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カタコンベ  作者: 朧塚
24/41

トーナメント 5-1


<第二試合、開始ぃぃぃぃぃぃっ!>


 グラーグは闘技場にまき散った、死体達を一瞥する。

 彼のモヒカンがびくり、びくり、と、大型動物のたてがみのように動く。

「いくぜぇぇ、へへへへぇ。殴り殺しにして、餌食にしてやるよぉっ!」


 死体達が立ち上がる。

 死体達の全身から、植物の蔓や、葉などが生えてくる。

「我が力『インフェスト』の前によっては、あらゆる死体達と植物が融合していくのだっ!」

 闘技場の地面に、草が次々と生えていく。

「なぶり殺しにしてやるぞぉぉぉぉぉっ!」


 巨大な樹木が、斧のような形になっていた。


 アディシェスは、マントをかぶり、宙をゆらゆらと浮いている。


「行けっ、じっくりと奴を喰い破れっ! そして、俺様のゾンビの一体の群れに仲間入りするのだっ!」

 会場内で歓声が上がる。グラーグを応援する声が次々と上がっていく。


 深紅と蒼白のマント姿のアディシェスは、手首の見えない両腕を動かしていた。次々と、倒れている死体達が起き上がる。そして、グラーグの繰り広げる、蔓や葉の刃の攻撃の盾となる。

 アディシェスのマントが、少しひらめく。

 すると、中から、亡霊のような者達が現れて、グラーグへと襲い掛かっていく。グラーグは意にも介さずに、自身の操る植物ゾンビ達に、その亡霊達を攻撃させる。亡霊達は、次々にグラーグの生み出した怪物達によって倒されていく。


 ふと。

 アディシェスは、気付けば、グラーグのすぐ傍に近付いていた。

 そして、袖の中から腕を伸ばす。マントを広げる。

 次の瞬間…………。

 マントが広がり、アディシェスの姿が現れる……かのように見えた。

 灰。

 灰へと変わっていく。

 グラーグの下半身が、灰へと変わっていった。そして、彼の操る植物ゾンビ達も、次々と灰へと変わっていく。グラーグの顔は、恐怖で引き攣っていた。

 そして、最後には、グラーグの頭部も灰と化して消滅する。


<第二回戦。勝者、アディシェスッ!>




「マ、マント、マントの中…………っ」

 彼は遠く離れた場所でうずくまり、恐怖に凍り付いて、半ば狂乱状態になっていた。

 アディシェスのマントの中を見れたのは、彼一人だった。他は次々と灰になっていく植物ゾンビ達や、グラーグの身体などによって、他のどの観客も見えなかったみたいだった。しかし、彼は確かに、中を見た。

 グラーグは、自身と同じ姿をマリオネットにして遠隔操作して戦っていた。彼は誰よりも臆病だった。

 だが、マントの中を見てしまったせいで、彼は狂乱し、そして地面に崩れ落ち、白目を剥く。



「骨が折れるな。試合中に、死霊術を必ず使わなければならない、というルールはな。私はそのような力は不得意なのだがな」

 アディシェスは、ヤギ頭の男スワン・ソングに対して、愚痴る。

「さて、次の試合は君だろう? とくと拝見させて貰うよ」


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