アッティーザ⑤
私も玲子の間に少しの沈黙があった。玲子はその間にグラスを何度も口に運んだ。私は、玲子がいったい何に悩んでいるのか見当がつかない。4人のセックス•フレンド、いや、彼氏候補がいることと、小説を書き上げることなく筆を置いてしまうこと。そのつながりが全く見えない。私は彼氏がいるからとくになにも思わないけど、彼氏がいない女の子が聞いたら嫌みにしか思えないだろう。
「玲子、ごめんなさい。やっぱり玲子がなにを悩んでいるのか分からないかな」
玲子は、相変わらずワインをちびちび飲んでいる。何も答えない。
私もグラスを口に運ぶ。一口飲んで玲子を見る。玲子は、グラスをただ見つめている。しようがないから私が口を開く。
「もう少し説明して欲しいな。玲子が何を悩んでいるか分からないよ」
私は、玲子を見つめる。玲子はグラスから私に視線を移す。
「有沙、まず私が彼氏ができないことから説明していい?」
「彼氏を作らない、じゃないの?」
「言葉尻を、捉えないで。私の立場からするとできない、なの」
「ごめん、ごめん。それで?」
「簡単にいうと、誰となら幸せになるかが分からないの」
「はい?」
好きな人と付合えれば、それで幸せなんじゃないかと思う。
「さっき、セックス•フレンドが4人いるといったけど、誰と付合ったら一番幸せになれるのかが分からないの」
「一番好きな人と付合えば幸せになるんじゃない?」
「さっきも言ったけど、四人とも好きなの。あと、もしかしたら、この人となら幸せになれる、という人が目の前に現れるかもしれないと思うと、怖いの」
玲子は、グラスに入ったワインを飲み干す。
「あのね、玲子、未来のことは誰にもわからないのよ?」
私はそう言いながら玲子にワインを注ぐ。玲子は、すぐにまたワインに口をつける。
「未来のことはだれにもわからない」
玲子は私の言ったことを、鸚鵡返しした。
「そうだよ。誰にもわからないよ。徹とこのまま大学卒業後もうまくいって、結婚するかもしれないし、もしかしたら別れちゃうかもしれないし」
私はマリネの小鉢に少しだけ残っていたタマネギを残らず食べた。ビネガーが浸っていておいしい。
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