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待っている  作者: 池田瑛
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2回目のバイト④

 図書館に行くまでの道のりで、なんの本を読もうかと考えたが、バイト先が屋敷であり謎めいているので、館ものというジャンルを読んでみようと思った。今まで読んだことがあるのは江戸川乱歩くらいなので、適当に館ものと呼ばれそうなタイトルの本を選んでみることに決めた。


 学生証が図書館の利用カードになっており、学生証をゲートにかざして中に入った。図書館といっても、スペースの半分は勉強机があり、学生の自習室として利用されている。小説がどこにあったか、記憶が曖昧なので案内番を見る。

 案内番では、100番台は哲学および心理学、200番台は宗教、300番台は社会科学、500番台が自然科学および数学、800番台は文学および修辞学、900番台が歴史および地理というようにデューイ十進分類法に基づいて配置されている。私のお目当ての小説は、800番台の文学および修辞学の書架にあるのだろう。800番台は、図書館内の案内図では2階の奥なのでそこに行ってみる。


 それにしても、哲学から始まり、宗教、そして社会科学、自然科学という順番に並べるのは、ヨーローッパ人の発想なのだろうか。人類は、哲学で己の無知を知り、宗教において神様を殺すか何かして、物理法則など科学を発達させてきた。そいういう人類の知識の発展史観がこの本の並べ方に反映されているように感じる。

 まぁ、私が今探している小説に関しては、あまり関係がないと思うけど。歴史上のローマの元老院の密室だろうが、物語の架空の館であろうが、相変わらず密室殺人は起こっている。殺人は昔から罪であり、誰も犯人として特定されたくないという心理は変わらないのだろう。


 また、恋愛に関してもそうだと思う。既に「好き」とか「愛」という感情は、文字とかが生まれる前から人類は持っていただろう。少なくとも気になる人を見ると、胸が高鳴るということは昔からあったはずだ。それなのに誰も、その解決方法を提示してはくれない。


 「あの人の事を考えると、胸が高鳴る。それはつまり、恋である。証明完了」


 こんな証明であれば、ピタゴラスの三角形の証明なんかより遥か前にだれかが終わらせている。でもまだ、だれも「証明完了」からの画期的な一歩をだれも提示できていない。

 E=mc²という公式から原子力爆弾ができました、くらいのたとえ振り返って見て正しいとは言えない結論であったとしても明快な答えが欲しい。


 「徹の事を考えると、胸が高鳴る。それはつまり、恋である。証明完了。では、証明が完了したところで、あなたはその思いを徹に伝えますか、伝えませんか?」この答えを出すのに、私は実は、1ヶ月以上の時間を費やしてた。

 

 徹は、卒業後の私たちのことをどう考えていてくれているのだろうか。今度、ちゃんと話し合った方がいいのだろう。本当は、徹から話して欲しいのだけれどね。そんなことを考えながら、ミステリーが置いてある書架を見つけた。買ったら数万円以上する学術書や専門書はたくさん置いてある割に、ミステリーは本棚1つ分のスペースしかなかった。

 本のタイトルから、それっぽい本を3冊選びそれを借りた。


読んでくださりありがとうございます。

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