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組織改編したって、そんなの関係ねえ

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

組閣というのは、基本的に総理大臣と同じ方針を持つ者を大臣に任命するものだ。

中には、あえて自分に異議を唱える者を入れる変わり者もいる。

以前はその総理大臣を就任させた「功労者」あるいは「キングメーカー」が組閣を指示し、総理大臣に人事権が無かったりもしたが、最近は総理総裁の権力が強くなって、それは減っている。

前総理の時は、有人宇宙飛行計画に限らず、諸事「イケイケ! 積極策だ!」という者が多かったが、前政権の内閣改造を経て、更に現総理は「国民が望まないなら行わない、無駄と思われているなら整理する、無理はしない」方針の政治家で固めた。

有人宇宙飛行計画に関しても、アメリカとの協調を強め、出費を内閣からではなく、一般会計予算からに変更して「透明にする」事にした。

外貨準備とか機密費とかから出すと、自由に使えるものの、それらと一般予算との違いを知らない者、あるいは意図的に一緒にする者から

「我々の税金を使った無駄遣い」

と文句を言われる。

前総理は、そう言われた時に平然と無視するか、

「先生は国の予算の在り方についてですね、もう少し勉強された方がよろしいかと」

と煽ったりしていたが、現総理は批判には弱いようだ。

まあ、一般予算にしたところでアメリカとの協調ならば、必要分は大っぴらに確保出来るという読みあっての事でもある。


確かに予算については、文句は出ない。

マスコミも評論家も

「本来そうあるべきだったんですよ」

と創設の経緯を全く無視して、したり顔で言っている。

マスコミは気づいていない。

内閣が自由気ままにやっていた計画だったから、バラエティー番組を始めとした「自分たちも行かせろ」というごり押しを、政治家経由で行えたのだ。

透明化されてしまったら、そういう裏技は使えなくなるのだ。

そもそも、ほとんどの者が書類選考で落とされていたのを、裏口から「訓練まではさせて、そこから選考」まで持っていったのだ。

彼等には記憶力が欠如している可能性もある。

その場その場で耳障りが良い事を言っているだけかもしれない。


そして気づいた時、「まだ組織改編終了までに少し余裕があるな!」とばかり、「駆け込み乗車」的な再度の「こうのす」への乗船を求めるのだが。


政治家はその辺、何がこの先に有るのかを読める者もいる。

……マスコミの延長線上で、場当たり的な者も相当数いるが……。

アメリカとの共同プロジェクトへの格上げで、今までは「内閣の玩具」だったプロジェクトに口出し出来なくなってしまう。

ここで

「今まで通りで何の問題があるのか?

 あえて変える必要はない!」

と言うのは三流の政治家である。

強硬な事、筋が通っていない事を言っても通るわけがない。

「それで、移行はいつ頃になるのかな?」

普通の政治家はそう聞いて来る。

政治家は法律が適用されるに当たり、法案の提出、衆参両院での審議、可決もしくは否決、可決なら公布、そして準備期間を経て施行という流れを熟知している。

組織も改編が決まったとはいえ、そこからの人事、計画の練り直し、予算の確保等の準備期間を経ての稼働となり、官公庁を散々弄り回して来た政治家もその辺は理解していた。

内定とはいえ、実際に共同プロジェクトが動き出しまでは間があり、それまでの期間は猶予期間なのだ。

猶予期間、つまり直前の制度で運用される期間。

その隙をついて自分たちの欲求を通すのだ。

政治力ってやつを使って。


法の隙間を上手く狙う普通の政治家、ゴリ押ししようとする二流の政治家の他に、一流の政治家もいる。

まあ一流、普通、二流、三流の他に、この件とは全然関係無い、週刊誌のネタを元に何かこじつけを叫んで支持者以外から相手にされない「映す価値なし」の政治家も居たりはするが。

一流の政治家は、自分の欲求を満たす為に、相手が譲らざるを得ない状況を作り出すのだ。

この場合はアメリカを動かす事である。

現在半引退状態の前総理が動き出す。

彼はアメリカの政治家に知己が多い。

そこと密かに話し合って、何か合意を得ていた。


しばらくしてアメリカから現総理に、愚痴とも現状報告ともつかない話がやって来た。

「下院の方で『老人や障がい者、マイノリティーでも宇宙に行く権利を保証する法』が可決されました」

大統領補佐官から総理への電話は溜息混じりであった。

「……物凄く嫌な予感がしますね。

 お話しをお続け下さい」

総理も、現在の地位に登り詰めた人物である。

政治的な直感は持ち合わせていた。

「そして、超党派の議員、上院下院に州の政治家までもが

『宇宙から地球を見た者は、初めて地球が実に脆い星であると知るようだ。

 だが、それを写真や映像で見ても、今一つピンと来ない。

 我々世界の政治に携わる者が、それを実感出来ないというのは損ではないか?

 今後の世界の為にも、我々も宇宙に行って良いだろう。

 何でも同盟国にはそういう正規の宇宙飛行士でない者も行ける宇宙ステーションがあると聞く。

 そして前大統領が、軌道上のエアフォース1ともいえる宇宙船を作らせたと聞く。

 これは有効活用すべきではないか?』

 とか

『世界情勢が混沌とする中、宇宙から地球を見るという視野の拡張が必要だ。

 それにロシアと中国ではない、我々こそ宇宙開発の先進国である事を全世界に示さねばならない。

 政治家が宇宙に行くというのは、実に良い宣伝になりはしないか?』

 とかと言い始めたのです」

「……アメリカにもいらっしゃいましたか、大きい小学生が」

「ええ、老齢小学生が理屈を並べて、自分も行く資格がある、絶対安全に特等席で行かせろ、箔をつけさせろと言っています」

「日本にも飛び火しそうで怖いですね」

「今日、総理にお電話したのはその事です。

 逆に、日本のさる政治家が合衆国の政治家を焚きつけたと聞いています。

 どうか日本の方でも先手を打って火消し出来ませんか?」

(あの人だな!

 あの人以外考えられない!

 どうして無駄な政治力をここで発揮するんだ!?)


無茶を押し付けられる小野や秋山に先んじて、総理が頭を抱えてしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  そこで、とある所から連絡が来た。  それは『皇室』からだった。  陛下が宇宙へと行きたいと――  さぁて、どうなる?  え゛っ、英国からも……
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