 この枢機卿とは、実は本土で何度か顔を合わせたことがあった。けれど失脚して、それっきり姿を見ないと思っていたら、この新大陸送りにされていた。


「では、締めて5万3000ルーン、確かに受け取りました」

「そなたの勇躍を期待する。シスター・リンネ、お前は彼に従い、買い物を手伝ってやりなさい」

「はい、喜んで!」


「うっ……」

「あら、どうしたの、ノア()?」


「な……なんでもない……」


 昨晩のあれはきっと夢だ。

 この清らかな正装をした枢機卿の信認厚いシスターが、変態のはずがない。

 そう自分に思い聞かせることにした……。


「では枢機卿、またお会いしましょう」

「期待しているよ、ノア殿。我々をこんなところに送り込んだ連中に、せめて一泡吹かせてやりたいものだな!」


「その気持ち、俺もよくわかります。旧知の仲同士、これからは協力し合っていきましょう」

「そうこなくては! 君のおかげで私も一稼ぎできそうだ! おっと、これは司祭らしくないセリフだったな、はっはっはっ」


 復讐なんてかったるい。何が悲しくて、船旅で半月も向こうにいるやつに、わざわざ手間暇をかけて報復しなければならないのか。そんなの面倒過ぎるだろ……。


 そんな本音を喉の奥に引っ込めて、俺は復讐に燃える男、元枢機卿のリチャード・ベン氏に背を向けた。


――――――――――――――――――――――

 石材   ×300 /9999999

          → ×0(枢機卿に売却)

 石炭   ×48  /9999999

          → ×0(枢機卿に売却)

 荒野の土 ×28  /9999999

          → ×0(聖堂に寄贈)

 銅鉱石  ×8   /9999999

          → ×0(枢機卿に売却)

 蒸留水  ×1   /9999999

          → ×0(聖堂に寄贈)

 小さな壷       ×61 /9999

          → ×0(枢機卿に売却)

 武具の破片      ×47 /9999

          → ×0(枢機卿に売却)

 ピオニー       ×1

 ??????の魂   ×1  /?

――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――

【所持金】120 → 53120ルーン

――――――――――――――――――――


平行連載をしている「砂漠エルフ」の連載を再開しました。

完結を目指して進めていますので、もしよろしければ読みに来て下さい。


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