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待っている  作者: 池田瑛
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飲まれない紅茶

 書斎の前でノックをする。今度は扉を大木さんが開けてくれたとしても驚かない。日々是学習也。そう思っていた矢先「どうぞ」という声が聞こえた。


「失礼します」


 扉を開けて部屋に入った。


 大木さんは、ソファーに座っていた。日も落ちかけており、窓の外は暗くなっていた。


 私と有沙は、ローテーブルに向かう。


 コーヒーは飲み干されていた。大木さんが座っている側に置いてあるから、きっと大木さんが飲んだのだろう。


 紅茶は、事前情報通り手がつけられた様子がない。


 狼人間、殺されたイギリス人。


 狼人間、殺されたイギリス人。


 狼人間、殺されたイギリス人。


 私の頭の中を、狼人間と殺されたイギリス人という言葉が駆け巡っている。


 大木さんが狼人間なのだろうか、年老いた老人にしか見えない。髭を蓄えているのは、狼人間でもともと毛深いからなのだろうか。


 この大きな家は、人殺しをして手に入れたものなのだろうか。


「有沙、カップを下げましょう」


 私は名前を呼ばれて我に返る。1、2秒固まっていたらしい。


 失礼しますといって、まずはコーヒーカップをお盆に載せる。そして紅茶ポットを持つ。ポットは運んできたときと同じ重さだった。紅茶カップは、紅茶がこぼれないように慎重にカップの水平性を保ちながら持ち上げる。


「それでは、失礼いたします」


私がお盆に載せ終わったタイミングで玲子は言った。私の頭は混乱したままだし、玲子が言葉を発してくれなかったら、私はこのまま固まったままだっただろう。

玲子、ナイスフォロー。


「ご苦労様でした」


 大木さんはソファーから立ち上がり、扉の方向へ歩いていった。


 玲子も歩き出したので、私もその後を着いていく。


 紅茶が少しカップからこぼれた。私はこれ以上こぼさないように、紅茶カップを見つめながらゆっくりと歩いた。


「それでは失礼致します。大木さん、いままでありがとうございました」


「加藤さん、こちらこそいままで本当にありがとうございました。いつもおいしく飲ませていただいてましたよ」


「ありがとうございます」


 玲子は、既に部屋から出て、大木さんに深々とお辞儀をしていた。


 大木さんは扉を閉まらないようにしてくれていた。どうやらカップをお盆に載せている時は、扉を開けてくれるのだろう。配慮の行き届いた人だ。少なくとも人殺しをするような人ではないと思う。


 私も部屋の外に出て、お辞儀をする。


「佐々木さんも、ありがとうございました。これからよろしくお願いしますね」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「大木さん、それでは失礼します」


 そういって、玲子が歩き出した。私も玲子の後ろを歩く。


カチャリと扉がしまった音が聞こえた。大木さんが扉を閉めたようだ。私は軽く安堵の胸をなでおろした。


 私と玲子はエントランスを抜けてキッチンに戻る。シャンデリアには灯りがついていた。シャンデリアの光は、優しい光だった。結婚式の会場にあるシャンデリアのように目を細めなきゃ直視できないようなものではないといったことはない。きっとシャンデリアの硝子を光が通るとき、硝子が光を上手に分散さしているのだろう。シャンデリアは、豪華さや華麗さ誇示する照明器具

として以外にも、存在意義があるのかも知れない。

最後まで読んでくださってありがとうございます。


余談ですが、昨日私の住んでいる街にも、一風堂が開店しました。さっそくお昼に食べにいきました。二ヶ月前くらいにモスバーガーが出来たり、食生活が充実してきています。

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