トーナメント 5-1
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<第二試合、開始ぃぃぃぃぃぃっ!>
グラーグは闘技場にまき散った、死体達を一瞥する。
彼のモヒカンがびくり、びくり、と、大型動物のたてがみのように動く。
「いくぜぇぇ、へへへへぇ。殴り殺しにして、餌食にしてやるよぉっ!」
死体達が立ち上がる。
死体達の全身から、植物の蔓や、葉などが生えてくる。
「我が力『インフェスト』の前によっては、あらゆる死体達と植物が融合していくのだっ!」
闘技場の地面に、草が次々と生えていく。
「なぶり殺しにしてやるぞぉぉぉぉぉっ!」
巨大な樹木が、斧のような形になっていた。
アディシェスは、マントをかぶり、宙をゆらゆらと浮いている。
「行けっ、じっくりと奴を喰い破れっ! そして、俺様のゾンビの一体の群れに仲間入りするのだっ!」
会場内で歓声が上がる。グラーグを応援する声が次々と上がっていく。
深紅と蒼白のマント姿のアディシェスは、手首の見えない両腕を動かしていた。次々と、倒れている死体達が起き上がる。そして、グラーグの繰り広げる、蔓や葉の刃の攻撃の盾となる。
アディシェスのマントが、少しひらめく。
すると、中から、亡霊のような者達が現れて、グラーグへと襲い掛かっていく。グラーグは意にも介さずに、自身の操る植物ゾンビ達に、その亡霊達を攻撃させる。亡霊達は、次々にグラーグの生み出した怪物達によって倒されていく。
ふと。
アディシェスは、気付けば、グラーグのすぐ傍に近付いていた。
そして、袖の中から腕を伸ばす。マントを広げる。
次の瞬間…………。
マントが広がり、アディシェスの姿が現れる……かのように見えた。
灰。
灰へと変わっていく。
グラーグの下半身が、灰へと変わっていった。そして、彼の操る植物ゾンビ達も、次々と灰へと変わっていく。グラーグの顔は、恐怖で引き攣っていた。
そして、最後には、グラーグの頭部も灰と化して消滅する。
<第二回戦。勝者、アディシェスッ!>
†
「マ、マント、マントの中…………っ」
彼は遠く離れた場所でうずくまり、恐怖に凍り付いて、半ば狂乱状態になっていた。
アディシェスのマントの中を見れたのは、彼一人だった。他は次々と灰になっていく植物ゾンビ達や、グラーグの身体などによって、他のどの観客も見えなかったみたいだった。しかし、彼は確かに、中を見た。
グラーグは、自身と同じ姿をマリオネットにして遠隔操作して戦っていた。彼は誰よりも臆病だった。
だが、マントの中を見てしまったせいで、彼は狂乱し、そして地面に崩れ落ち、白目を剥く。
†
「骨が折れるな。試合中に、死霊術を必ず使わなければならない、というルールはな。私はそのような力は不得意なのだがな」
アディシェスは、ヤギ頭の男スワン・ソングに対して、愚痴る。
「さて、次の試合は君だろう? とくと拝見させて貰うよ」




