10 黙っていたこと
出発が夜明け前だったので、しばらく歩いたところで、日が高くなってきた。
眠そうに眼をこすりながら、サクヤが寝袋を出してくる。
基本的にこの人、大雑把で不器用だが、さすがに旅慣れてはいるらしい。街道からは見えないように、うまく辺りを整えている。
まだ怪我が治りきっていないというのもあって、眠そうにしている様子は、幼い少女のようだ。あくび混じりに、高い声で囁く。
「……じゃあ、この辺で、夕方まで寝ようか」
「――え? 先に飯食うだろ」
当然のように、アキラが言い返した。就寝前の飯の時間は、肉食ディファイ族にとっては譲れないらしい。
その言葉で、サクヤがはっとした顔をする。
アキラではなく、オレの方に向けた視線からすると、完全に失念していたのだろう。
実を言うと、今までも、結構な頻度で飯の時間が忘れ去られることがあった。
本人に指摘したことは、なかったのだけれど。
この表情からすると、もしかしたらサクヤは、本当に飯を食わないのかもしれない。
しかし、その詮索は後として。
まずは、さっきからキュルキュル鳴っている、アキラの腹の虫を何とかしてやらねばならない。
オレは荷物の中を探って、イオリから預かっていた弁当を、アキラに差し出した。
「お、イオリ、弁当作ってくれてたのか! やったぜ!」
「サクヤの分も、一応は作ったって、言ってたけど……」
目を向けたが、サクヤは黙って首を振った。
オレ達の会話を待たず、アキラはさっさと蓋を開ける。
「やった! 照り焼きサンドだ。そいつの分はおれが貰った!」
聞いていないのかとも思ったのだが、さりげなくサクヤの分を自分のものと定めてしまう辺り、話は聞いているらしい。
食欲優先なので、興味がないのだろう。
サクヤの様子を全く気にせず、さっさと食べ始めてしまう。
「お前も食えば? イオリは料理上手いぜ。このサンドイッチも、甘辛いタレとマヨネーズの比率が絶妙!」
いや、確かに、そのサンドイッチは旨そうだけどさ。
今まで何度も機を逸していたので、今度こそ、はっきり聞いておきたい。
「先に食ってて」
返事をしておいてから、サクヤの背中を軽く押した。
サクヤはちらりとオレを見てから、歩き出す。戸惑いもなく、森の奥に踏み入る様子からすると、オレが聞きたいことについて、予測はついているのだろう。
アキラに会話が聞こえないくらい、距離を取ってから、その背中に向けて尋ねた。
「なあ、ちょっと聞きたいんだけど」
「『内緒にする』と宣言したことについては、答えられないが。多分、これから聞かれるのはその他のことなんだろうな……」
「多分そうなんだろうね。あのさ、あんた、飯とか食わないの?」
やはり、予想通りの質問だったらしい。くす、とサクヤが笑った。
そりゃそうだ。いくら鈍いサクヤでも、この流れは読めるだろ。
「もう、気付いてるんだろ」
振り向いた視線は、オレの問いを肯定していた。
肯定は予測済み。
ただし、その理由はさっぱり分からない。
困惑しながらも、重ねて尋ねる。
「『リドルの姫巫女』だからなのか? いや、でも、ディファイの長老のトラは食ってたぞ」
「トラも同じだ。食べられないということもないが、固定された身体で、食べる必要があるかと言えば、特にない」
「腹減ったりしないの?」
「もう長いこと、食事ってものを取ってないから……。空腹の感覚自体が分からない」
サクヤが、小首を傾げて、答えを返してきた。
あんたがそう言うなら、それが事実なんだろうけどさ。
「食べれなくないなら、食べればいいんじゃないか? だって、人間の三大欲求だぜ。無理に我慢しなくても」
良く考えれば、この人、三大欲求のうちの1つを、姫巫女の第二誓約で自制してるのだ。
満たせる欲求不満は、積極的に発散した方がいいんじゃないだろうか。
それでも、サクヤの答えは、簡潔だった。
「誓ったんだ」
「は? 何を?」
「奴隷になっている同胞を全て救うまで、食べないって」
「何だ、それ? 願掛けみたいなものか?」
「……それに近い気分だったのかな。まあ、後からもうちょっと考えれば良かったと思った部分もある。でも宣言してしまったから、もう覆せない」
口に出してしまったから。
モノを食えば、第一誓約に引っかかると。
……バカじゃなかろうか、この人。
何で、わざわざ、自分で自分の縛りを増やすんだ。
「何で、そんなことしたワケ?」
「今この時も、同胞が苦しんでいるのに、自分だけが楽しむつもりになるか? 少し早まったかなとも思ったが、気持ちとしては今も変わらない」
早まったとか言っているが、結局は。
自分の言動に、さして問題を感じていないようだった。
きっと今、もう一度選択し直すことが出来たとしても、同じように誓うのだろう。
驚きを通り越して、もう、呆れるしかない。
「――やっぱ、あんた、バカだ」
「これに関しては、そう言われても仕方ないな。どちらにせよ、このことは、俺も言わなきゃいけないと思っていた。悪かったな、飯の時間、何回もすっ飛ばしてただろ」
「あんたの金で勝手に食糧買ってあるから、オレはいいんだけどさ……」
何だって、そんな、意味のないことをするのか。
オレには全く理解できない。
だって、あんたが食わなかったからって、その分が、あんたの大切な同胞の所に行くワケじゃないんだぜ。
――と、言ってやりたかったが。
知りもしないことに口を出すな、と言われたことを思い出した。
このことこそ、サクヤの好きにすればいいことだ、と思ったので。
これ以上は、何も言わないことにした。
その代わりに、ちょっと気になっていたことを、聞いてみようと思った。
目の前の細い肩を掴んで、逃げも誤魔化しも出来ないように、瞳を覗き込む。
突然近付いた距離に、サクヤがびっくりして目を見開いた。
その紺碧を見ながら、尋ねる。
「なあ、サクヤ、あんた……年は幾つなんだ?」
サクヤの瞳が、一瞬揺れた。
沈黙とともに、視線が逸らされる。
オレは、手を外さなかった。
ひたすら、その顔を見つめ続ける。
サクヤは、迷っているように、しばらく黙っていたが、オレのしつこい視線を受けて、諦めて口を開いた。
「そもそも、教えるつもりもなかったんだが……」
「言えよ」
「正確には覚えてないけど……」
この期に及んでも、言いよどむ。
オレは、急かさずに、次の言葉を促す。
「大体でいいよ」
「……リドルの島が襲われて、一族全てが捕われたのが――」
「うん」
「50年以上前の話で……」
「ごじゅう?」
「……姫巫女を継いだのは、150年は前だ」
「ひゃ、ひゃくごじゅう……」
――150歳オーバーだった。
見た目通りの年じゃないだろう、とは思っていたが。
予想より、遥かに年上だ。
――頭が、くらくらしてきた。
血も繋がらぬ同胞を探しながら、たった1人で、50年を彷徨う。
その長い時間を想像すると、ひどく、胸が痛んだ。
あまり、自分には馴染みのない、この感情は。
同情。憐憫。哀れみ。不憫。
……可哀想に――。
――やばい。
オレのこんな同情心が、サクヤにバレたら、へそを曲げられてしまう。
自分が無表情を保てているか、気になった。
顔に手を当てて確認しようと、サクヤの肩から、両手を離す。
――離した瞬間に、サクヤが、眉をよせた。
あれ。何で、今、そんな顔をした?
まるで、どこか痛いような。
その表情を良く見ようとしたが、すぐに、オレの視線を遮断するように、フードが下ろされた。
視線をフードに遮られてから、ようやく。
サクヤの気持ちが読めた。
今のは、手を離すべきじゃなかった。
――だけど、もう遅い。
すぐに、サクヤは身体を引いて、オレから離れた。
フードの下からちらりと覗く、綺麗すぎる唇が、小さく呟く。
「……このことを知ると、人間に、拒絶されることがあるんだ」
沈んだ声が、以前に同じようなことがあったと、何より雄弁に表していた。
だから、同じ傷を恐れている。
だから、オレに秘密にしていた。
同情を見透かされるより、こんな勘違いされる方が、問題だ。
よりによって、この大事なポイントで、対応を間違えるとは。
すぐに、「今のは、拒絶じゃない」と否定しなければいけないのだが。
何を言うべきか、迷って、言葉が出てこない。
「落ち着けよ」? ――違う。
「ちょっと、顔が痒くて」? ――ダメだ。
「もう一度、触らせて」? ――違う、違う。
――この、オレが。
言葉の選択に、迷う日が来るなんて。
迷いながらも、もう一度、サクヤの方に手を伸ばした。
それなのに、指が届く前に、簡単に振り払われる。
目深に被ったフードの下から、抑揚のない声が流れ始める。
「自動再生は、肉体の刻を止める魔法だ。成長も止まるし、何があっても元の形に戻る。お前が思う以上に、この身体は恐ろしい。腕が千切れても、足を失っても、また生えてくるし。試したことはないが、首を斬られても死なないんじゃないかな」
自分のことなのに、最後の方は、サクヤ自身が、声を震わせていた。
その怯えに気付いて、踏み込もうとして――。
その前に、サクヤが続けた言葉で足を止めた。
「――いや、それは正確じゃないな。死なないんじゃなくて、死んでも生き返るんだ」
――それは、どう違う?
それを問うかどうするかすら、迷っている間に。
サクヤは、静かに踵を返した。
「……黙っていて、悪かった」
小さく言い残して、走り去っていく。
その背中を追おうとしたが、うまく足が動かなかった。
……ああ、自覚している。
全て、後手後手だ。
最適解を探して、迷ってばっかり。
普段のオレなら、もっとうまく、サクヤの感情を拾えたはずだ。
手を握られたいのか、離されたいのか。
声をかけて欲しいのか、黙っていた方がいいのか。
どんな言葉をかけられたいのか。
それが出来るのが、サクヤの見出した、オレの価値だ。
――なのに、今。
大事な時に、それを間違えた。
間違えたまま、最後まで、触れられなかった。
それは、多分。
オレ自身が、迷っているからだ……。
サクヤにとっての最適と、自分の欲求が交差するから。
自分の頭の中を、掘り返してみる。
どれが、求められる行動で。
どれが、自分のやりたいことなのか。
ごちゃごちゃになっているが、口に出せば、多少は整理されるだろうか。
本当は、さっき。
手を離すんじゃなくて――。
「……可哀想なサクヤを、抱き締めたかった?」
――いやいやいや。
ちょっと待て、オレ。
まずいって。今は女でも、アレ、中身は男だから。
それに、それに。第二誓約があるし。
更に言うと。師匠の役に立とうって、決意はどうした。
抱き締められない理由はいくらでもあって、頭の中では理解していた。
それなのに、気持ちが全く納得できていない。
理性と感情がごちゃごちゃで、今、何をするべきか決めるのに時間がかかる。
だから、その場に必要な動きで、咄嗟に対応することが出来ない。
オレ、昨日まで、どうやって動いてたんだっけ?
呆然としながら、考える。
考えるのだが、全く、思い出すことが出来なかった。
――しばらく考えて、ようやく思い付いたのは。
突っ立っていてもどうしようもない、ということだけだった。
とりあえず、サクヤを追い掛けることにした。
元の場所へ戻ってみると、そこにいるのは、ひたすら飯を食っているアキラだけだ。サクヤの姿は見当たらない。
アキラは、オレを見ると、弁当箱を差し出してきた。
中身は、きっちり3分の2を平らげた状態になっている。
自分勝手に振る舞っているが、一応、アキラなりに、考えてはいるらしい。
「あいつ、ひでえ顔して帰ってきたぞ」
アキラが、つまらなそうに顎で指した。
その方向に、サクヤがいるのだろうが。
かさりとも音を立てないのは、もう寝てしまったからなのか。
オレは黙って弁当を受け取ったが、食欲を感じない。
静かなのが気になって、誰にともなく、呟いた。
「……首を落としても死なないってさ」
「らしいな。お前、知らなかったのか」
アキラは知っていたのか。
原初の五種の話と同じで、獣人にとっては常識らしい。
知らないオレが、バカだっただけか。
「……トラもそうなのか?」
「神の守り手は皆そうだよ。……食わないなら貰っていい?」
どんだけ食うんだ、こいつは。
呆れつつ、オレは渡された弁当を、再びアキラに返した。
アキラは、嬉しそうにそれを受け取る。食べながら、こちらを見ずに、思い出したように呟いた。
「あんたの連れをフォローするつもりなんか、これっぽっちもねぇが、おれにとっては、人間の方が余程怖い。あいつら、おれらより弱いのに、おれらのこと虫けらみたいに扱うんだぜ。どういう精神構造してるのか、さっぱり分かりゃしねぇ」
「あんた、奴隷だったんだっけ」
「そう。だから、あんたの連れのフォローなんかじゃねぇからな。そういう意味では、あんたの連れは最悪だ。人間で、奴隷商人で、しかも自分の一族を守れない守り手だ」
それは、極端でも、偏見でも。
アキラという1人の体験から出た言葉だった。
奴隷というものがどんなモノか、本当に知っているからこそ。
オレの顔を見て、アキラは皮肉に笑う。
「本当に、酷いもんだったぜ。良く生き残ったと、自分でも思うよ。ほら、見ろよこれ」
アキラが右手の袖を捲ると、その下は、手首から二の腕まで、綺麗に1センチ間隔で、褐色の横縞が入っていた。
遠目に見れば、あまりに綺麗に入っているので、そういう布模様の服に見えるかもしれない。
「何だと思う?」
「……刺青か何かか?」
「そんな丁寧なもんじゃねぇよ。おれが失敗すると、焼けた鉄棒をな、こう、押し当てるんだよ。その為の鉄棒を、いつも暖炉にくべてるんだぜ。もう、失敗するから仕置きされるのか、仕置きする為に失敗させられるのか、分かったもんじゃねぇよ」
よくよく近くで見れば、確かに微妙に盛り上がっている部分や、ひきつれたようになっている部分がある。
綺麗に治っているのは、むしろ。治して模様にするところまでが、当時のアキラの持ち主の望みなのではないだろうか。
ついでに、今、これだけ綺麗になったということは、元の火傷はかなり古いもののはずだ。幼い子どもに、こんなことをするとは。
あまりの悪意に、気持ちが悪くなりそうだった。
この痕はほんの一部で、きっと、身体中に同じような悪意の結果があるのだろう。
「毎日、『死んでたまるか、絶対生き延びてやる』って、そればっかり考えてた。そういうおれを助けてくれたのが、イオリや長老や、ディファイの皆だ。おれが本当に一族の子かも分からないのに、良くしてくれた。だから、その恩を返すんだ」
その為なら、嫌いなサクヤにもついていく、と言いたいか。
その言葉を聞いて、何となく、自分のことを思い出した。
――そうだ。オレも、師匠に命を救われたんだった。
アキラは、こちらをちらりと見て、食い終わった弁当箱を返してきた。
箱だけ戻されても困る……と思っていたら、中に一切れサンドイッチが残っていた。
どうやら、食えと言っているらしい。
アキラはオレの視線を避けるように、すでに、そっぽを向いている。
「……あんたもさ、何かあるんだろ、あいつと一緒にいる理由。おれと同じ匂いがするよ」
「そうだな。もともと別に、サクヤが好きで、一緒にいるワケじゃなかったんだった」
せっかく残してくれたので、最後の一切れをありがたく頂く。
甘くて辛くて、濃厚なそれは、確かに、絶妙のバランスだ。
イオリが、どんな気持ちで作ってくれたのか、それだけで理解できるような気がした。
あいつ以外のことは、今でも、こんなに理解できるのにな。
――師匠と会う前のことを、思い出すのは久し振りだ。
アキラの言う通り、オレとこいつには、共通点があるのかもしれない。
「人間はさ、獣人にばかり、酷いことしてるワケじゃなくて、人間同士でも酷いことができるんだ。オレもあんたと同じで、親の顔も分からなくて、いつの間にか、そんな子どもばっか集まってさ。皆で色々計画立てて……今考えると、悪いことばっかりだ。騙したり、脅したり、奪ったり」
――今だって、あの頃の仲間の顔を、全部思い出せる。
中には、いつからかも分からないくらい幼い頃から、結局、最期まで、オレと一緒にいてくれたヤツもいる。
アキラに話しながら、オレは、あの頃のことを思い出す。
楽しいこと、辛いこと。
勝ったこと、負けたこと。
いつも、一緒だったこと。
別に隠していたワケではないのだが。
そう言えば、サクヤにはこんな話、しなかったな、と気付いた。
「そりゃ、おれとどっちがどっちくらいの境遇だな。おれには屋根と食い物はあったけど、自由がないし。あんたは、逆だ」
「そうだな。自由だけは腐るほどあった。自由に色々やって、そんで、最後は大失敗した。街のでかいギャングの取引に、知らない内に片足突っ込んだ。オレ以外は全滅だ。師匠がいなきゃ、オレも死んでた」
最期まで一緒にいたオレの仲間は、今際のきわに「死にたくない」と言った。
オレも同じ気持ちだった。
でも、何もかも全部失って。
この後、生きるのだって、死んでるようなもんだとも思った。
仲間達の死体を前にして。
立ち上がることも出来ないオレと、向けられたたくさんのナイフの間に、割って入ったのが、師匠だった。
「師匠はまるで、日の出みたいだった。赤い髪で、刀がキラキラ光ってさ。ギャング達が何かを言う前に、師匠が駆け抜けたら、後は死体しか残らなかった」
オレの思い出の中では、そういうことになっている。
良く考えると、師匠が無敵すぎるとは思うのだが。
多分、どこか見えない辺りにエイジがいて、自慢の弓を引いていたのだろう。
そうでなければ、あの大勢のギャング達の前に、生身の身体を晒すなんて、あり得ない。百発百中の弓兵がいるからこそ、安心して、囮役をやったに違いない。
でも、オレの記憶では。
師匠の刀の一閃で、全てが片づいたことになっている。
真偽なんてどうでも良くて、あのとき。
死にたくない、生きたくない、オレを。
照らしたのが、師匠の愛刀暁だったのだ。
「それで、弟子入りしたのか?」
「それで、弟子入りした」
アキラは、単純だ、とは言わなかった。
オレが、アキラに言わなかったように。
きっと、似たような思いのはずだ。
「で、今、その師匠はどこにいるんだ?」
「……サクヤと一緒にいれば、いつか会える」
もともとは、それが目的だった。
だから、サクヤがどうだろうが、別にいい。
――別にいい、はずだった。
何で追い掛けられてるかも分からないけど。
美人の連れなら、いてもいいじゃないかと。
ついでに、上手いこと足を引っ張ってやれと。
それくらいのノリだった。
なのに――。
――オレは思考を止める為に、アキラに声をかける。
「もう寝ようぜ。こういうのも夜更かしって言うのか知らないけど、サクヤは、決まった時間になったら、容赦なく起こすぞ」
「ああ、あいつはそういう奴だな。むかつくけど」
アキラは小さく欠伸をして、立ち上がる。
さっき自分で指した方へと歩いていく。
オレも後を追ってみると、いつの間にか、寝袋が2つ用意されていた。
サクヤの姿はない。
どこか、見回りにでも行っているのだろうか。
それとも、顔を合わせたくなくて、自分だけ場所を変えたのか。
明るくなってから眠るのにも、だいぶ慣れたが、それでも何となく変な感じがする。
勿論、夜行性だというディファイ族には、これが普通のサイクルなのだろうが。
隣のアキラは、寝ると言ったら、あっという間に、鼾をかきだした。
オレはもう何も考えたくなくて。
頭まで寝袋に突っ込んで、ただ、眼を閉じた。
2015/07/11 初回投稿
2015/07/23 誤字修正
2015/08/06 校正――誤字脱字修正及び一部表現変更




