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水リサイクル

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

宇宙ステーションでの生活で、何より重要なのは空気である。

酸素が無ければ生きていけないし、二酸化炭素が多過ぎても死んでしまう。

次に重要なのは水であろう。

以前は尿なんかは宇宙に廃棄していた。

今は尿も処理して水のリサイクルに利用する。

宇宙での入浴モジュールがアメリカに嫌われるのは、単に彼等が浴槽に漬かる習慣が無いからだけではない。

何よりも水を無駄使いしているように見えてしまうのだ。

もっとも、この問題は既に解決している。

風呂用の水は独立したリサイクルを行っているからだ。

飲料用の水よりは処理が甘い、言ってみれば消毒用の塩素やヨウ素が多少残留していようが、雑菌の繁殖をさせなければ大きな問題ではない。

味なんかどうでも良いわけだし。

それでもアメリカから見たら

「水処理システムがコア1、コア2と存在しているのに、更に専門の水処理モジュールと浴室専用、更に厨房モジュールにまで独自の蒸留水製造装置まであり、冗長に過ぎる」

「バスタブに使う水の再処理が飲料用よりも低レベルで良いのは理解出来るが、そこがセキュリティホールのようになりはしないか?

 基本的には同じレベルで全ての水を再生する事が望ましい」

「独立した水処理だとしても、その水を飲料用に使えば良いだろう」

と無駄に対して不満がある。

一方で日本側としては

「浴室モジュールは流石にどうかと自分たちも思っているが、水の再生処理装置が3基ある事で、どれかの故障時もバックアップが出来る為、サバイバビリティが高くなる」

「コア1、コア2の浄水機能は現在休止させていて、全てを水処理モジュールに一本化している為、消毒薬や電気使用で無駄な使用は行っていない」

と、アメリカ側の指摘に答えていた。

日米の感覚の違いは、「湯水の如く」と言われるように水は無料、いくらでも使える生活に慣れた国と、そうでは無い国との差なのかもしれない。

アメリカは水不足が発生する国である。

それは瀬戸内海の某県で「うどんが茹でられない」と嘆く事とはレベルが違う。

そういうのもあって、食事前に必ず手を洗う、水でなくてもおしぼりを使う、うがいをするという習慣の有る無しの差にも現れる。

アメリカ人からしたら、おしぼりは何となく分かるが、頻繁な手洗いや朝晩のうがいとか、そこまでしなくても良いように感じてしまう。

日本人の方は深く考えておらず、習慣だからする、やらないと何か気持ち悪い、そんな感じだ。


そんな水に関する感覚が日本とは異なるアメリカだが、水モジュールでの干潟実験には期待していた。

どの国も、現在水の再処理は機械的なやり方である。

ろ過する、蒸留する、電気分解する、薬剤を混ぜて不純物を固着したり、消毒をする等等。

定期的なフィルターの交換や、薬剤の補充が必要となる。

地球の衛星軌道を周回する宇宙ステーションならそれでも良いが、例えば火星の恒久基地を考えた時、このやり方では常に地球からの補給を必要し、輸送機を送るだけで一大ミッションとなるだろう。

そこで、生物的なやり方で水の処理が出来れば、その方が良い。

しかし、今までの実験で「限られた空間では、機械の補助無しに生物学的な水処理は出来ない」と分かっている。

地球なんて、深海まで入れて水の占める割合は、人間の居住可能空間の割合よりも遥かに高いのだ。

それだけのキャパがあってすら、最近では汚染に対処し切れなくなって来ている。

宇宙ステーションや宇宙基地ではなおさらであろう。

それでも将来を考えた時、機械の補助が極力少ない浄水が出来たら良い。

更に生物学的浄水は、副産物として酸素の生産も行える。

基礎研究からする価値はあるだろう。


さて日本の宇宙ステーション「こうのす」だが、水処理モジュールは機械的な浄水装置7割、生物学的実験空間が3割という内容比率になっている。

その機械的な浄水装置だが、実はここ最近調子が悪い。

水処理モジュールの担当者は勝田飛行士だが、彼は3割の方、生物学的実験の方メインの学者である。

それでも限られたリソースの中、機械的浄水の方も管理も行っていた。

それゆえ、調子が悪いと言ってもまだ実害は出ていなく、数値上の不調を検知したものである。

具体的には、処理水内の有機物の除去効率が落ちているのだ。

船長、副船長にもこの状況を説明し、一緒に考えて貰ったが

「機械の不調だろう。

 一回中を見てみないと分からないが、その際に水処理が止まるのは考えものだな」

となった。

地上スタッフとも交信し、対処方法を考える。

この時、浄水装置が複数ある事が幸いした。


「作業日までにコア1の、元の浄水装置を再起動しておく。

 当日はコア1の方に繋いで、処理を行う。

 なるべくなら水を使う処理自体しない方が良いが、何があるかは分からないからね。

 その上で水処理モジュールの浄水装置を分解メンテナンスする」

という方針が決まった。

「意外なところで、冗長性を持たせた設計が役に立ちましたね」

「元々、コア1メインで使って、これが故障した時にコア2に切り替えて、コア2が生きている間にコア1を修理し、両方故障を起こさないって設計だからね」


アメリカが無駄に思っている機能が活かされる時が来た。

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