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新たなる旅立ち

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

3年もの間、アメリカに派遣されたと思ったら、いきなり重責を背負わされ、有人宇宙飛行計画の中核に近い仕事を担った小野。

彼のその任も終わろうとしていた。

組織改編に伴い、彼の上役がきちんと派遣されて来る。

その上役が事務的な事や対外的な折衝の一切をやってくれる事になっている。

小野はやっと念願叶って技術系の仕事に専念出来るのだ。

「終わると分かれば、この仕事も良かったと言えるなあ。

 先が見えない時期には、永遠に思えたものだが。

 噂では十年、二十年と海外に派遣されっぱなし、世界の果てに行ったきりなんてあるらしいし、それに比べれば短い。

 まあ全然ブラックじゃなかったって事か」

喉元過ぎれば何とやら。

小野は今までの仕事丸投げをされ、したくもない人付き合いをさせられた過去を、綺麗な記憶に昇華しようとしていた。


……後々、甘かったと実感するのだが。


「小野君は宇宙ステーションのモジュール開発におけるエンジニアになります。

 実績から言って、管理者としますが法務的事務的は上長がしますので開発に専念して下さい」

「はい、喜んで!」

「随分と明るくなりましたね」

「やりたかった訳ではない書類仕事から解放されますからね。

 正直、就職詐欺かと思いましたよ。

 必要なのは分かるんですが、これは社会人になって1年も経っていない青二才にさせる事ではないだろう、って」

「それに関してはすまなかったと思ってます。

 この計画、あの時点では海のものとも山のものともつかない、曖昧なものだったので、体制を整える事が出来ませんでした。

 その後は例の病気ので……。

 やっとやりたかった事に関われますね」

「ええ、これで人との関わりが少なくなると思うと……」

「え?

 何を言ってるんですか?

 チームのリーダーになるのに、人と関わらずにやっていける訳ないでしょ?」

「すみません、言葉足らずでした。

 別に同僚と関わるのは良いですよ。

 同じ研究職ですから。

 政治家とか、役人とか、マスコミとか、芸能人とか、そういうのと話さなくて良くなるって意味です」

「まあそういう者の相手からは解放されるね」

「ですよね」

「でも、企業関係者との接触はありますから」

「はあ……、それは切れないんですね。

 まあ仕方ないです」

「アメリカに長く居たんだし、初海外の職員とかにパーティーでの作法とか教えてあげましょうね」

「それは出ないと駄目なんですか?」

「出ないと駄目ですね。

 特に君宛ての招待状が来た場合、欠席という選択肢は表示されていても、そこにチェックしてはいけないものと思って下さい」

「…………」

コミュ障気味の小野だが、まだまだアメリカ式人付き合いからは解放されないようだ。


この小野の上長となってアメリカで仕事をするのは秋山である。

統括責任者を務めた彼が、アメリカ連絡所の所長的な役割になったのは、アメリカ側の要望による。

日本国内で組織の長になるのは、最早秋山でなくても大丈夫だ。

立ち上げの時期を終え、無茶な事を言って来る前総理も直接の影響力は無くなり、普通の運用となる。

それであれば、進捗管理が出来て、プロジェクトに対して粘り強く取り組めるような者であれば誰でも良い。

というか、立ち上げから安定の時期は最初に担当した者が余程酷くない限りは、腰を据えて運用させるのが正しい事で、そういう意味では秋山以外の者が最初の担当者であれば、その者に任せていたまでだ。

丁度交代しても大丈夫な時期になった為、交代となった。

そして本人が「やはり有人宇宙飛行に、技術的に関わりたい」と言った事で、アメリカにおける日米共同でのモジュール開発の管理官となる。

「技術って言いましたよね」

とボヤくも、まだ二十代半ばの小野以上にそんな事は通用しない。

「いい年した看做し官僚が、現場で技術職になりたいとか、無理だよ。

 若い者の後始末をする年齢になっているんだから、裏方に徹しなさい」

上長にそう言われると一言もない。

そして、これまでの実績からNASAの方から

「ミスターアキヤマと一緒に仕事をしたい。

 というか、我が国にも発生したおかしな宇宙船を作りたくて仕方がなく、その為に手段を選ばずに資金を集め、人員を確保し、プロジェクトとして押し込んで来る跳ね返りへの対応をして貰わないと困るね。

 日本のバスルームチームとか、先日の両国トップの宇宙行きで、そういうやり方があると教えてしまったのだ。

 君にも生産者責任を取って貰わんとな」

(いや、私はそういう連中を作り出した覚えは無いぞ!

 むしろ制御したかったが、制御出来ずにいたのだ。

 責任とか言われても困る!!)


だが、年下の小野に

「欠席という選択肢は表示されていても、そこにチェックしてはいけない」

なんて言えるくらい人生経験はある。

アメリカが望み、JAXAの上の方でそれを是とした以上、彼に拒否権は無い、拒否するなら退所となる事くらい理解していた。

(まあ、実質的には昇進だし、頑張ってみるか……)


外交において、本来の序列では国連大使が最上位な筈だが、実質的には1国の大使である駐米大使が最上位扱いだったりする。

それと同じように、本来の序列では有人宇宙飛行部門の一部局でしかない日米合同開発室兼両組織連絡局だが、秋山の経歴とアメリカとの関係から、現部門長よりも上のような立場となった。

余り前任者がアメリカの意向を聞いて、日本に指示を出しまくるのも、後任にはいい迷惑だろう。

(その辺も注意してやっていかないとな。

 やれやれ……面倒な事からは逃げられないなあ)

そんな風に考えながら、秋山は渡米の支度を始めている。


そして新体制での有人宇宙飛行が始まる。

最終話は2時間後の19時に投稿します。

そして18時には新作投稿します。

ジャンル「パロディ」でタイトルは

「うちのお隣、日本国憲法は通用しません。御成敗式目です」

https://book1.adouzi.eu.org/n9113hw/

です。

……ジャンルそこで良いのかな?

告知でした。

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