22.常識人グループ結成
この小説のどこかで作ろうと思っていた苦労人同盟の話です。
インターノットにグループ機能があるかはわかりませんけど、ご容赦ください。
これまで業務連絡ぐらいでしか動かなかった俺のスマホに、なんとグループチャットが作成された。グループ名は特に決まっていないが、俺の中では『常識人同盟』と勝手に呼んでいる。
メンバーはライカンさん、イヴリンさん、ベンさん、柳さん、ルーシーさんそして俺の6人。何この錚々たるメンバーは、俺入っちゃって良かったのこれ?
グループができたきっかけは、パエトーンの依頼で各々が出会った時らしい。俺以外のエージェントたちが、苦労人同士でシンパシーを感じたんだって。そして集まった結果、お互いに助け合った方がいいという結論に至ったそうだ。
グループを作った時にじゃあサクも入れるかって話になったそうだ。これ今年で一番嬉しい知らせだった。
かくしてグループチャットが動き出したわけだけど、これが効果覿面。チャット履歴をさらっと振り返っただけでも実に有意義であることがわかる。
ケース1、ライカンさんから。
『皆様、うちのカリンを見かけませんでしたでしょうか?』
『ポートエルビスの灯台の上で、蒼角と一緒に大声を出す練習をしています。近くで釣りをしてたら聞こえてきました』
『サク様、ありがとうございます。直ぐ迎えに行かせていただきます』
『そんなところにいたんですね。私も蒼角を探していたところでしたので、助かりました』
『なんだか、久々に釣り行きたくなってきたな』
『ベンさんも今度一緒に行きましょう』
ケース2、ベンさんから。
『アンドーの姿が見えないんだが、知ってたら教えてくれ』
『アンドーなら、チートピアで特製ドリンクに挑んでダウンしてますわ。今回はライトの勝ちですわね』
『ライトさんもまともっぽく見えるけど大概だよなぁ……。あんなの一口も無理だったし』
『何やってんだあいつは……。すまん、後で回収に向かう』
『いいえ。丁度シーザーがそちらに用がありますから、貨物と同じ扱いで宜しければついでで運びますわ』
『そうしてもらえると助かる』
ケース3、イヴリンさん。
『お嬢様が消えた』
『恐らくバレエツインズのどこかなのだが』
『イヴリン様。関係しているか定かではありませんが、噴水前にて何やら人だかりと美しい歌声が』
『それで間違いない』
『ライカン殿、礼を言う』
『先日ベンチで眠っていたエレンを保護して頂いた恩もありますから、お互い様でございます』
ケース4、月城さん。
『どなたか浅羽隊員を見かけませんでしたか。もう遠征から帰還する時間のはずなのですが』
『え、今さっきビリーとゲーセンに入っていきましたけど』
『サクさんありがとうございます。減給の計算が必要になりますね……』
『給与の再計算、手伝おうか?』
『あそっか、ベンさん会計担当だった』
『……すみませんが、よろしくお願いいたします』
こんな感じで、誰かが困った時にすかさずアシストが入るという理想的な空間となっていた。皆仕事が出来る人間だから返信も早いこと。
改めて思ったけど、誰かの行方がわからなくなるってケースが多すぎる。誰がどこにいるかパッとわかるようにならないかな。パエトーンはそれ出来たりすんのかな、信頼度上げるために日々出かけまわってるし。
常識人繋がりが出来てとてもウキウキしていた俺だったのだが、今朝とんでもないメッセージが入ってきて瞠目した。
『サク、グレースが発作を起こしてそっちに行った。気を付けてくれ』
『サク、今バーニスが店に向かいましてよ』
『サク様。うちのリナが食材の買い出しと差し入れの支度を始めています。ご用心を』
『今日は厄日か?????』
ひどいアベンジャーズが始まろうとしていた。このままだとリナさんの料理とバーニスの火炎放射が何らかの化学反応を起こして、店とグレースさんが爆発四散しちゃう。グレースさんは別にいいけど俺の勤め先が消し飛んじゃうのはマズい。
『全員捕縛するか?』
『治安を乱しそうであれば、出動したほうが良いのでしょうか……?』
『そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫です!』
イヴリンさんと月城さんが本気で心配してくれている。ありがたいけど2人が加わるといよいよ大乱闘になっちゃうので他の方法で回避したい。すぐに店長であるアキラとリンに相談してみた。
「……という訳で店の危機が迫ってるんだけど。どうしよっか?」
「ねえお兄ちゃん、私まだ死にたくない」
「それは僕も同じだ。3人同時に店に入られたら、僕たちはおしまいだ」
かつて、ここまで青ざめながら真顔で話すパエトーンを見たことがあっただろうか。少なくとも俺は無い。協議の結果、今日は臨時休業にして社用車で出来るだけ遠くへとんずらすることになった。
この日は本当にグループチャットがあって良かったと心から感謝した。車移動中、リンから『ところでそのグループって何の集まりなの? 私たちが入ってないのはなんでかな?』という圧が凄まじかったけど、俺は屈しなかった。
翌日、学校終わりに六分街へ着いた俺は、ひとまず店が無くなっていない事に一安心した。向かいのゲームセンターの店長であるアシャさん曰く、『いや~、なんやビデオ屋の前でボヤ騒ぎがあったみたいやけど。皆無事みたいで良かったわ~』だって、大事にならなくて良かった良かった。
いや待て、ボヤ騒ぎって充分大事なんだけど。
マズい、一瞬『なんだ、思ってたよりマシだな……』と流しかけていた。普通に考えたら騒ぎが起こる時点でおかしいからね。危うく新エリー都の日常に染まってしまう所だった。
今日も普通に生きていくぞ、と向かいのビルからのぞき込むスコープと店の窓に張り付いている紫の日傘から目を逸らしつつ『Random Play』に入った。
ここまで一日おき更新を続けてきましたが、
ネタが尽きたのでここで一旦終了とします。
またネタが溜まったら更新するかもしれません。
Ver2.0で新キャラも多数来るようですし、自分もいちプレイヤーとして楽しみです。
それに出せていない既キャラがいるのも心残りなので書きたい気持ちはあります……。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
また続きが出来たら、その時は見ていただけると幸いです!




