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虚無晴れ

作者: 神木優樹

さらっと書いたものなのでおかしなところがあればご指摘願います。

そこまで話を重くしていないので気軽によんでください!

闇。


ねぇ、君は今……なにを想って生きているの?


「え……」


ねぇ、君は今……なにをしているの?


「俺……は……」


ねぇ、君は今……なにを――……





「はっ!! はぁはぁ……」


……暑い……。

なんだったんだ、今の。

……夢?

とりあえず、カーテンでも開けるか。

汗でビチョビチョになった気持ちの悪い寝間着とカーテンの方へ向かう。

シャッと音を立て開けると眩しいほどの朝日。

……じゃない?

これは……夕日……?

空一面が鮮やかなオレンジに染まり、明日も快晴なことを教えてくれている。

いやいや……


「ちょっと待てよ、おい……」


慌てて最近買い替えたばかりのデジタル時計に目を向ける。

2014.9.01-18:04

最悪だ。

学校をまさかの寝過ごした……。

しかも今日は始業式……。


「はやく、学校に連絡しなきゃ!」


慌てて携帯を取り出し、電話帳から水野松ノ木高校の名前を探す。

あれ、ない?


「あーーもう、なんで母さんも起こしてくれなかったんだよ!」


自分が起きなかったのも悪いけど一言文句言わなきゃ気がすまない!!

勢いよく階段を駆け下り、リビングへ向かう。

今の俺の速さなら誰にも負けない自信がある……!

なんてバカなことを思ったのも一瞬。

リビングの扉を開けた瞬間、俺はひどく落胆した。


「そう……だった」


もう、この家に誰もいないんだっけ。

学校も、やめたんだった。

すべてが現実に引き戻される。


「あーあ、辞めてから1ヶ月ちょい経つのになー……」


ははっと自嘲の笑いがもれた。

その時、ピンポーンと喧嘩をうっているかのような軽快な音が家に響き渡った。

誰だよ、こんな時に……。

モニターで確認するとかつて幼なじみだった五十嵐千波が立っている。

なんで、ここに?

仕方なく玄関の戸を開けた。


「やっほーーー!! 久しぶりっコウセイ! あれー? なんか元気なくない? ま、いっか! お邪魔しまーす!」


「え、ちょ、お前……」


これって不法侵入じゃないか?

いや、住居侵入?

……ってそんなこと考えてる場合じゃ……!

慌てて千波の後を追うと慣れたようにリビングに向かっていく。


「おばさん、おじさーん! こんにちは!」


「待てよ、千波!」


「ねぇ、コウセイ。おばさんたちは? あたしね、おばさんにいーっぱい聞いてもらいたいことがあるんだっ!」


何も知らない千波はそう言って昔と変わらない笑顔でニカッと笑った。


「……っ! いいからここに座れ。お前こそいきなりどうしたんだよ?」


ソファーに座るよう指示するとそこにドカッと座る千波。

ほんと、こんなとこも変わんねぇのな。


「んっとね、私またお向さんに戻ることになったのだ!」


「まじか!」


千波は二年前までうちのお向さんだったけど、親の都合で、確かちょうどこの時期辺りに引っ越したんだ。


「ふふん♪ 嬉しいー?」


そういってニヤニヤしてくる千波に心臓が跳ねる。

まぁよくある話で、俺は小さい頃から千波が好きだった。


「またうるさいのが戻ってくるなって感じだよ」


「えーひどいー! お別れの時泣いてたの誰だったっけー?」


「おまっ! それは……」


ちくしょう。

好きだったんだから仕方ねぇだろ……。


「えっへん! 私はなんでも知っているのだ! コウセイがあの頃、私を好きだったことも……ね?」


さっきからニヤニヤしていた顔をさらにニヤつかせて言ってきた。

ってか、


「まじか」


「あの頃のコウセイは可愛かったなー! なのになんで二年の間でこんなオッサンになっちゃうのーーー!」


地団駄を踏む子供のような反応にクスッと笑いがこみ上げる。


「いろいろあったんだよ。お前はそのガキな感じ変わんねぇな」


「あー、レディにガキって言っちゃいけないんだー!」


「はいはい。レディね、レディ」


「んもーーー! バカにするなぁ!」


久しぶりの絡みにすごく心が落ち着いているのが自分でも分かる。

ほんと、久しぶり……。


「それより、おばさんたちは?」


ドクン。と、さっきとは違う鼓動を感じた。

さて、なんて言うべきか。


「んー、旅行中?」


うまく笑えてるか?

引きつってないか?


「むー……、どうして嘘つくの?」


「……っ!」


やっぱりダメか。


「コウセイやっぱ変わってないね! コウセイはね、嘘つくときに右の眉毛がぴくって動くんだよ?」


あー、そういや昔も同じこと言われたな。

言うしかない、か。


「いなくなった」


「……え?」


ほら、そういう顔するだろ?

泣きそうな顔。

お前昔から泣き虫だから言いたくなかったんだよ。


「俺の両親と俺の彼女の愛梨はすごく仲がよかったんだ。俺がいなくても三人で出かけたりするくらい」


「うん」


「その日もちょうど三人で出かけてたらしくてさ、『愛梨ちゃんと買い物行ってきます、母。楽しみにしててねー! 愛梨』っていう置き手紙があったんだ。……でも、三人は帰ってこなかった。携帯も通じない。どこに行ったのかさえ分からない。いつも書いとけって言ってたんだけどな……」


「おばさん、そういうとこ抜けてたからね……」


「ああ。結局、愛梨が書いた『楽しみにしててね』の意味も分からずじまいだし。警察に行って行方不明事件として扱ってくれたけど、まだなんの進展もないらしくて……」


「そう、なんだ……」


くそ、なんで泣き虫の千波が泣かなくて俺が泣くんだよ。


「……っそれで、高校、やめて……バイトして……。伯父さんが仕送りするって言ってくれたけど、もう子供じゃねぇし……それに……仕送りとかしてもらったら本当に母さんたち居なくなったんだって嫌でも思い知らされる気がして……」


「そっかそっか」


千波が立つ気配がして、帰るのかと思ったらふと、体が温かく包み込まれた。


「つらかったね。泣き虫コウセイにしてはよくやったよ……。おばさんもおじさんも愛梨ちゃんもちゃんとどこかで元気に暮らしてるよ。今はただ、なにか事情があって会いにこれないだけだよ。大丈夫、大丈夫」


「うっ……おれッ、泣き虫じゃねぇしッ……!」


「ふふっ。言ってろ言ってろ」


千波があまりにも優しくて、俺は千波の細い腕の中で子供のように泣いてしまった。




「んじゃ、あたし帰るねー! あ、よかったらご飯の時とかあたしんち来なよ! ママとかも会いたいって!」


「おう、ありがとう! 迷惑かけてごめんな」


「何気にしてんのー? きもいよ? コウセイ」


「なっ! きもいってなんだ、きもいって!」


「きゃー! コウセイが怒った! これはただちに退散しなければ! さらば!」


「じゃーな!」


ガチャン、と閉まるドア。

しかし閉まったのも一瞬。


「あ、ママ達にはあたしからうまく言っとくから!」


「……びっくりした」


その声はまだ暖かさが残る静寂の中に静かに溶けた――……。


読んでいただきありがとうございました!

書くのが久しぶりすぎて読みにくかったとも思いますが、突然、『周りの人がいなくなったら』と思い書いてみました。


個人的に千波が気に入ってしまったのでまたどこかでお会いできるかもしれません笑

その時はよろしくおねがいします笑


レビューのほうも書いていただけると嬉しいです!

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